ドイツ語入門編(22) 接続詞

 さて、複文における配語法のお話。今回は接続詞と、接続詞に導かれる副文についてお話します。関係文についてはまた今度。

○接続詞

 文と文を繋ぐ役割を果たすのが接続詞です。
 ドイツ語では、接続詞は並列接続詞と従属接続詞の2つに分けられます。

 並列接続詞とは、文と文を対等に結ぶ接続詞です。
例:und「そして」、aber「しかし」、doch「しかし」、also「それゆえ」、denn「なぜなら」など。


 これに対し、従属接続詞は、ある文をもう一つの文の中に組み込む接続詞です。
例:dass「〜すること」、wenn「もし〜なら」「〜するときに」、während「〜する間に」、ob「もし〜であったら」、als「として」「よりも」「〜するときに」、weil「なぜなら〜なので」など

 並列接続詞と従属接続詞との違いは、意味の違いではなく、文における扱いの違いです。

 並列接続詞は、第一の文に続いて第二の文を導き出すのに使いますが、第一の文と第二の文は同等であり、それぞれ独立した文の形をしています。

 Er bleibt auf, aber studiert noch. ア ブイプト アウフ アーバー シュトゥディールト ノッ
[auf|bleiben 起きっぱなしでいる studieren 勉強する noch まだ]
 彼は寝ていないのにまだ勉強している。


 これは本来「Er bleibt auf, aber er studiert noch.」ですが、2つめのerが、aberの前を見れば明らかなので省略されています。そして独立した文であるという証拠として、どちらの文も定形"bleibt""studiert"が第二位に来ています。

 ところが、従属接続詞が作る文は、一方の文が他方の文に従属しています。

 Ich kaufe den PC, weil ich Geld habe. イッヒ ウフェ デン ペーツェー ヴァイル ッヒ ルト ハー
 あのパソコンを買いました、だってお金があったから。

 weil ich Geld habeはIch kaufe den PCに従属しています。そのため、独立した文とは見なされません。この時従属している文を従属節といいます。これに対して従属されている側を主節と言います。

 従属節では、定形は最後尾に来るのが規則です。このように、従属接続詞と定形で従属節を挟むという構造を、枠構造といいます。

 なお、ドイツ語では並列接続詞が2つ目の文の先頭に来ないといけないという規則はありません。特にdochやaber、alsoなどは先頭に来ない例をよく見ます。例えば、
 Er bleibt auf, studiert aber noch.
 といったように。このようにしても別に問題はありません。このため、往々にして並列接続詞は副詞と区別が付きにくくなっており、辞書によっては副詞として載っていることもあります。

○複文の際の注意点

従属節は「ひとかたまりの要素」である

 主節と従属節からなるのが複文です。複文の主節は定形第二位、従属節は定形最後尾というのが規則でした。
 ところで従属節それ自身も主節の一部で、ひとかたまりの要素です。だから、"auf der Straße"などと同様、主節の最初に来ることも出来ます。

 Weil ich Geld habe, kaufe ich einen PC.

 weilからhabeまでが文の第一要素なので、第二位はその直後。よってkaufenは従属節のすぐ後に置かれます。ここにくることで定形第二位の法則を満たしているわけです。

従属節の後に分離前綴だけが来ることもある

 また、従属節が主節の間に挟まるので、主節がわかりにくくなることもあります。

 Ich modele mein Haus, als ich Geld bekomme, um.
 イッヒ モーデレ マイン ウス ルス イッヒ ルト ベメ ウム
[um|modeln 改造する bekommen 手に入れる]
 お金が手に入ったら家をリフォームします。

 この例では、主節の途中にals ich Geld bekommeという従属節が入り込んでいるせいで、最後のumがえらくmodeleと離れてしまっています。
 こういった例では、従属節を主節が終わった後に置くほうが普通です。

 Ich modele mein Haus um, als ich Geld bekomme.

従属節では分離前綴と本動詞は合体する

 従属節の定形が分離動詞である場合、分離動詞は合体して文末に置かれます。

 Ich habe kein Geld, weil ich mein Haus ummodelte.
 イッヒ ハーベ カイン ルト ヴァイル イッヒ マイン ウス ウムデルテ
 家をリフォームしたのでお金がありません。

従属節における不定詞と助動詞とhaben

 助動詞構文が現在完了形になるとき、普通の文ならhabenを定形に、
 (ひとつめの要素) haben (……) 不定詞 助動詞の過去分詞.
 という形になります。

例:
 Er hat den Brief lesen können. エア ハット デン ブリーフ レーゼン ケネン
 [Brief (男)手紙 lesen 読む]
 彼はその手紙を読むことが出来た。

 助動詞の過去分詞形は不定詞と同じ形でした。

 従属節に来ると、普通ならhabenを助動詞の更に後ろにつけて、例えば、

 als er den Brief lesen können hat*, ....
 もし彼がその手紙を読むことが出来たのであれば、……。

 となるはずです。しかしこの場合は特例で(hatの後ろに付いている*は、この文が誤りであるという印です)、hatは不定詞の前に来、
 (接続詞) (……) haben 不定詞 助動詞の過去分詞,
ます。つまり、

 als er den Brief hat lesen können, ....
 もし彼がその手紙を読むことが出来たのであれば、……。

 これが正しい。

○仮定を表す倒置

 接続詞のない複文が定形から始まる、という文を見かけることがあります。

 Wäre ich ein Vogel, flöge ich in den Himmel. ヴェーレ イッヒ アイン フォーゲル フレーゲ イッヒ イン デン ンメル
[fliegen flog gefliegen 飛ぶ Himmel (男)空]
 もし私が鳥だったら、空を飛ぶのに。

 定形から始まるこの複文は、仮定を表します。つまり"Wäre ich ein Vogel"は"Wenn ich ein Vogel wäre"と同じ。


 さて次回は、分詞についてのお話をします。過去分詞については既に扱いましたが、これまでは動詞と結びついて特別な意味や時制などを表す用法だけを扱ってきました。次回は、文中で、つまり形容詞として名詞を修飾する場合にはどうするのか、というお話と、ちょっと特殊な構文である非人称文についてお話しします。


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