蔵と運河の古い町並み〜愛知県半田市〜


 愛知県の西南部、知多半島の中央に位置する半田市は、江戸時代より海運を生かして醸造や繊維が発展してきました。その中でも、かつて江戸や大阪に酒や酢を運んだ半田運河沿いに、黒い蔵が多数残っています。その大半は、今も半田市に本社を置くミツカンの醸造蔵で、今でも現役!潮風から蔵を守るため、コールタールで塗られているため、このような姿になっています。

 この界隈を歩きますと、酢の香りがしてきます。江戸時代や明治時代にタイムスリップしたかのようなこの風景は、JR武豊線の半田駅から徒歩5分。非常にお勧めです。

 また、このほかにも半田市には見所が多数あります。合わせて、ご紹介していきましょう。
(撮影&解説:裏辺金好)

○半田運河沿い


旧中埜銀行本店(現・ミツカングループ中央研究所)
 1925(大正11)年築。現在のミツカングループの五代 中埜又左衛門が設立した銀行です。なお1928(昭和13)年に、国策により名古屋の伊藤銀行に吸収され、のちに東海銀行、UFJ銀行、三菱東京UFJ銀行と変遷しています。


博物館 「酢の里」








キッコウトミ
味噌、たまりしょうゆ、ポン酢などの調味料の製造メーカーの工場群。



小栗家住宅 【国登録有形文化財】
明治初期の建築と推定される豪商邸宅。「蔵のまち観光案内所」として一般公開されています。

國盛 酒の文化館
中埜酒造株式会社による酒造りの博物館。

○JR半田駅


JR半田駅
1942(明治45)年築の木造駅舎。もっともリニューアルにより、面影はあまり感じられませんが・・・。


跨線橋
1910(明治43)年11月に設置され、未だに現役のJRで最古の跨線橋。


跨線橋内部




危険品庫(ランプ小屋)
1909(明治42)年築。


C11 265号機
駅に隣接した場所で保存。

○旧中埜家住宅


旧中埜家住宅(現・ T's CAFE) 【国指定重要文化財】
1911(明治44)年築。鈴木禎次の設計で、ハーフティンバー様式(木骨を化粧として壁面に現わす)2階建の洋館。
名鉄河和線の知多半田駅前にあります。JR半田駅からも西へ徒歩8分。

○旧カブトビール工場


旧・カブトビール工場ハーフティンバー棟 【国登録有形文化財】
1898(明治31)年築で、設計は妻木頼黄。主棟南に接続する木骨煉瓦造の平屋建の建物。
カブトビールは丸三麦酒のブランドで、半田からキリン、サッポロ、アサヒという大メーカーに挑戦しました。


旧・カブトビール工場創建時主棟・貯蔵庫棟 【国登録有形文化財】
写真中の主棟は1898(明治31)年築で、写真右手の貯蔵庫棟は1908〜1921年にかけて順次増築。
主棟の設計は妻木頼黄で、煉瓦造2階建の発酵室・貯蔵室に同5階建の事務室・技師室が接続。

旧・カブトビール工場貯蔵庫棟 【国登録有形文化財】  第二次世界大戦中は中島飛行機製作所の衣糧倉庫として使われたため、米軍の戦闘機ノースアメリカンP51の銃撃を受けました。その弾痕が今も残っています。ちなみにこの工場、戦後は1948(昭和23)年から日本食品化工(株)の工場となり、1994(平成6)年に操業終了。1996(平成8)年に半田市が買収しています。

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