特別展「太古の哺乳類展」(国立科学博物館'14)

 2014年7月12日 (土) 〜 10月5日 (日)に上野の国立科学博物館で開催された特別展「太古の哺乳類展」。その見どころと展示物の一部について、簡単にご紹介していきましょう。
(解説:馬藤永徳)

○見どころ

 この特別展は、ナウマンゾウの家族が展示!などのPRがありましたが、そんなことよりも圧倒的な数々だった様々な哺乳類の「歯」の展示!!
 そう、哺乳類は歯が重要。歯の形が哺乳類によって多種多様で、それが分類の1つの決め手となっているのです。それが、よく分かる展示構成でした。ということで、まずは歯の展示について代表例を見ていきましょう。



ハクサノドン
 まずは、白亜紀前期に生息し、石川県白山市で発掘されたハクサノドンの歯です。拡大模型まで用意されており、形状の細部まで解るようになっていました。歯と歯は噛み合わず、ハサミのようにすれ違ったといわれています。

 歯の形状は、哺乳類の分類を決める重要な指標です。例えば、ハクサノドンは「真三錐歯類(白亜紀に絶滅)」に属しています。グループ名の三錐歯とは、3つ山のあるこの歯の形状から来ています。



ハクサノバーター
 続きまして、同じく白亜紀前期に生息し、石川県白山市で発掘されたハクサノバーターの歯とくらべてみましょう。上写真は歯の1つですが、ハクサノドンとは形が全く異なることがわかります。

 ハクサノバーターは「多丘歯類(新生代漸新世に絶滅)」に属しています。歯に大きな丘陵がいくつもあるのが特徴で、グループ名の由来です。


テドリバーター
 同じく石川県白山市で発見された、テドリバーター。白亜紀前期の多臼歯目に属しています。


エンテロドン
 福島県いわき市から発掘されたエンテロドン。新生代古第三紀始新世に生きた、イノシシのような動物です。日本からは歯しか見つかっていません。恐竜など、哺乳類意外の動物では「イノシシの仲間の歯」などと、説明されるところですが、哺乳類の場合は歯からどの動物かまで同定出来てしまいます。



アショロア
これまで日本だけでしか発見されていないアショロア。束柱目の中でも最も古い年代(約2800万年前)の化石です。ちなみに、名前から想像のつくとおり北海道の足寄町から発見されました。


アショロア
歯の形はコブ状です。



ベヘモトプス
アショロアと同じく束柱目に属するベヘモトプス。


ベヘモトプス
束柱類としては、原始的な種類であり臼歯の高さが低いのが特徴です。



デスモスチルス・ヘルベルス
同じく、束柱目に属するデスモスチルス。


デスモスチルス・ヘスベルス
歯を拡大すると、束柱目の名の由来となった、歯が柱状に束ねられたような形状になっています。束柱目として発見されたのは最初だったのですが、進化段階としては最後のあたり。このように、歯の進化を追っていくのも、なかなか面白いものです。


パレオパラドキシア
束柱目として、パレオパラドキシアも展示されています。展示の見どころとしては、このように歩く姿勢と・・・。


パレオパラドキシア
食べる姿勢が並べられて展示されていることです。


ナウマンゾウ(メス、子供、オス)
 実際に本当の家族だったかどうかは不明ですが、左から順番にナウマンゾウのメス(大人)、子供、オス(大人)が家族のように並べられています。子供と大人の骨格の違いや、オスの牙が長いことに注目!


ナウマンゾウ(子供)


ナウマンゾウ
後ろからもどうぞ。


ナウマンゾウ
ここでも歯に注目!2番から1番にかけて押されていき、歯が生え変わっていくのです。



ナウマンゾウ
赤ちゃんから年寄りになるまで、9頭分の上下のあご。アフリカゾウの平均値を参考に年齢を産出したとか。要するに、歯の形状で年齢が推定できるということです。



アケボノゾウ
 日本固有種で、こういう特別展で展示されるのは意外と珍しいかも?


ナウマンゾウ、アフリカゾウ、ケナガマンモスの頭骨

ケナガマンモスとアフリカゾウの下あご


アフリカゾウ
多摩動物公園で飼育されていたタマオ(享年38歳※推定)の骨格です。

ケナガマンモス

ヤベオオツノジカ
日本の更新世でお馴染みのシカ。ナウマンゾウと同じ地層から発見されることが多いです。


ハナイズミモリウシ
大陸に生息したステップ・バイソンと同種で、更新世後期に棲息。岩手県一関市で発見されました。

ニッポンサイ
スマトラサイと近縁と考えられています。このように、日本の更新世には多種多様な哺乳類が生息していました。


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