恐竜博2019

 2019(令和元)年7月13日〜10月14日にかけて国立科学博物館で開催された特別展「恐竜博2019」。今回の恐竜博は前半では、恐竜ルネサンス(※1)からの研究が鳥類と関連する恐竜に注目して紹介されていたのが特徴でした。『活発で鳥類に近い』という恐竜像が確立後、様々な羽毛恐竜が発見されて恐竜像がドンドン塗り替えられていく様が展示されています。特にデイノケイルスに力を入れており、かつては最初によくわかない爪であったデイノケイルスが(ちょっと変な)ダチョウに似たオルニトミモサウルス類と判明し、羽毛をまとった復元図と登場するのが象徴的です。
 後半では、カムイサウルスをはじめとした北海道の化石群と、鳥類化石が多く紹介されています。一躍有名となったカムイサウルスもそうですが、モササウルス類なども珍しい化石が展示されています。鳥類化石の方は、恐竜からのなごりである歯を持つ鳥類や、恐竜のニッチを埋めて地表におりた鳥が登場しており、「鳥類に近い恐竜の展示」である前半と対になっている展示でした。
 その他、展示の最後にチラリとありますが白亜紀後期の鳥類は既に鳴いていた証拠も注目です。
 ※1 恐竜ルネサンス 1964年に鳥そっくりな恐竜デイノニクスが発見されてたことから始まる一連のパラダイムシフト。ノロマではなく活発な恐竜像を描き出した他、「鳥は恐竜の直接の子孫である」「恐竜は単系統である」「育児をする恐竜がいた」などの当時としては画期的な説が登場した。
 (撮影:裏辺金好/解説:馬藤永徳、裏辺金好)


デイノニクスの足 【実物】【ホロタイプ標本】
恐ろしい爪という意味の学名を持つ白亜紀前期のドロマエオサウルス科の恐竜。いかにも活発そうな脚。ジョン・オストロムが、すべて変温動物ばかりと思われていた恐竜に恒温動物がいるという「恐竜温血説」を唱えるきっかけとなり恐竜ルネサンスが始まりました。


デイノニクスの手 【実物】


デイノニクスの共食いの可能性を示す化石 【実物】
デイノニクスの尾椎と血道弓の間に、別のデイノニクスと思われる左での第3指の末節骨(カギヅメ)が挟まっています。


テノントサウルス 【複製】



テノントサウルスに襲い掛かるデイノニクス 【複製】
今となっては当たり前ですが、古いゴジラスタイルの恐竜復元ではまずありえないポーズです。

始祖鳥 【複製】

デイノケイルスの前あし 【複製】
1965年にゴビ砂漠で発見された肩関節から指先まで、なんと2.4mもある巨大な前あし。デイノ(恐ろしい)+ケイルス(手)と名付けられましたが、左右の前あしと肩帯しか発見されなかったため、長らくその全貌は謎のままでした。


マイアサウラ 【実物】
子育てをした可能性があると初めて示された恐竜。

ディノサウロイド(恐竜人間)
1982年にデール・ラッセルが「もしもトロオドン類のような恐竜が白亜紀末期に絶滅せず、進化したならば?」という試みで発表したもの。


シノサウロプテリクス 【実物】
初めて羽毛が発見された鳥類以外の恐竜。

カウディプテリクス 【実物】
鳥類の風切羽に見られる特徴を持ち、鳥類に近い恐竜として注目されたもの。前あしが後ろあしに比べ、かなり短いことから飛ぶことはできなかったと考えられています。

ミクロラプトル 【複製】

シチパチ 【複製】
モンゴルで発見されたもので、卵の上に覆いかぶさるようにしていたことから、巣で卵を温めていたと考えられています。


アンキオルニス 【実物】
羽毛の表面にメラノソームが残されたいたことから、初めてほぼ全身の色が明らかになった種類。

チレサウルス 【複製】
チリで発見された恐竜で2015年に命名。頭骨の形から獣脚類とされますが、歯のすり減り方から植物食と考えられています。また、骨盤は恥骨と坐骨が平行に並んでおり、鳥盤類と考える研究者もいます。鳥盤類である考えの分類では、獣脚類が竜盤類より鳥盤類に近くなるため、恐竜の今までの分類体系「竜盤類(獣脚類・竜脚類)」「鳥盤類(角竜・鳥脚類など)」が大きく変わることになります。


デイノケイルス 【複製】
2000年代に入り様々な骨格が見つかり、ついに全貌が明らかになったデイノケイルス。白亜紀末期のモンゴルに生息した恐竜で、体の基本構造はダチョウ型恐竜であるオルニトミモサウルス類ですが、竜脚類のように空洞化した骨、スピノサウルスのような大きな帆を持つ、ユニークな体つきをしています。腕だけのころは肉食と思われていましたが、現在は雑食性と推定されています。

タルボサウルス 【複製】
白亜紀後期、ゴビ砂漠を代表する獣脚類。デイノケイルスを捕食していたようです。

アンセリミムス 【実物】【ホロタイプ標本】
デイノケイルスと同じくオルニトミモサウルス類で、白亜紀後期のモンゴルで棲息。


カーン 【実物】
学名の由来は「君主」。オヴィラプトル類で、この2個体は砂丘の崩壊に巻き込まれて一緒に死んだと考えられています。二個体で血道弓の長さと形が異なることから、雄と雌とも考えられ、「ロミオとジュリエット」と名付けられています。


ホベツアラキリュウ 【複製】
1975年に北海道穂別町(現・むかわ町穂別)で発掘されたクビナガリュウで、北海道の天然記念物。今回の展示では最新の研究に基づき骨の向きなどを修正されたものです。



フォスフォロサウルス 【複製】
2009年夏に北海道むかわ町で発見された個体。これまで恐竜では、ティラノサウルスでばかり話題になっていた両眼視が、フォスフォロサウルスもしていた思われることが最大の特徴。


カムイサウルス 【実物】
ハドロサウルス類の一種で、北海道むかわ町にて全身の8割ほどの骨(少なくとも222個)が発見。「むかわ竜」として大きなニュースとなり、2019年9月に新属新種の恐竜であることが明らかになり、カムイサウルスと命名されました。実物と全身復元骨格が展示されています。



モササウルス類の新種? 【実物】
和歌山県有田川町で発掘された海生の爬虫類で、モササウルス類として日本で初めて発見。他のモササウルス類にはない、大きな「あしヒレ」が特徴です。


ティラノサウルス 【複製】
カナダのサスカチュワン州で発掘されたもので、発見時にスコッチウイスキーで祝ったことから、「スコッティ」と呼ばれる個体です。大腿骨の周囲長値から体重は8870kgあったと推定され、肉食恐竜としては最重量であることが2019年4月に報告されています。



イクチオルニス 【実物】
白亜紀後期の鳥類で、現在の鳥類からは失われた歯を持っているのが特徴です。


パタゴプテリクス 【実物】
白亜紀後期の南アメリカ大陸に棲息していた鳥類。ニワトリぐらいの大きさで、飛ぶことはできません。ちなみに飛べない鳥と云えばダチョウを連想しますが、直接の関係はなし。鳥類は、別々の系統から何度も地上に降りたようです。


ガストルニス 【複製】
古第三紀始新世に棲息した全長2mという大型の鳥類で、以前はディアトリマと呼ばれていました。かつては肉食と考えられていましたが、現在は植物食と考えられています。陸上に降りて、恐竜のニッチを埋めた「恐竜の子孫」です。


ヴェガヴィス 【実物】
白亜紀後期の南極の地層から発見されたもので、現生鳥類の分類体系にあてはめられるものとしては最古級。発声器官である鳴管が発見されており、この頃から鳥類は鳴いていたことが判明しました。

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