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兵科と兵種 その役割 2(部隊を分類する)


○はじめに

 前回は階級について軽くふれ、軍隊組織の階級についてある程度は知ることが出来たと思う。
 そこで今回は、軍隊組織、とくに陸上歩兵の実戦部隊における『部隊』という構成について語ろうと思う。
 尚、ここで語る部隊はあくまでも一般的、であり現行に於ける各国に存在する全ての軍事組織に適応できるものではない。


1.班〜大隊まで

【班】
 班は正式な部隊構成単位ではないが、部隊組織では時としてよく見られる構成単位である。様々な部隊を有機的且つ、合理的に運用される際に、暫し見られる。

例えば、初期対応班や特殊対応班、事後対応班。或いは、A班またはB班。更には狙撃班、迎撃班、陽動班。


 これらは部隊と呼ぶには小さいがほぼ同程度の機能をする。
 人員の構成規模もまちまちであるし、用途もまちまちである。そして、班の中に班が存在する事も珍しくはない。班とは用途別に編成される誠に便利な括りなのである。


【分隊】
 部隊組織の正式な単位としては最小構成がこの分隊である。
 基本的には『下士官』が長となり、構成人員はみな『兵』である。

 人数の規模は9−12人。これは戦術術数値の3の倍数、或いは4の倍数に起因する。分隊の組織的規模は所属する部隊兵科でも異なってくる。尚、分隊支給武器は軽機関銃が1丁ないし2丁支給される。


【小隊】
 もっともな意味では戦術運用部隊としての最小構成が小隊である。
 通常、作戦や命令の類は小隊規模で行われるからだ。


 小隊長は少尉ないし中尉の将校である。
 そこに隊長補として分隊長を兼任する下士官が4名。分隊長麾下の兵士が4個分隊。

 さらに衛生兵が1名、通信兵が1名、伝令兵が1名、専任機関銃手が2名。

 よって小隊は約40−50人で構成される。

 小隊には重機関銃が1丁支給される。また対装甲兵器類と対非装甲擲弾兵器が供与される。


【中隊】
 戦術運用の基本的な構成が中隊である。
 作戦時の戦術配置等は中隊規模で考えられるからだ。


 中隊長は大尉ないし少佐である。
 そして、隊長補として専任士官が1名(豊かな経験のある少尉)、さらに佐官の場合は上級下士官(軍曹や曹長)の副官が1名。

 4個小隊とその人員、さらに衛生兵が1名、通信兵が2名、伝令兵が4名、専任機関銃手数名、対装甲兵器運用兵が数名、特殊兵器運用兵が数名、車両取扱兵が数名。合計で約180−210人で構成される。


 中隊支給の武装は、中隊の特色によって大きく変化する。
 小隊の支給武器との差は、分隊や小隊が小火器系統の配備であったのに対して、中隊から以降の配備は重火器となり、また車両や軍馬が必要に応じて配備される。またそれにより人員規模にも変化がある。


【大隊】
 大がかりな戦術運用での構成が大隊である。
 部隊としては、ほぼ独立した戦術指揮系統を有する。

 
 大隊長は佐官が任じられ、麾下に所属する先任中隊長が部隊長補となる。その部隊長補と隊長所属副官、事務官、中隊長によって、大隊司令部が構成される。

 この司令部は前戦指揮の直接戦略司令部となる事が多く、所謂、『部隊』という表現は『大隊』を指す事が多い。


 基本的に実戦部隊として4個中隊を抱え、1個後方支援小隊を持つ。兵員規模は約800−1000人前後。
 戦術砲撃の為の大砲が配備される。
 この大砲は近、中射程の榴弾砲で、小隊や中隊などに配られる対戦車砲とは本来は異なる性質のものである。

 電子武装が進む昨今は、小隊に携行型ATMS(対戦車ミサイルシステム)が、中隊に自走ATMSが、そして中隊には近、中射程の自走戦術ミサイルシステムが配備されたりする国もあるが、武装性能が異なるだけで、やっている内容はかわらない。また、部隊には専属の戦車や装甲車、輸送車両が配備される。


2.連隊〜師団

【連隊】
 戦略運用の最小構成の部隊であり、大隊よりもより大規模な戦術運用での構成が大隊である。
 戦略運用と戦術運用のフレキシブルな位置を占め、戦術指揮系統は完全に独立した機能を有し、連隊長は強い権限を軍部に有する例が多い。

 その連隊長は大佐が任じられ、先任大隊長(中佐)が連隊副長に、残りの大隊長(少佐)が連隊長補となり、これらに連隊長直下の副官、事務官が加わり、連隊司令部が設置される。

 連隊司令部は大抵、独立した建物一つを占有し、オフィスとしている。
 野外にテントを張ったり、雑居ビルに幾つかの部隊で間借りしている、中隊司令部や大隊司令部とは明確に待遇が違う。


 配備される武装もより強力な砲撃支援兵器(連隊砲とも呼ばれる)群や対空兵器、或いは、戦闘車両群や支援車両群が配備される。これらは独立戦車大隊とか独立砲兵中隊・独立自動車整備小隊或いは独立補給小隊、独立衛生小隊、等という独自の部隊構成を結成し、連隊内に所属する兵器群を統括する。つまり、各大隊や中隊に配備される戦車や大砲・人員は基本的にはこれらの管轄なのである。


 連隊の規模は各国の事情によって様々だが、通常は5000人以下である。

 そしてこの規模や配備状況は、1人の人間が把握しやすい最大数であり、また連隊長の権限や待遇等の諸条件から陸上部隊では最もクーデターを起こしやすい条件が揃った構成である。


 尚、日本語には【れんたい】という言葉はもう一つ存在しするそれが【聯隊】である。
 但しこちらは『兵聯(へいれん)部隊』、つまり兵を訓練する部隊の意である。


【旅団】
 旅団はある目的によって編成される分離部隊である。
 兵員規模は5000人以上10000人以下。多くは【軍】や【師団内】の独立部隊を集めて組織される。

 旅団長は少将が任じられるが、戦略的指揮権が独立している訳ではなく、また戦術的指揮権は各部隊長ないし、連隊長が有しているため、旅団長の権限はごく限られた範囲になる。人員の多くが暫定的に貸し出されて結成されたと言って良いが、【混成旅団】というもっと曖昧な組織が存在する。

 これは一つの【軍】や【師団】から結成されるのではなく、各地、各方面の組織から選抜されて結成される。
 ・・・と書けば聞こえは良いが、あり合わせ部隊と言えばそれまでである。


【師団】
 通常、将兵10000人以上で構成される部隊が師団であり、通常は4個連隊と各独立大隊等で結成される。
 師団長は中将。

 大規模な司令部を構え、各部隊の戦略運用を司る。
 そして師団自体は全体的戦略運用での構成体である。

 軍事組織としては、ほぼ独立した組織であり、権限の規模も大きい。
 師団長は直下に連隊長を従え、或いは独立部隊長を従える。

 大規模戦略兵器(かつては師団砲ともよばれたが大砲等だったが、今は巡航ミサイル等である。また、対地支援航空兵器・・・つまり支援爆撃機や戦車直援戦闘ヘリ等もこれに当てはまる)群が供与される。

3.集団〜軍団

【集団】
 集団の扱いは旅団の規模拡大型とも言えるが、構成要素は師団規模であり、戦略的権限が存在する点が明確に異なる。
 集団長は先任中将ないし大将である。
 呼び方の例としては、B集団 等


【軍】
 4師団と各独立支援連隊で構成された組織。方面軍等とも呼ばれる。
 他局的戦略の括りで編成され、運用される。

 通例は大将が方面軍司令官となる。呼び方の例としては第3軍 或いはラインラント方面軍 等。


【軍団】
 複数の【軍】で構成された部隊で、占領政策の維持や大規模構成要素を持つ意図で組まれる部隊。

 通常は占領した或いは予定の土地名前が付けられる。
 先任大将、ないし上級大将、或いは元帥の指揮下に置かれる。


 呼び方の例としては 在日軍 関東軍 北アフリカ軍団 等
 上記の3つの部隊構成は非常に特殊である。
 少なくとも小国では持ち得ない超大規模の軍事組織をもっているケースか戦争を実施している場合に見られる。


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