考古学レポート4 草創期@土器の話

担当:大黒屋介左衛門

4.草創期〜土器の登場〜

 さて、前置きが長くなりましたが本題です。
 旧石器の最後段階に入り細石刃に共伴する形で土器が登場しはじめます。今のところ最古の縄文土器は前述の大平山元遺跡出土の無文土器なんですがちょっと問題があります。それは放射性炭素測定法を用いているので、これくらい古くなりますと欠点(遠い過去になると、古い値が出やすくなる)が鼻をつき、また新聞発表による誤解からちょっと適当ではないと判断し、草創期の代表的遺跡である長崎県泉福寺洞穴遺跡を例に説明します。

5.泉福寺洞穴遺跡(長崎県)
  長崎県佐世保市瀬戸越町字城ノ口にあります。
 草創期の代表的遺跡でその名のとおり洞穴遺跡です。そしてこの遺跡の第10層より細石刃を伴って最古級の土器と考えられる豆粒文土器が検出されました。復元された豆粒文土器の概要は深鉢でちょうどラグビーボールの一端を切り落としたような形の土器で丸底です。口縁部と胴部に粘土粒が貼り付けてありここから豆粒文と命名されました。

 この第10層からはほかに隆線文土器が検出されてます。これは豆粒文土器は粘土粒でしたがこの土器は粘土紐が貼り付けてあります。ここから隆線文土器と命名されたわけです。

 で、この遺跡からは同じ層から異なる型式の土器が検出されたわけなんですが、これに関する見解は学者によって異なります。とりあえずその例をひとつ挙げておきます。 見解@豆粒文→豆粒文+隆線文→隆線文
 豆粒文土器を隆線文土器の祖形と考え、続いて両型式並行、隆線文単純期と続くとする見解。
 豆粒文式を隆線文式の一部とするにはいくら同じ貼付の手法にしても無理があると考え、このような推移を考えた。
 泉福寺洞穴遺跡はその層序から土器型式の変遷がよくわかり西九州の土器編年の概略を出すことができます。その流れは・・・
豆粒文→隆線文→爪形文→押引文→条痕文
 っていう流れです。一応この遺跡の目安として隆線文土器文化層の年代測定が熱ルミネッセンス法(熱を受けたサンプルが、いつ頃、その熱を受けたものなのかを測定する年代)という測定法で出されているので紹介しておきますと、およそ1万3000年〜1万1000年前の間にあったとでています(*遺跡が、そのあたりの時期に存在したという意味です)。

(語句説明)
爪形文・・・土器表面に貼付した粘土紐に爪で押圧し施文したもの
押引文・・・粘土紐にゆびで押圧し施文したもの
条痕文・・・貝殻などを用いて線状の文様をつけたもの
6.隆線文系土器群
 一口に隆線文土器といってもそれには種類がいくつかありまして、太さ、条数、文様帯の幅、位置などから細かく細分されます。
 
 太さで見ますと太い順から隆帯文、細隆線文、微隆起線文と別れ、さらに隆線文系土器群という名称になりますと前述の爪形文、押引文も含まれ非常に広範な意味を持つようになります。この隆線文系土器群は本州、四国、九州と非常に広範囲に分布し草創期の代表的土器型式であります。もちろんこの様々な種類を持つ隆線文系土器群はそれぞれ時間的変遷が想定されているわけですがね。

 一般的には九州の隆線文系土器群(ここでは豆粒文土器も含む、これは粘土粒、粘土紐 の違いはあれ用いられている手法は同種であるとの考えに基づく)は本州の隆線文系土器群に先行すると考えられています。これは九州ではある時期までこの型式に細石刃が共伴するのに対し、本州ではそのようなことがないためです。

 とはいっても日本の土器は九州にはじまるという考えには反対意見もありまして、その根拠は単に九州に細石刃技法が伝わったのは遅くて、その分長く続いただけとか、問題は有るにしろ理化学的測定結果で大平山元遺跡の無文土器のほうが古いとかなどです。

 土器はどこで生まれたか?今後の研究に期待です。

7.土器はどのように生まれたか?
 難しいですね。実は日本の土器文化は世界的に見ても非常に古い歴史を持っています。

 土器は日本で生まれ世界に広がったなんてこともひょっとしたらあるかも・・・おっといけない事実に基づかずに想像の翼を広げてはこれこそトンデモ科学だ。ま、冗談はさておき土器がどのように生まれたか私なりに想像してみたので書いておきます、あくまで想像ですよ。

 旧石器の最後段階このころには当然人類は火を手に入れていました。そのときふと気づいたんじゃないでしょうか。粘土の塊が焚き火の後で固まっていることに、それで器なり、鉢なりの形に整えて土器が誕生したのではと想像します。ここでポイントなのは焼いてみたということ。ただ粘土を整形し干しただけでは水を入れると崩れちゃいますから。

 実際はどうかわかりません。土器が日本で生まれたのか?それとも大陸から伝わったのか?九州からなのか?東北なのか?現在草創期の遺跡は少しずつですが全国で増えてきています。今後の研究結果に期待してください。こんな与太話みたいな文章なんかよりね。  え〜長々となんだか脈絡のないレポートですが、次回は「草創期A住居の話」を予定してます。
参考文献
日本土器事典 大川清 雄山閣出版 1996.12
最新日本考古学用語辞典 大塚初重など 1996.6
棒
考古学ニュース&レポートトップページへ
歴史研究所トップページへ
裏辺研究所トップページへ