第9回 ニュートンと錬金術

担当:裏辺金好(乱心したか!ついにニュートンに手を出した!)

近代科学の胎動

 近代科学は、ヨーロッパで17世紀から発達した。しかし、その一方で詳細は省くが、新プラトン主義や、ヘルメス主義と言った、古代ギリシャや、さらにそれ以前の魔術的な要素を持った古代の遺産が、依然として教養人の知の源泉として存在し続け、多くの教養人は近代へと道を開く新しい自然科学を発見する一方で、何とかして古代のものと結びつけようと葛藤していたようである。
 そんな教養人達の教科書的な存在が、パラケルスス(1493〜1541年)という人物だったらしい。ドイツ・スイスの医者で、医学のルターというあだ名が付いた人物で、基本的には医学界の革命者である(後述)。しかし、実は聖書の注釈関連が多方面の著よりずっと多く、必然的に彼の唱える天文学とは「天界」「天地創造」といった古代思想を、いかに体系的に提示するかにかかっていたようで、さらに錬金術、鉱物学を研究していた。
 当時、医学の基礎は哲学・天文学、錬金術にあるという中世アラブやユダヤの医学の大家達によって形成されたものだったから、彼もご多分に漏れず錬金術を研究していた。特に錬金術は、薬物学研究の一角を少し占めていたのである。
 そしてパラケルススは肝心の中身については論破することを目指し、人間界・地上界・天界の相互作用の根拠について、詳しくは解らないが革命的に上手に記したらしい。そのため、後世に大きな影響を与え、ニュートンも彼の著を非常に多く研究した。
 そのため、ニュートンはケインズに最後の魔術師と言われたのである(バビロニアまで話を結びつけたのは、やりすぎの感があるが)。こう書くと、いかにもパラケルススは怪しげな研究家に見えるだろう。しかし、彼の業績を見れば、まさに近代科学への胎動とも呼べる業績を上げている。以下にご紹介しよう。

↑ PAGE TOP

data/titleeu.gif