第55回海上保安庁観閲式及び総合訓練
       Japan Coast Guard Inspection parade 2010
●総合訓練
 続いて武器密輸船捕捉・追尾訓練です。

 PL08「とさ」がデッドコピーRPG−7&AK−74満載の武器密輸船に扮し逃走しまくります。ドクロマークがその証拠です。

 なんとも目立つ密輸船なので直ぐに巡視船「かの」「あぶくま」が急行します。どちらも能登半島沖不審船事件を契機に建造された警備型巡視船であり、30kt以上の俊足を誇ります。

 同時にスーパーピューマが警告弾による警告を開始。停船命令を発します。

 停船命令に従わなかった場合に備え、特殊警備隊も降下準備を開始します。

 「あぶくま」が密輸船に接近し、再三停船命令を発します。命令に従わなかった場合、実力による威嚇も考えられるので乗員の間に緊張が走る一瞬です。

 再三にわたる停船命令に従わなかった密輸船に対し、臨検の拒否と公務執行妨害で特殊警備隊が降下します。

 特殊警備隊、通称SST(Special Security Team)とは、通常の海上保安官では対応困難な事案(シージャック制圧など)に対応するため1996年に創設されたいわゆる特殊部隊であり、今まで数々の事件に出動していたとされます。本来ならば非公開の部隊であるのですが、今回は海上保安庁の実力を広く認知させるため、初めて訓練が一般公開されました。

 SST隊員3名の降下が完了しました。3名は密輸犯が立て籠っている船橋(ブリッジ)の制圧を目標に行動します。

 驚くべきはその早さ。密輸船役が巡視船と言うこともあるかもしれませんが、これだけ俊敏に行動できるのはやはり訓練を積み重ねた「特殊部隊」であるなあということを感じさせます。

 そしてなんといっても見どころはSST隊員が携行しているアサルトライフルが国産の名銃、89式5.56ミリ小銃(折曲銃床式)であるということッ!!ちなみに私は89式小銃が大好きです。愛しています。以下自粛。

 しかし叩けば叩くほど密輸犯は出てきます。別働隊と思われる小型艇を確認。巡視艇「あわぐも」、「しゃちかぜ」が追尾し、停船命令を発します。

 2隻が連携して密輸船を追い詰めていきます。声による停船命令をはじめ、信号や旗(L旗、SN旗)などあらゆる手段で停船を促します。ちなみにL旗とは「停船せよ」の意で黄色と黒の旗がそれに当たります。SN旗は「停船せよ、従わなければ砲撃する」の意で、白と赤の旗がそれに当たります。また、今回は訓練のため同時に訓練中を表すUY旗(赤と黄色の斜めストライプ)を掲揚しています。

 また、複合型ゴムボートも追尾に加わります。船体が小型であるがゆえに機動性は非常に良いです。しかし、自分だったら絶対に酔います(笑)。

 複合型ゴムボートが密輸船に対して警告弾を発します。しかし密輸船は停船する様子はありません。というか止まるわけないんですけどね。

 警告弾を受けた密輸船は抵抗をはじめます。密輸犯2名がアサルトライフルを持ちだし巡視艇に向け発砲を行います。

 そしてこのアサルトライフル…なんとあの国産の名銃(しつこい)、89式小銃(固定銃床式)であったのだ!!しかもドットサイト付きですよ!!いや…密輸犯がなんで89式持ってるんだよとか…そういう質問は無しの方向で…。はい。

 射撃を受けた巡視艇は船体に向けた正当防衛射撃を行います。写真は「あわぐも」が12.7ミリ機関銃で射撃を行っている様子。

 旧型の巡視艇では銃架にブローニングM2 12.7ミリ機関銃を載せただけのもので、乗員が外に出て射撃を行う必要がありましたが、「あわぐも」は遠隔操作式(RFS)に変更されたため、乗員が被弾するリスクを最小限に抑えています。

 人間の肉体が12.7ミリの弾をまともに食らうと(以下自粛)なので、さすがの密輸犯も降伏します。

 制圧班を載せた「しゃちかぜ」が近付きます。海上での移乗は危険を伴います。

 密輸船に移乗し、密輸犯の確保に向かいます。抵抗し出す危険性があるまで最後まで気は抜けません。

 複合型ゴムボートや千葉県警警備艇「ぼうそう」が取り囲む中、密輸犯の確保は無事、完了しました(前の方では続いてますが)。 海上保安庁では日夜を問わず日本に迫り来る不審な船舶への対応を行っています。

 このような訓練の積み重ねこそ、海の安全を守る決め手なのかもしれません。

 さて、次は高速機動連携訓練です。左からPL68「すずか」、PL62「はかた」、PL52「あかいし」です。

 海上保安庁では1999年の能登半島沖不審船事件を教訓に警備型巡視船の整備を進めてきました。しかし、2001年に発生した九州南西海域工作船事件では工作船からの銃撃により海上保安官3名が負傷するなど不幸な事件となってしまいましたが、これにより巡視船の防弾性や工作船の持つ武器の性能が露になりました。

 現在、海上保安庁では速力の速い巡視船の整備や、防弾性のある船体を採用するなど不審船対策を進めています。

 3隻はお互い連携しながら高速機動を行います。また、海上警備行動の想定として護衛艦「たかなみ」も加わります。護衛艦も30kt以上出せます。特に「たかなみ」は主機がガスタービンであるためエンジンの瞬発力も非常に高くなっております。

 特に「あかいし」は2000トン型と大きい船体にも関わらず、驚くべき機動性も有しています。写真は波を切りわけながら高速で航行している様子です。

 大きく船体を傾けながら航行します。もの凄い迫力です。というか、目の前で物凄い勢いで航行なさるのでこちらも物凄い揺れますw

 護衛艦「たかなみ」も後方から支援します。

 続いてPS型巡視船3隻による高速機動連携訓練です。前方からPS14「あかぎ」、PS08「かりば」、PS09「あらせ」です。3隻ともに180トン型巡視船です。

 3隻は隊列を組んで高速機動を行います。




 3隻同時に空砲射撃を行います。不審船追尾の時などは複数隻が連携して追尾を行うのでこのような訓練は時代と共に必要不可欠となりました。今回は訓練のため空砲ですが、実戦ではもちろん実弾を使用します。現場は常に実弾射撃をも想定して行動しています。