英語------それは私が中学時代に一番苦手だった数学の次にくるものであった。 ここだけの話なのだが、私は英語で@しか成績表に残していない。
しかしTOEFLという、国際的な評価を得られる試験で510点を取った実績は、ある。だが、決して自慢できる点ではない事だと確信している。
それでも世の中にはどんな勉強が出来なくても、体力に自信がない人間でも 五体満足で知能指数も普通なら、絶対に努力次第でなんとか成り上がれると、個人的に思う。第一、わからないと言っているヤツほど自信がない事に
否定的になって何もしていないのが多い。もしくは、どうやったら要領よく 覚えたり、使いこなせるのか把握できないと思っているのではないか。 そんな私もその中の一人であり、苦い経験を普通の人間より噛みしめてきた。
今、私はアメリカに留学している。
私が何故留学を志したかというと、まず、『高校中退』という挫折があったからだ。今思えば本当に親に迷惑をかけたし、人様に対して大変お世話になった時期だ。
周りにいた友達も普通に高校生活を楽しみ、皆が彼女や志望の大学の準備を 進めている間、私はただひたすら部屋の中で将来について考えていた。
ゲームの新作を買う為に近くの家電製品量販店へ行くと、雑誌が置いてあるコーナーで私は、ふと目を見張った。それは--------『アメリカで働く』と記された留学支援の週刊誌であった。なんで気になったかというと時期的に就職を考えていたので、単に
普通に大学へ行くやつらの当て付けか、品のない自尊心からか、私はその本を取った。
何気なく、その本に書かれているコラムを読んでいると、ある文章に心が動いた。
『僕の人生』
と書かれていたものだが、ある不登校の少年が、自分の人生を親と一緒に向き合い カナダ留学は自分を変えるチャンスだと信じて、今まで遅れを取っていた英語を一生懸命勉強し、人の2、3倍語学力をつけてアメリカ人の友達を作り、孤独と
絶望感を克服したストーリーが書かれていたのだ。実話なので所々、留学生活で苦労があった話や食事や飛行機に乗るのに抵抗があったこととが書かれてあり、私の心に打ち込んできた。
最後に彼はこういい残している。
『僕の人生は他の子から見て不幸なのかもしれません。でも僕は自分で選んだ 人生であるし、人生は希望通りに上手くいかないけど、僕と周りの人次第で
変われることに気がつきました。新しい環境でゼロから作り直したことは 僕にとってこれから大人になることへの自信と自立心を与えてくれたと 思っております。みんなも肩の力を抜いて、一度カナダへ過ごしてみては?』
なんてええ話や!!(T~T と、単純だった私は“なんとなく”英語の文法が 書かれた『英文法を1から理解する』という題名の本を一冊買ってしまった。
レジの可愛い店員さんから「すごいですね☆ どこか留学するんですか?」 と何気ない質問に私は感無量の気持ちだったので、つい調子に乗って 「はい、アメリカとかに留学しようと」と喋ってしまったのである。
私の隣で漫画を買おうとしていた眼鏡をかけた学生さんは絶対に「ええい、 迂闊なヤツめ!!」と、思ったに違いない。 家に帰った私は、早速文法の本を開いて読んでみる事にした・・・・が
全くといっていいほど理解できない。何故だ、何故私はこんなアホな ことをしているのだろう。
あの時、私はもしかしたら『シャア少佐だって 戦場で手柄を立てて出世したんだ!!』とジーンの様に調子こいて(機動戦士ガンダムのネタです)、挑戦しただけなのかも知れない。
三時間机の上で本とニラッメコしていた私は、ようやく己の過ちに気がついた。
次の日、今度はGEOSという英会話専門学校へ行ってみようと 行動を起こした。受付で金額の説明を受け、夜間のコースを取った私は 次の週から英会話の教室へ通うことが決まった。
あんなにハッタリをかましたのだから、せめて責任を取ろうと 英語が出来る人から教えをこうことを誓ったのであった。
朝と昼間は段ボール工場で働き、夕方になってきたらGEOSへ足を急がした。
教室は3〜4人の生徒で、一番下のレベルから始めることになった。 私の先生はT先生で、優しそうな笑顔と豊満な体型は、まるで一発で全国の 美味しいラーメン屋がどこにあるのか当てられそうな印象の持ち主である。
そこには三人の日本人の生徒が居て、一人は福岡からきたMikaという お姉さま系ギャルで、なんで留学を目指しているかというとアメリカ人の彼氏を作りたいからとふざけた理由を真面目に考えている。
顔と体型はモデルで美人なのだが、性格は腐っている(まるで機動戦士Vガンダムにでてくる、カテジナ・ルースなみに)。
もう一人は東大阪からきたヤツで、Yという。Yは大阪に残した彼女と 将来結婚したいが、親はYが大卒になるまで許してくれず、Y自身も イギリスの文化に興味を持っていて大学へ進むなら是非イギリスのほうへ
行きたいと、留学を決意した。 最後は通称『虎のおじちゃん』と呼ばれているN本さん。
服装が一見 歌舞伎町で歩いている極道の方っぽいが、めちゃくちゃ心が広く、 そして英語の発音が上手というすごい人である。彼の場合は 現在勤めているソフトウェア会社からIBMへ引き抜かれるらしいので
英語を独学で学び、TOEICのスコアを上げる為に来ていた。 そんな個性的な学び舎で私は一年間、基礎を積み上げるために 文法や知っていると得する熟語や単語を覚えていた。
ある日、MikaがT先生にどうすれば英語を綺麗にNative Speakerへ 伝えられるか尋ねた。
そういえば日常で英語を使うのに、果たして 私はどこまで正確に英語を使いこなせるのか、今まで私達は全く 外国人と喋ったことがない。これはマジでやばい。
そんな風にあせっている私を見ていたのか、T先生はこう諭した。
「そうねぇ、やっぱりSpeakingという会話の経験を踏まないと まず成り立たないわね。いくら単語や文法を知っていても、会話の 空気に慣れないと聞き取れないわ。でも皆は初めて海外へ留学するの
でしょう?
アメリカ人やイギリス人でも最初分からなくて困っていても 人によっては親切に話を聞いてくれて、理解してくれるから安心しなさい。大事なのは“あなた自身が心から留学を楽しむこと”なんだから。
私がアメリカへ16歳で行った時なんか泣いてばかりだったけど。 でもそれは私が心を閉ざしていただけで、誰も私に対して嫌な ことをしていないんだって気がついたのよ。一年以上経ってから
ある時自分で奮い立たせたの。このままじゃあいけない、私の 目標はアメリカで暮らすことなのだから頑張ろうって。
そこから友達も増えて、ほとんどアメリカ人だけだから英語も 上手くなったし、あとアメリカ人って日本人みたいに陰湿や卑怯じゃあ ないし、責任や人に対しての思いやりも教えてもらったわ。ある女の子なんか、学校の先生が教えている理科の授業で
『この宿題の量は私の私生活の中で一番大切な家族の時間を省かせています。 私にはこれだけの宿題を出すことが出来ませんがあなたの試験では、いつも満点だし、態度も悪くありません。ですからあなたの授業の時間は
帰ってもいいですか? そうすれば宿題を全部終わらせます』
と自己主張を堂々としたんだから凄かったわよ。もちろん先生はすぐに方針を変えて、生徒に支障がないように配慮したんだけどね」
学校のシステムが総て生徒の意向を受け入れた私立高校だったらしい。 その分見返りを見せないと協調性が欠けていると責任を追及する・・・、日本じゃあ絶対に有り得ないことも、そこにはあるのだ。
T先生の話を聞いているうちにいつの間にか、全く縁がなかった英語から 異国の地アメリカという憧れへ私は今までの自分を大きく成長させた。 こんな私にも、まだ“夢”という目標を持てる。
そんな動機からアメリカへ留学を決めていった。 どんな国なのか、また文化や経済でも常に時代の最先端をいく国アメリカ。 私の好奇心はその後も膨らみ、バイトしていても留学という夢について考えてばかりであった・・・・・。