恐竜は走れたのか?

○はじめに

 恐竜のニュースを見ていると、「ティラノサウルスは走れたか否か」「恐竜の速度はどのくらいか」という議論が時々あがってきます。
実際に恐竜を走らせることはもうできません。では、恐竜が走れたかどうか、どのくらいの速度で走ったのかはどう調べられているのでしょう?今回は、それについてお話していきます。

1.骨格から走れたか推定する

 骨格が丈夫であるか、あるいは早く走れそうな体つきかで、判断します。筋肉がどのくらいつくことができ、どのくらいの力に骨が耐えられたのか、生物力学の専門家が意見を出しています。

 

 たとえば、恐竜は大型の生き物です。このことが、恐竜の速度に影響します。以前もお話しましたが、骨の長さが2倍になれば、骨の断面積は4倍になり、骨の体積つまり重さは8倍になります。骨の強度は断面積に、骨にかかる力は重さと関係があります。大きくなればなるほど、強度に大して骨にかかる力が大きくなってしまうのです。

 

 またティラノサウルスなどは、走るに耐えるだけの筋肉があったという研究者となかっという意見があります。どのくらい筋肉がついていたか、つくことができたのかというのも大きな争点です。

 

物理など、様々な分野の研究者が意見を出し合っていますが・・・・結論は出ていません。古生物学以外の研究者もたくさん意見を述べている、面白い分野ではあります。


2.走った証拠から推定する

 化石は骨ばかりではありません。古代の生き物が残したものであればなんでも化石であり、糞化石、皮膚の印象化石、氷付けのマンモス、そして足跡化石も化石です。足跡化石が、歩行跡をなしていれば、そこから恐竜の行動が推定できます。どこへ向かっているのかはもちろん、そのときの状況も判断できます。例えば走ったのか、そしてその速度など。

 R・M・アレクサンダーは、恐竜の腰の高さと歩行時の歩幅から、恐竜の速度を推定する数式を考案しました。そして、

  速度 (m/s) = (0.25) x (9.8 m/s/s)0.5乗x (ストライド長)1.67乗x (腰の高さ) -1.17乗
 *重力定数:9.8 m/s/s

 *スラトイド長:歩幅(右足から左足)の二倍。右足から次の右足まで。
 *腰の高さ:化石からのほか、大体長さの4倍であることもわかっています。


 実際に走った跡から推定するという点でいえば、正確であるといえます。
 しかし、この数式にも異論がある上、足跡が化石として残る状況を加味する必要があります。足跡化石が地層に残るには、ちゃんと跡がのこり、さらにそれに堆積物がかぶさり保存される必要があります。そういったところは大概、ぬかるんだ水辺ということになるでしょう。そんなところで恐竜が普段どおり走れたのか・・・という問題があります。


 別の問題点があります。足跡化石と、骨格化石の紐付けが難しいという点があります。足跡化石の形だけから判別できるのは、「〜科の恐竜」というところまで。近くで発見された恐竜と、状況証拠から紐付けることができない限り、〜サウルスの足跡とすることはできないのです。

 近くから化石が見つかっているわけでもなく、何もなしに種名を判断しているものは勇み足でつけています(恐竜の種名に限らず、化石の種名はけっこう勇み足で付けているものも多いので注意が必要です)。このような状況のため、足跡化石にはそれ「専用」の種名がつくこともあるほどです。


3.ということで

 結局のところ、恐竜は走ることが出来たのか、走れるとしたら、どのぐらいの速度で走ったかについては、明確な答えが出せるわけではありません。何とも歯切れが悪くて申し訳ないですが、色々な科学者たちが、骨格や足跡化石などを見ながら、推定しているというのが現状です。

(執筆:馬藤永徳)

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