96式装輪装甲車「クーガー」


普通科教導連隊に配備されたA型。
(写真:東富士演習場/撮影:鯛風雲)

●基本データ

登場:1996年
重量:14.5t
全長:6.84m
全幅:2.45m
全高:1.85m
乗員:2人

●解説

 陸上自衛隊が保有する装輪装甲兵員輸送車。旧式化した60式装甲車や73式装甲車を置き換える目的で開発された。製作は小松製作所が担当し、制式採用は1996(平成8)年。愛称は「クーガー」。

 装甲兵員輸送車とは最前線へ歩兵部隊を送り込むための輸送車で、戦車等に随伴して敵の銃弾を掻い潜りながら歩兵部隊を展開させる任務を担う。本型も少なくとも12.7mm機関銃程度の銃撃に耐えうる装甲を持っているとされ、かつタイヤ装備を活かして整地された道路では100km/hの最高速度を発揮する。もっとも戦場においてはタイヤ装備には欠点の方が多く、不整地走破能力が乏しいため本格的な戦場でその能力を如何なく発揮できるかは疑問が残る。しかし専守防衛の我が国では全国的に道路も整備されていることなどからタイヤ装備の方が都合いいという見方もある。

 武装は上部ハッチに搭載され、40mm自動てき弾銃(グレネード)を装備するA型と12.7mm重機関銃M2を装備するB型に分けられる。どちらも台座から別設計であるため武装の交換は考慮されていないようだ。

 乗員2名で運用し、後部に4人掛けのシート×2で最大8人までの兵員を輸送できる。自衛隊における歩兵部隊である普通科に配備され平成23年度予算まで333両が導入されたものの、その高価さが災いし思うように旧式化した装甲車の置き換えは進んでいないようである。

 イラク人道復興支援においては軽装甲機動車と共に活動に従事し、また2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震ではタイヤ装備の利点を買われ災害派遣部隊として現地で活動するなどそのフレキシブルさを活かした活躍が今後も見込まれる。
(解説:鯛風雲)

●ギャラリー


陸上自衛隊広報センターで保存されている試作車。ガラス窓風防が取り付けられている。
(撮影:裏辺金好)

高射学校に配備されたB型によるM2重機関銃射撃(空砲)。
(写真:下志津駐屯地/撮影:鯛風雲)

8輪のうちハンドリングは前2軸、駆動は全軸可能だが基本的には後2軸である。
(写真:下志津駐屯地/撮影:鯛風雲)

後部の油圧式ランプドアから隊員を展開する。
(写真:東富士演習場/撮影:鯛風雲)

ランプドアのアップ。エンジン停止時など油圧が使えない場合は片開きのドアを使用する。
(写真:下志津駐屯地/撮影:鯛風雲)

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