さあ、身近な地層を見に行こう

○縞々模様のアイツは何?

 地層って言われてあなた方は何を思い浮かべますか?
 山の上の断崖の縞模様?
 それとも海の下に少しずつたまり続ける土と砂と礫の集まり?
 いえいえ、地層ってもっと身近なものなんですよ。
 そこで今回は、古生物を研究する上で、密接な関係である地層に関し、ささやかなレポートをお送りしようと思います。

○あなたの目の前に縞模様
 地層というと山の中で見かけるものとか、そういった特別な場所で見つけるものというイメージを私は小さいころ持ち続けて来ました。しかしそれは、教科書などには大きくて見えやすい地層を掲載するため、そんな特別な場所ばかりを紹介されてしまっているためでした。

 皆さんもそんなこと感じていたりしません? もしそうなら、身近なところでちょっと丘や、何か地面が縦に削れている場所を探して見ましょう。土木工事なんかしているところだと見えやすいです。そこで普段私たちの見ている土や、アスファルトの下を見て見ましょう。きっと縞模様が見えるはずです。それが、地層です。

○縞模様ってなに?
 その次の話。そもそも地層の縞模様って何者なのでしょうか?これには地層ができる過程を紹介する必要があります。まずそこのあなた、地層がどのように積もるかご存じでしょうか?山の土を河川が削って運び、川を下る際に石が小さくなって、海で積もると答えた方、残念ながら不正解です。


 なぜ?学校ではそう習ったよ、という方がいらっしゃると思います。
 ならば河川に実際行ってみてください。上流の河川が良いでしょう。あなたの言い分を考えると、そこには大きな石の塊、川の運搬の過程で削られる前の石がころころと下流へ向かっているはずです。でもおそらくそんな場面見ないでしょう?日本の、急流とはいえ流量の小さな河川でそんな光景がたくさんあるはずがありません。


 さらにいうと、日本の河川が普段石や砂、土、泥を運んでいるというのも間違いです。だってあなた、川の中で常に石がころころと転がっていますか?実は地層というのは一定の時期にしか積もらないのです。


 では、それがいつか、考えて見ましょう。
 イメージしてください。
 まず、川が石を運んでいるなら、そのときあなたの目にもそれが見えなくてはなりません。次に川が砂を運んでいるなら、そのときあなたの目にもそれが見えていなくてはなりません。最後に川が土を運んでいるなら、それを写した映像の中で川が土を運んでいるのをあなたは確認できなくてはなりません。どうですか?あなたにはどんな光景が頭の中に浮かびましたか?


 きっと、運ばれる土で川は茶色くなっているでしょう。砂についても同様です。
 そして、石が転がる川というのはすごい流速であることは間違いないでしょう。もうわかりましたね。地層が海底に積もる時、それは、洪水の時なのです。洪水の時に一気に砂や土や石が海へと流されていくのです。つまり、そんな特別の時にしか地層はたまらないんですね。これがひとつのキーワードとなります。ちなみにこういった流れの中でも、礫が削られてようやく砂や泥にまでなるということは実はありません。多くの砂や泥は、河川に運ばれる前に風と水の風化作用を受けてできます。それが流れるだけなんですね。ただ、当然それらの礫・砂・泥は互いにぶつかり合うので角が取れて磨耗します。これは事実です。


 さて、いままでで礫・砂・泥がある特定の時期に海底に降り積もって地層ができるということがわかりました。これで、なぜ地層の縞模様ができるのかお分かりですね。地層の層と層の間には時間が空いているのです。地層は層ごとに一気にたまっていくものなのです。このたまるときに条件がよければ、海底を粒子が沈降していく過程で大きい粒子と小さい粒子が重力によって分かれます。その結果、その層は下から上にきれいに大きさ順に粒子が並ぶことになります。そうでない地層もあります。時間が違うので粒子の質も違います。この結果、層と層も見分けがつくというわけです。ただしここまでは実は陸の堆積物に関する話です。


 このようにしてできる地層とは別の地層もあります。マリンスノーって聞いたことありますよね。海中にはたくさんの微生物がすんでいます。珪酸質の殻をもつ有孔虫などです。彼らの珪酸質の殻は海底にしんしんと連続的にうっすらと積もっています。それが地層になるのです。

 さらには、珊瑚の作り出す炭酸カルシウムも地層となります。これらは主に遠洋で作られる地層の堆積物となります。大陸や島の近くでもこういうものは降り積もりますが、土、泥、礫に比べるとこういったものは非常に少ないので目立たなくなります。ちなみにこういった連続的に振っているものがなぜ層を成すのかは諸説あり謎です。


○地層を見て何がわかるの?
 地層は思いのほかいろんな情報を持っています。そのことをしゃべる前にいくつかの地層の原則を書いておきましょう。覚えてください、って多くは当たり前のことですからご心配無用。まず、地層は下から上へと積もっていきます。当たり前ですがこれは重要です。次に地層は必ず大きく見れば水平に積もるということです。斜めに積もったりすることはありません。斜めの地層があれば、それは後で斜めになったということです。その次に、地層は水平に連続しているということです。


 さて、では地層を見ると何がわかるのでしょうか?ためしに、日本近海でできた(というと結構不正確なのですが)地層の境目を見てください。波打っていたりしたら見っけものです。


 先ほど紹介したように、地層と地層との間には時間が空いています。層と層の間の境界線は長い時間を示しているのです。これを層理面といいます。この面には時に何百年もの時間が含まれていることさえあります。地層は堆積してから長い時間を経ます。その間に地層も圧密されるのですが、その間の記録をこの面と層は如実に表しているのです。
 
 例えば、この面が軽く波打っていたとしましょう。それは波の跡です。そしてこれが残るということは浅瀬であったことを指し示しています。その上の地層に斜めに交わったいくつもの薄い層があったとすればそれはクロスラミナです。打ち寄せる波の跡。先ほどよりもずいぶん浅いところでたまった地層となります。そして下の地層がS字型に波打っていたとしたら…、深海での海底地すべりの後となります。さあ、歴史がひとつ組みあがりました。下から上へと地層の時間は流れて生きます。この地層は隆起していって(あるいは海が引いて)浅瀬になって今の陸地になったんですね。


 なお本当はもっと証拠が必要ですし、もっとわかることはあるのですが、筆者が疲れました(爆)。
 今日のところはこれまで!!

(執筆:馬藤永徳)
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