倉敷美観地区の町並み〜岡山県倉敷市〜


 岡山県倉敷市は岡山市と並ぶ岡山県の大都市で、主に倉敷、児島、玉島、水島の4地区から成立しています。このうち倉敷地区は江戸時代に幕府の代官所が置かれ、高梁川を利用した物資の集積地として発展。さらに明治維新後は、玉島地区と共に紡績業が盛んになり、現在の倉敷紡績株式会社(クラボウ)などが誕生しています。また、水島地区は石油化学コンビナートで有名で、教科書でもおなじみの場所。
 さて、倉敷市内には古い町並みが各地にありますが、このページではJR倉敷駅近くの倉敷美観地区を紹介します。倉敷川を中心とした商人の町で、1979(昭和54)年に国の伝統的建造物群保存地区に指定されました。白壁に、なまこ壁などが特徴的な町並みで、一部が適度に観光地化される一方、未だに多くの人々が暮らしているのが自然で魅力的。古いな町並みを上手く保存、活用している極めて優秀な例といえるでしょう。
 このほか、港町である下津井と玉島や、藤戸町、連島町などに残る町並みも非常にすばらしいもの。可能であれば、これらの訪問もおすすめです。
(撮影:裏辺金好)

〇地図



○風景


倉敷美観地区の町並み
 広範囲にわたって古い商家や民家が残る倉敷美観地区。特に有名な場所が倉敷川を挟んだ通り。


大原美術館 本館
1930(昭和5)年築、設計者は薬師寺主計と渡辺要。倉敷紡績の2代目、大原孫三郎氏が1930(昭和5)年に創立した日本初の私立西洋美術館。ギリシャ神殿風の本館が特徴です。館内には、エル・グレコの「受胎告知」を始め、孫三郎氏がヨーロッパから購入して収蔵した、世界的名画がずらりと並んでいます。


大原美術館 別館など
日本美術や骨董品、中国やオリエントの考古物なども別館で展示されており、美術品の聖地となっています。全部を見ていれば、もはや倉敷の町並みを見る体力が無くなりますので、町歩きが終わった後でじっくりと堪能しましょう。


大原家住宅 【国指定重要文化財】
 19世紀前半築。のちに倉敷紡績をなどを設立する大原家の住宅。後述する大橋家と共に倉敷随一の実力者で、その建物も共に、国の重要文化財に指定されています。


有隣荘
 1928(昭和3)年築。大原孫三郎が別邸として建てさせたもの。白壁の町並みの中で、対側地の大原美術館と共に独特な景観を形成しています。



旧小山家住宅 (現・旅館鶴形)
 1744年築。倉敷三大名家ともいわれる小山家の建物を、1970年に旅館として保存、再生したもの。


倉敷民藝館
江戸時代末期に建てられた米倉を再利用し、様々な民芸品を展示。

倉敷考古館 (写真左)
江戸時代の米蔵を改築して誕生した博物館。吉備地方の出土品を中心に考古学資料を年代順に展示。


旧・倉敷町役場(現・倉敷館) 【国登録有形文化財】
1916(大正5)年築。倉敷考古館の向かい側に建つ、木造の元・町役場。現在は観光案内所、休憩所として使われています。


大橋家住宅 【国指定重要文化財】
1796(寛政8)年築。倉敷駅から歩いて、美観地区には入らずに右手に行ったところにある建物(阿知3丁目/近くには倉敷別院などがあります)。大橋家は元々、豊臣家に仕えていましたが滅亡後に倉敷へ移住。水田、塩田で財を成し、豪華な屋敷を構えました。現在も残る主屋や長屋門(上写真)・米蔵・内蔵の4棟が国の重要文化財に指定されています。




大橋家住宅 主屋 【国指定重要文化財】



旧東大橋家住宅(現・倉敷物語館)
倉敷美観地区の入り口にある歴史的建造物。江戸時代に建築されたという東大橋家の長屋門や土蔵などを倉敷市が取得し、2009(平成21)年から倉敷物語館として交流の場としたもの。


旧・中国銀行倉敷本町支店 【国登録有形文化財】
1922(大正11)年築。大原美術館と同じく、薬師寺主計の設計で、アーチ窓上部のステンドグラス、アーチのドーマー窓が特徴的な銀行建築。2016(平成28)年まで使用されていました。




倉敷アイビースクエア
倉敷紡績のレンガ工場を利用した施設。ホテルのほか、近代絵画を展示する「アイビー学館」、倉敷紡績の歩みを紹介する「倉紡記念館」(これがかなり面白い)や陶芸教室があります。


倉敷代官所跡
倉敷アイビースクエア内にある、倉敷代官所跡の石碑と遺構。ここは、幕府(天領)の代官所があったところでもあります。

倉敷アイビースクエア「アイビー学館」
1889(明治22)年築。倉敷紡績の工場で、設計は日本最初の紡績工場を設計した石河正龍ら。現在は西洋絵画の誕生から抽象絵画への流れを解説する「近代絵画の動画とその展開」コーナー、吉備路を紹介する「吉備国の残照」コーナーがあります。

倉敷アイビースクエア「倉敷紡績記念館」 【国登録有形文化財】
1888(明治21)年築。倉敷紡績の歴史を紹介する施設。日本繊維産業の歴史も学習することが出来ます。

倉敷アイビースクエア「児島虎次郎記念館」 【国登録有形文化財】
1906(明治39)年築。元々は倉敷紡績工場の製品倉庫で、現在は大原美術館別館として、大原孫三郎と生涯親交を持った画家、児島虎次郎を顕彰する施設となっています。児島虎次郎は、孫三郎より1歳年下だったこともあって孫三郎とは非常に仲がよく、大原美術館に展示されているモネ、エル・グレコ、ゴーギャン、ロダンなどの名画は、彼がヨーロッパで買い付けてきたもの。

井上家住宅 【国指定重要文化財】
正徳年間(1711〜16年)築。本町通りに残る古い町屋で、美観地区では最も古い建物です。特徴は、2階にある7つの倉敷窓のすべてに土扉が付いていること。なお、井上家は江戸時代には,村役人・地主として,町政を主導した旧家のひとつです。

本町・東町の町並み 
倉敷アイビースクエアの東側に広がる古い町並み。見落としがちですが、こちらも非常に見ごたえのある空間です。倉敷美観地区の中心部とは違った雰囲気の、やや庶民的な町並み。


旧楠戸家住宅(はしまや呉服店) 【国登録有形文化財】
明治中期築の商家。明治2年創業、「はしまや」の屋号を持つ老舗呉服店として営業中。主屋2階の漆喰(しっくい)を塗り込めた「虫籠窓(むしこまど)」が特徴で、主屋をはじめ米蔵・炭蔵・道具蔵・塀が1996(平成8)年に国登録有形文化財、 主屋のうち店舗部・玄関部・中座敷部は、2002(平成14)年に倉敷市指定重要文化財となっています。


阿智神社
美観地区の一角にある鶴形山の山頂に鎮座する倉敷の鎮守で、航海の安全を司る宗像三女神を主祭神としています。

〇倉敷チボリ公園

 オマケでこちらもご紹介。JR倉敷駅北口に広がる、19世紀デンマークの町並みを再現した観光施設。旧倉敷紡績(クラボウ)倉敷工場跡地を利用して、1997(平成9)年にオープンした施設で、デンマークの人気観光施設である、チボリ公園と提携して完成させたものです。白壁の町並みとはまったく異質な施設ですが、「古い町並みばかりはちょっと・・・」という観光客や、小さな子供を連れた家族には最適です。
 ・・・だったのですが、利用客の低迷により2008(平成20)年12月31日に営業を終了。跡地は2011(平成23)年より、イトーヨーカ堂を核とするアリオ倉敷、三井アウトレットパーク 倉敷、倉敷みらい公園となっています。ここでは営業当時の姿を掲載します。


倉敷チボリ公園があったころのJR倉敷駅北口(2005年)


アリオ倉敷などが開業した後の、JR倉敷駅北口(2013年)


在りし日のチボリ公園(以下全て)



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