恐竜・翼竜ガイド(10)日本産の恐竜とは?

○日本における恐竜研究の始まりとは?

 今回は日本における恐竜の発掘場所をはじめ、「日本と恐竜」という関係について色々と御紹介します。  まず、日本の恐竜研究はいつ、どこから始まったのでしょう。それは1934年、当時は日本領であった樺太から見つかったニッポノサウルス・サハリエンシスでした。ニッポノサウルスは、ランベオサウルスに近い仲間で、全身の60%が見つかっています。


ニッポノサウルス・サハリネンシス
命名は、北海道帝国大学の長尾巧教授。なお、この教授、サハリンでデスモスチルスの全身骨格を発掘し、ひれでなく足があったことを発見していたりする。

 
 それでは、日本列島から恐竜の化石が最初に見つかったのは、いつ、どこのことでしょうか。 それは1978年、岩手県岩泉町の宮古層群でした。ここで見つかった化石は、不完全な上腕骨のみで、竜脚類の一種とまでは判断できるものの、現在も細かい種類まで特定されていません。しかし、日本産の恐竜としてモシリュウの愛称で親しまれています。

 その後しばらく、歯ひとつで大発見とされる状態が続きましたが、現在は研究がすすみ、日本の各地から恐竜化石が発見されてきています。では、産出地をご紹介いたします。

○手取層群〜福井・石川・富山・岐阜に広がる一大化石産出層〜

 手取層群は、日本における最大の恐竜化石の産出エリアです。

 ここは中生代白亜紀に陸(湖や川)で堆積した地層で、恐竜はもちろん、それ以外にも亀やワニなど多くの陸生生物の化石を産出していおり、日本の中生代を研究する上で、大変重要なエリアです。また、福井県勝山市には福井県立恐竜博物館が建てられており、これは世界的にも有数の恐竜及び古生物の化石展示と、研究機関となっています。

 さて、手取層群から産出する恐竜は、2000年代に学名のついたフクイラプトルやフクイサウルス、フクイティタンの3種類。日本の恐竜化石には、種が細かく特定するに至らないものが多いので、特定に至っている、この3種類の恐竜は大変貴重です。もちろん、手取層群からは前述の3種類以外にも、研究中や分類不明の恐竜化石(歯を含む)や、大小様々な獣脚類、鳥脚類、竜脚類の恐竜足跡が見つかっています。


フクイサウルス・テトリエンシス
鳥盤類。これは復元模型で、実際に発見されたのは右下に展示されている頭骨の一部など。イグアノドンに近い仲間。


フクイラプトル・ギタタニエンシス
獣脚類。はじめはツメから、ヴェロキラプトルなどに近いと思われていました。しかし、研究の結果、アロサウルスに近い仲間であるとわかっています。

手取層群の環境再現

フクイティタン・ニッポネンシス
日本産竜脚類では初の、正式に学名がついた恐竜。ティタノサウルスに近い仲間です。


フクイティタン・ニッポネンシス(復元モデル)

勝山産のワニ化石 手取層群は恐竜以外の動物化石も豊富に産出しています。

○篠山層群(兵庫県)

 ここからは状態のよいティタノサウルス類が発見され、丹波竜(タンバリュウ)の名前で親しまれています。産出層は、中生代白亜紀前期に湖で堆積したものです。発見部位は、肋骨、尾椎、骨盤の一部、頭骨の一部などです。丹波竜からは、獣脚類の歯化石も発見されており、丹波竜の死体を食べに来たのではないかとも考えられます。


丹波竜(タンバリュウ)
日本産恐竜化石の中では、指折りの状態の良さ。


○熊本県

 近年では、熊本からも恐竜が発掘されるようになりました。産出するのは御船町の御船層群と、天草諸島の御所浦層群。どちらも、恐竜の歯、足跡、骨格の一部を産出しています。御船層群より産出した肉食恐竜の歯は、ミフネリュウの愛称で親しまれています。

○その他

 ほかにも、北海道、福島県、群馬県、三重県、徳島県、長崎県などから、部分的な骨格や歯化石などが産出しています。これらは部分的な骨格や歯などであり、正式な記載までには至っていません。

 多くは〜リュウという愛称がつけられています。これは学名ではなく、愛称といったものです。学名「フクイサウルス」は「フクイリュウ」という愛称がついており、「リュウ」という名称は全て愛称と考えてかまいません。

〇海外にくらべて、何故日本では全身骨格が残りにくいのか

 なぜ日本では、全身骨格が残らないのでしょうか。一方、歯の化石は比較的見つかりやすい理由は何でしょうか?

 まず、そもそも全身骨格として残ること自体がそもそも難しい、というのがあります。そして、これも重要なのですが見つからない理由としては、地層が少ない上に、木々の生い茂った山の中にあり、岩盤が固いので発掘しにくいというのあります。一方で、歯が残る理由は、恐竜は一生に幾度も生え変わるため、数が多いのです。

 ちなみに哺乳類の一部やほとんどの魚類、爬虫類の歯は多生歯性で、たえず成長し、新しい歯といわれています。なお、恐竜の歯は人間でいう犬歯とかの役割の区別はなく、同じ役割のものばかりで、直ぐ折れるのが特徴です。
(執筆:馬藤永徳)


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