宇津ノ谷峠〜静岡県静岡市駿河区〜
  Utsunoya Toge in Shizuoka City in Shizuoka Prefecture

▼MAP

▼アクセス
JR静岡駅よりバス

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静岡市役所「宇津ノ谷」
 宇津ノ谷峠は、静岡市と藤枝市の境界に位置する標高210メートルの峠。
 昔から交通の要衝として知られ、その歴史は平安時代までさかのぼります。宇津ノ谷峠越えとして最も古い道が、蔦(つた)の細道で、伊勢物語の中で詠われた和歌が名前の由来とされています。その後1590(天正18)年の豊臣秀吉の小田原征伐の際、スムーズに進軍させるため別の道を整備しました。これは旧東海道となり、蔦の細道に変わる峠越えのルートとなりました。すると蔦の細道は次第に忘れ去られてしまい廃道になってしまいました(ただし、昭和40年代ごろに復元)。江戸時代になり人の移動が多くなると峠周辺には鞠子(まりこ)宿、岡部宿が置かれ、旅人などでにぎわいました。

 そして明治時代になると宇津ノ谷峠に大きな変化が起こります。
 文明開化による交通量の増大により、杉山喜平次らが宇津ノ谷峠にトンネルを掘削することになりました。1874(明治7)年に掘削を開始し、1876(明治9)年に開通したこのトンネルは、日本で初めての有料トンネルとなりました。これは木造の合掌造りのトンネルで、まだ掘削技術が未熟だったためくの字に折れ曲がっていたのが特徴。残念ながら1896(明治26)年、カンテラの失火で消失崩落し、1904(明治34)年にレンガ造りのトンネルとして修復改修され再開通しました。

 しかし、増加する自動車の交通量に明治のトンネルは耐えられなくなり、1926(大正15)年に、宇津ノ谷隧道(大正トンネル、または昭和第一トンネル)の建設が開始され、1930(昭和5)年に開通しました。

 さらに戦後、モータリゼーションの進行で交通量が増大したため、1957(昭和32)年に新宇津ノ谷隧道(昭和トンネル、または昭和第二トンネル)の建設が開始、1959(昭和34)年に開通しました。このトンネルは従来のトンネルよりも標高の低い位置に建設されたので、所要時間が短縮されました。それでもなお交通量の増加は続き、1990(平成2)年に平成宇津ノ谷トンネル(平成トンネル)の建設が開始され、1998(平成10)年に開通しました。

 こうして昔は難所とされていた宇津ノ谷峠も現在では難なく通過することができます。現在は国道1号線のトンネルが通っていて、さらに蔦の細道から国道1号線のトンネルまで全て通行可能です。

(撮影・解説:ロクマルサン様 禁転載)

宇津ノ谷峠概要
 宇津ノ谷峠は国道1号線を挟んで南側に蔦の細道、北側に明治のトンネルがあります。今回は写真右上にある道の駅宇津ノ谷峠から蔦の細道で峠越えをし、旧東海道を経由して各時代のトンネルを歩きます。


蔦の細道(静岡口)
伊勢物語では東へ向かっていましたが、今回は西へと歩きます。
蔦の細道の静岡口は木々の中に文字通り細い道が一本あるだけです。


蔦の細道(峠)
山を登りきると、そこにはなかなか素晴らしい風景が広がります。


蔦の細道(岡部口)
先ほどの静岡口とは一変、山は開けていてみかん畑や茶畑が広がっています。

蔦の細道公園
さらに山を下ると整備された公園があります。



旧東海道
蔦の細道の途中から分岐しています。うっかりしていると見逃してしまうので注意。
今回は東海道はそこそこにトンネルのほうへ向かいました。


明治のトンネル静岡口
レンガ造りのトンネルで内部はカンテラ風の照明がレトロです。
薄暗い場所にあるため昼間でも怪しい(?)雰囲気をかもし出しています。
有形文化財に登録されていて、徒歩のみで通行可能です。


明治トンネル内部 *ブレが激しくてすいません
照明は広い間隔で設置されているので暗い部分ができてしまいます。
なので地元の方の間では胆試しに使われているとか。


明治のトンネル岡部口

大正トンネル(宇津ノ谷隧道)岡部口
工事の着工は大正時代でしたが、開通が昭和時代だったので昭和第一トンネルとも呼ばれています。


大正トンネル内部
こちらは車での通行も可能で、大型車がすれ違うくらいの幅を持っています。



大正トンネル静岡口


昭和トンネル(新宇津ノ谷隧道)岡部口
先ほどの昭和第一トンネル(大正トンネル)の後に作られたので昭和第二トンネルとも呼ばれています。


昭和トンネル静岡口
もともと片側一車線のトンネルでしたが、現在では二車線の上り専用トンネルになっています。
徒歩での通行はできません。


平成トンネル(平成宇津ノ谷トンネル)岡部口
一番新しいトンネルで、片側二車線の下り専用トンネルです。


平成トンネル(平成宇津ノ谷トンネル)静岡口
歩道があって徒歩でも通行可能です。


宇津ノ谷集落
明治のトンネルを静岡方面へ抜けた先にある小さな集落。ここには豊臣秀吉が与えた羽織が残っています。


宇津ノ谷集落
宇津ノ谷集落は建物の建築基準や外観をそろえるようにしていて、整った家々は昔の面影が残ります。