| ●消えつつある株券ですが |
株式を発行してもらいますと、従来の場合は「株主としての地位」を表した株券というのが当たり前のように発行されていました。
もちろん、今でも沢山発行されていますので非常に重要な話です。
*2009(平成21)年より、上場企業が発行している株券は電子化され、つまりパソコンのデータとして管理されるので、有名企業の株券を見る機会は減っていくと思います。現在お持ちの株券それ自体の効力は無効になりますので要注意(ただし、株が無効になるわけではないので、特に株券を持っている方が手続をする必要はありません)。
なお、電子化されてもパソコンのデータとしては株券が発行されることになりますから、株券紛失時の取扱いを除けば、この話自体は大きく変わらないと思われます。・・・まあ、変わったらまた書き直します。
| ●株券の発行 |
それでは株券を発行してもらったとします。
ここで注意しないといけないのは、株券は必ずしも1株=1枚である必要はないと言うことです。つまり、例えば100株や1000株単位で1枚でもOKです。実際の場合は、殆どはこういう感じでまとめて1枚になって発行されています。例えば、「裏辺研究所株式会社株券 1000株券」と言った感じで表面に印刷されています。もっとも、人によっては部分的に人に譲りたい、と言う人もいるでしょうから、株主の申し出があれば、1株でも株券を発行しないといけません。
| ●株券はいつ発行される? |
株券は、
1.会社が成立したとき
2.新株の払込期日後
遅滞なく、つまり直ぐに発行しないといけません。ならば、フライングで会社成立前に株を発行してしまうのは?・・・というのはダメ、です。準備はしても良いですが、発行は定められた時期に行いましょう。逆に、なかなか理由を付けては、1年も2年も、10年も株券を発行しない悪い企業があります。つまり「だって、株券の印刷に金がかかるしぃ」ということですね。いけません、発行してくれないと、株主としては困ります。何で困るのでしょう? そこで次の話です。
| ●何故株券が必要なの? |
株券が必要になるのは、法律で「株券を他人に譲渡する」条件として、会社が株券を交付することが定められているからです。
さらに、株券が交付されない前に、他人に株式を譲ってはいけないし、譲ったとしても会社に対しては効力を発揮できません。つまり、まだ株に関する準備が整っていないのに、どんどん実態のない株が取引されるのは困るので、会社に「オレが今の株主だ!」としても、権利者として認めてもらえないことになります。
しかし先ほどのように、なかなか株券を発行してもらえないと、他人に譲ることも出来ません。
そこで最高裁判所の判例では、「株式会社が株券の発行を不法に遅滞し、信義則に照らして、株券譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に到ったときは、株券発行前であっても、株主は意思表示のみにより、会社に対しする関係においても有効に株式を譲渡することが出来る」としています。
信義則というのは、信義の原則。読んで字のごとく、です。
常識的に考えて、そりゃね〜だろ、という状況の場合、法律でストップをかけてくれるわけです。
というわけで、あまりにも酷い場合は、株券が無くても、自由に株式を譲渡でき、さらに会社に対しても「譲ったぞ、認めろ!」とできるわけ。これに対し会社が「そんなの、みとめるか」と言っても関係ありません。悪いのは株券を発行しない会社です。
| ●僕は株券は要りません |
しかし株券が発行されると、落とす可能性があります。
例えば佐々木さんが落とすと、誰かが拾います。もちろん、そのまま川や海に流れて、ボロボロになって消える可能性もありますが、しかし通常は拾われるケースの方が多いでしょう。で、拾われたとしますが、この拾った人が、その友達(山本さん)に「僕の株なんだが、これを買ってもらえないだろうか」と言い、山本さんは「オッケー、買うよ」と買ってしまうかも知れません。
その後で、「いや、実はそれ、佐々木さんのだ」となったとしても、山本さんとしては困ります。
そこで特に落ち度もなく善意で株券を取得した者(第三者)は、有効に株券を取得する、とされています。
であるからにして!
「再発行お願いします」と会社に言っても、この辺の法律関係がハッキリしないと再発行できません。そこで、裁判所が「この株券無くしました」と公示し、さらに一度、その株券を無効にします、という除権判決が出ないと、株券が再発行されないわけです。となりますと、面倒。そこで、あらかじめ「私は落とすのが怖いので株券は要らない。」と会社に言うことが可能です。
会社はそうしますと、その旨を株主名簿に書いて、株券を発行しなくてよくなります。
ただし、譲渡の時には株券の発行が必要ですから、やってもらうことが可能です。
| ●株式の譲渡を制限したい |
ところで、確認ですが貴方が買った株式は、株券があれば自由に他人に売ったり、譲ったり出来ます。
しかしそうしますと、会社としては「裏辺所長が持っているなら株主総会で暴れないので安心だが、ヤクザの薬丸さんに売られるとなると困ったな・・・」という事態が想定されます。また、親戚一同で自社の株を持っていたのに、その中の1人が全く関係のない他人に株を売ってしまう、となると面倒なことになるから嫌だ、と言うことも考えられます。
なら、これをあらかじめ防ぐには何か手はないのか? ・・・あります。
もちろん、制限をかけると市場で株が売れなくなる可能性がありますが(人気が低くなる)、取り敢えずあるにはあります。
すなわち、会社の憲法とも言える定款(ていかん)で
「当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない」
という文章を入れてしまうことで、つまり、株式を譲りたいと思った株主は、会社の取締役会に「裏辺金好という人に、5000株を譲りたいのですが、OKですか?」と(誰にを&数量を明示する)申し出て、承認を求めることになります。こうして、取締役会、つまり経営者サイドは自社の株が見ず知らずの赤の他人に行き渡ることを防ぐことが可能になるのです。
これは商法上で認められています制度(定款による株式譲渡の制限)。この文章は、会社発足時のみならず、途中で定款に加えてもOKです。ただしその場合には、定款の変更にあたりますので、株主総会での承認が必要です。なお、この他に株式譲渡の制限の方法は認められません。なお、譲渡の申し出があれば、取締役会は2週間以内に、その人に書面で解答しなければなりません。期間内に回答がなければ、譲渡は承認されたとして扱われます。
さて、譲渡が認められて、裏辺所長の株式は荒谷所員に譲られることになりました。
そうしますと、荒谷所員は裏辺所長に対し、(あんたが次の株主だよと)指定の通知があったときから10日以内に、譲渡人である裏辺所長に「株よこせ〜」と請求することが出来ます。すると裏辺所長は、その請求を受けたときから1週間以内に、会社の本店の所在地がある供託所に譲る株を供託し、荒谷所員に連絡。こういう、ちょいと面倒な手続きを経て、荒谷所員が株を取得することが出来ます。
定款にこういう文章があれば、ニッポン放送とライブドアをめぐる争いも変わったと思うんですけどね。
ただし、
「なんだ、買ったは良いが売ったり譲ったりするのが面倒なのか」
という、制限のある株式を買おうという人は少なくなってしまいますので要注意です。
| ●それでも譲渡したい |
会社側としては「その人に株を譲ってはいけない」という解答でしたが、それでも株を譲った場合、どうなるのでしょうか。
実は、当人同士でただ単に株を譲るだけなら問題ありません。ただし、だからといって譲られた相手が「オレを株主として扱え」と会社に主張することは出来ない、ということです。
| ●ストックオプション(新株予約権の無償発行) |
続きましてこの、ストックオプションのお話。どこかで聞いたことがある人もいるかも知れません。
もっとも、平成14年から名称も新たに「新株予約権の無償発行」として仕組みが変わったので要注意。さてさて・・・。
もし貴方がトップの経営者として、他の取締役や従業員にやる気を出させるためにはどうしたらいいでしょう。
給料UP、個人的に親しくなる、色々あると思いますが、やはり自分(従業員)が会社の業績を伸ばしたら、自分の財産が増えるという仕組みが出来れば、素晴らしくありません? つまり、株ですよ、株。会社の業績が上がれば、大抵は株価も上がります。そこで、取締役や従業員に、自社の株をあげるのです。
と言っても、直ぐにあげるわけではありません。
予め定められた価額で会社の株式を取得することのできる権利を付与し、取締役や従業員は将来、株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得し、売却することにより、株価上昇分の報酬が得られるという一種の報酬制度となっています。言うなれば、「ご褒美事前予約権」。具体例で言えば、まず従業員は会社の株を100株100万円で買える権利をもらいます。「よ〜し、頑張るぞ」と従業員は日夜働き、なんと会社の規模が1.5倍に! しかも、株価は5倍にまで跳ね上がりました。
そこで、従業員は100株100万円で購入し、それを5倍の値段で売り払う。おお、これはもうかった!
と言う仕組みです。
ちなみに、この新株予約権の無償発行は株主総会の特別決議を経る必要があります。
(株主総会については、次のページで見ます)
勝手にバカバカ、従業員や取締役に株を与えられては困る、と言うことですね。で、あるからにしてネットで検索すると、株主の皆様へのお知らせ、と言うのが沢山掲載されております。もっとも、従業員が頑張ってくれれば、他の株主も高く株を売れる可能性が出るわけで、悪いお話ではないのですが・・・。ちなみに、平成14年改正からは、このストックオプションは、取締役や従業員に限らず、誰に与えても良いことになりました。もっとも、まだ税制面では取締役と従業員に限られているようですが・・・。
| ●そもそも買わされる、従業員持株制度 |
一方、先ほどのような「ご褒美」事前予約権と違って、あらかじめ「みんなで自社の株を買いましょう!」という制度もあります。
それがこの、従業員持株制度で、上場企業の90%以上が採用していますし、その他の会社でもやっています。
やり方は幾つかあるようですが、代表的な物はこうなります。
まず.持株会を設立して運営し、そこに従業員を会員として参加させます。
そして会員である従業員から毎月一定額をお金を出してもらい、株式を共同購入して、拠出額に応じて持分を配分します。
また、これとは別に役員が共同で自社株を取得する、役員持株制度もあります。