考古学レポート7 放射性炭素年代測定法

担当:大黒屋介左衛門

○はじめに

 ほぼ一年ぶりですかね、しかも本論がぜんぜん進んでいないのに横路にそれっぱなし。
 おまけに今回も本論ではありません(笑)
 予告どおり放射性炭素年代測定法について、です。

1.放射性炭素年代測定法とは?


 以前に簡単に説明していますが、考古学独特の相対年代に対し、理化学の分野からの方法を用いて年代を割り出す方法、これを絶対年代と呼んでます、その絶対年代を割り出す方法のひとつがこれです。
 自然界にはいろんな形で炭素が存在しています。
 一口に炭素と言っても3種類12,13,14の同位体があるんですね。んで、13は12のおよそ百分の一、14に至っては12の一兆分の一が存在しています。このは、ベータ線を出しながら少しずつ窒素に姿を変えていくという特徴があり、同位体の特徴であるもとあった量の半分(半減期)になるまでの期間はそれぞれに固有で、温度、圧力など周りの環境に左右されずに一定という性質を利用して測定するのがこの方法です。

 自然界には空気中に一定量のが存在していますがこれは動植物も同じことが言えます、生存中の動植物は大気から同じ比率でこのを吸収しているわけですが、生命活動をやめると体内のも補給がとまるのでそのまま残るわけです、ですからがどれだけ減っているかを調べることでこの動植物がいつまで生存していたのかが推測できるわけですね。

 この方法はアメリカのリビーという人が1947年に開発しています。そして、この測定によってでる値(測定値)は1950年を基準とすることになっていて、B.P.という略号を用います、
 efore hysicsの略です。

 ですから、たとえば今から5600から5800年前と年代が出たとします。
 そのときの年代は
  5646±100
 とでるわけです、1950年が基準なので今年2004年だと54年足して5700、それが前後百年ぐらいの誤差であるというのですからこういう形になるわけです、わかりますか?


2.現状と課題(1)

 この方法、開発されてからすでに60年近くが経過しているわけですが当然ながら当時からまったく同じ方法で測定されているわけではありません、何せ応用範囲の広い測定法なので様々に改良を重ねながら現在に至ります。

 理化学分野と歴史の接点ということで、でてくる測定値によってはトンデモ学問の温床になりかねないのです。「数字が出てきました、はいそこまで。」とはいきません(尤も理化学でそれはありえませんが・・・)。その数字が出た理由が必要なわけで、測定の終了は新たな疑問のスタートなんですね、

 ですからその測定値には最高の精度が必要なわけで常に切磋琢磨が繰り返されてきたといえるでしょう。
 それぞれの分野の専門家がプライドをかけてやりあってます、ある意味壮絶です。  んで、測定には最初、試料のベータ線の量を測る方法が用いられてました。しかし、これだと必要な試料が数グラム、元の資料だと数十グラムが必要でした。これだけの量となると試料の汚染などもひどいので測定値にはかなりの誤差が出たらしいですね。


3.AMS法

 そこで開発されたのがAMS法と呼ばれる方法です。
 AMS(Accelerator Mass Spectrometry)スペルが間違ってなければこの略です。アクセレレーターマススペクトロメトリーとでも読むんですかね?和訳すると加速器質量分析だそうです。

 AMS法はイオンを加速させて直接一個一個検出して同位体濃度を測定するので、試料の量が今までよりはるかに少なくて済むようになりました。それはただ単に測定の精度を上げるだけでなく、今までよりはるかに多くの種類の有機物を試料とすることを意味しているわけで、遺跡から検出される遺物の中でもより高い精度で測定が望めるものを選抜出来得る事となります。測定で出てくる数値にもより説得力がつくわけですね。

 しかし、測定自体が高精度になると今度はデメリットも出てきます。
 例えば、小さな遺物から試料を得て測定を施したがために元の遺物を紛失したり、試料に貼ったラベルの意味が途中でわからなくなったりといった人為的ミスによって台無しになってしまうことが1つ。

 それから、元の試料が少量で済むということは、採取から前処理などの途中経過までに起きるホンのわずかな汚染で測定値に狂いが出てしまうということなんですね。これを無くすためにはどうすればいいかというと、手順の徹底と、発掘作業そのものからの理化学分野との相互協力ということでしょう、もはや考古学単体だけを学べばいいという時代はとっくの昔に終わってるんですね〜。

 理系科目が苦手だから文系に進んだあなた! そのまま歴史学を専攻すると大変ですよ、これから。


4.現状と課題(2)

 さて、放射性炭素測定法をめぐる問題点は何もこれだけではありません。

 これまでは測定の精度をめぐる問題点ですがこれからは測定の前提条件に関わる問題なので機械の精度云々ではどうにもならないことです。その前提条件というのは自然界における同位体の割合に関わる問題です。この測定法ではこれが常に一定という前提でのこととなるのですが実は一定ではありません。同位体は空気の上層で宇宙線を浴びることで発生するわけですが、宇宙線は太陽の活動状況や地球の磁場の強さで変わってくるんですね。

 さらに炭素は大気中だけでなく海洋でも存在してます(当然です)。これが大気との間で常に循環を繰り返しているのですが表層は常に大気と盛んに循環が施されているので大気とほとんど同じ濃度です、しかし、中層深層となるとだんだんと割合が変わっていきます。さらに海洋も非常にゆっくりと循環しているわけです、その状況も時代海域で違ってきていることがわかってます、これらを
海洋リザーバー効果と呼ぶそうです。

 そこでこれらについての補正が計算で出されて組み込まれ、現在は測定が行われています。さらに他の測定法、たとえば年輪年代法などと組み合わせてより実際に近い数値が出るよう努力がなされているんですね。

5.弥生開始年代新説について

 今みてきたような放射性炭素年代測定における技術革新に基づいて、これまでの検出されてきている遺物のいくつか(といってもかなりの量)を測定し、でてきているのがこの新説のようです。新説に対しすでに反論など沸騰しているようですが、これは何も世の考古学者の頭が固いということではありません。

 反論に対し論理的に説明を加えていくことで、学説がよりたしかなものとして認識されていき、やがて定説となっていくのです。  いかがでしょうか、今後の考古学について、弥生時代について興味がわいてきたでしょうか?
 そうであれば幸いです。


参考文献
季刊考古学88 雄山閣 2004.8
弥生時代の始まり 学生社 春成秀爾、今村峯雄編 2004.6
日本考古学事典 柏書房 大塚初重、戸沢充則編 1996.6

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