○ 騎士
 我々のイメージする「全身甲冑をまとった騎士」が戦場に登場するのは11世紀からだという。その一番大きな理由は、甲冑の製造技術の問題ではなく、11世紀より前には、西洋では鐙(あぶみ)が存在していなかったから(鐙というのは、馬に乗る&乗っている時に、足を踏み掛ける馬具。下のCGで言えば足先に付いているもの)。

 たしかにあぶみがなければ、馬上で踏ん張りがきかない。
 軽装でも踏ん張れないのだから、
 甲冑をつけた状態ならよけいに無理がある。
 あぶみなんて、昔からありそうに思えるのに、意外な話だ。

 ちなみにフル装備した場合、鎧と人間の重さを合わせると(馬鎧も含め)、重量は135kgにもなるという。したがって、戦場ではサラブレッドのような全力疾走は無理で、速足程度で活動していたようだ。



● 甲冑の種類について ●
 
大きく分けると3種類。古い順にゴシック式マクシミリアン式ルネサンス式
一番分かりやすいのはマクシミリアン式で、表面がトタン板のような感じで、凹凸のラインが幾筋も打たれている。
(マクシミリアン式に限らず、甲冑の中心などに角度(鎬:しのぎ)が打たれているのは、強度を増すため。)

分かりづらいのがゴシックとルネサンスの違い。
日本で唯一の西洋甲冑師、三浦權利(しげとし)氏によると「歴史学者が便宜上分類した」という事で「技術的な系統としての分類ではない」ようだ。

わたし自身が本を見て気付いた点を書くならば、首当ての着け方の違いにより、ルネサンス式の方が首の自由度が高そうに思えます。
ゴシック式から、改良されたんでしょうね。なお、上のCGもルネサンス式です。

● その他 ●
 
◇ ドイツ式は指一本一本が独立した構造。 イタリア式は鍋掴型。 ドイツ式をゴシック式と呼ぶ。
 
◇ 騎士槍はランス。歩兵槍はパイク(安物の鉄製槍)。
 
◇ 甲冑を新調するのは、現代でも「スタンダードなもので500万。制作期間1年」もかかるという(すべて手作業)。
 
◇ トーナメント(馬上試合)では、相手と正対して双方突撃というもの以外に、輪投げのわっかみたいなやつに槍を通すという競技もあった。また安全のため、ランスや剣は切っ先を丸めていた。

解説協力 : 岳飛 殿、大黒屋介左衛門 殿、不肖デルタ 殿
 
参考文献 : 西洋甲冑ポーズ&アクション集(三浦權利)、ローマ人の物語(塩野七生)