第二十七話 走れ!カリウス

 ジー・・・・・・ガチャ・・・ピーピーピー

 私はATMから十二万円をひきだした。そう、二輪教習代である。私はついに二輪教習所にいくことを決意したのである。


 私は十二万円ひきだしたのにも関わらず預金残高がけっこう残っていることに驚いた。夏休みの時点で十二万円ひだしていたら、ほとんど残高はなかったであろう・・・。だが、私が免許をとろうかどうしようか戸惑っている間にも時は流れいたのである・・・。預金残高は私が迷っていた時間がどれだけ長かったかを物語っていた。


 時はもう十一月だった。実は今頃になって私が免許をとるべくして本格的に動き出したのには三つの理由があった。一つはバンカーという男が、私が免許をとらない限り口をきかないといいだし、実際、携帯電話やメールも着信拒否されていたこと。もう一つはバイト先の店長にスピードのすばらしさをレクチャーしてもらったこと(この話はまた後日・・・)。そして最後の一つが、今取りにいかないと、大学を卒業する直前まで免許をとりにいけないということが判明したからだ。


 当時、私は大学三年生だった。大学三年生は一月、二月になると就職活動をはじめることになる。そして四年生になれば就職活動と並行して卒業論文もかかなければならない。就職活動と卒業論文・・・どちらもすんなりとクリアできる自信はまったくなかった。そこで時間がある今のうちにとりにいくしかない!! という結論に達したのである。


 私は入校日を決めて、さっそく予約の電話をいれた。土曜日だったが、もうじき冬ということもあって入校の予約をいれることができた。この入校の予約も前日か前々日にいれたような気がする。結局、最後まで躊躇していたのである。


 入校当日に必要なのは免許証とお金と印鑑と写真四枚だった。この写真は証明写真として教習所での各種書類に使われる。さっさと用意すればいいのに面倒くさがりの私は先延ばししていた・・・。


 そして入校当日。午後一番だったので午前中はゆっくりねむっていた。そして写真をとりに証明写真機のところにいった。すると・・・、


「げ! 人がいる・・・。」


 実は私はギリギリまで家にいたのである。教習所に早くいっても待っているのがいやなので入校式の五分前くらいに教習所につくようにいこうと思っていたのである。しかも、証明写真は教習所にいく途中でとろうと思っていたのである。それがマズかった。思わぬところで時間のロスが生じてしまった。ギリギリの計算なのでロスがあるとマズイ。


 心のどこかでやはりまだ教習所にいくということに関して躊躇があったのだろう・・・。遅刻したから入所できなかったという言い訳・・・。しかし、そんなことをしている時間的余裕はない。私はむしろこのような状況に追い込まれて焦っていた。


 前の人が終わるのを機械の前で待っていたのだが、その時、一つ思いだした・・・。


「そういえば、バイトの面接をしたときの証明写真、自分で履歴書の写真欄の大きさにあわせて切った覚えが・・・。」


 と過去の経験を思い出し、すかさず入校日の持ち物の写真の大きさと証明写真機でつくれる写真のサイズを確認した・・・。


「!!・・・マズイ!」


 証明写真機でつくられる写真のサイズは持ち物の写真のサイズより大きかったのである。つまり私はここで写真をとってから家に戻り、四枚の証明写真の枠をきりぬいて、規定の大きさにしなければならないのである・・・。そんなことをしていたら絶対に間に合わない・・・。


 私は自分の愚かさに腹がたった。昨日・・・いやお金をおろしたときにでも写真をとっておけば、あらかじめ大きさをそろえておくことができたのに・・・。仕方がないので私は教習所で写真をとってもらうことにした。少々割高だがこれは仕方がない。私は原付を飛ばして教習所にむかった。本当に時間がなかった。信号でとまるたびに時計に目をやり時間を確認した。


 到着。
 なんとか間にあった。正面のインフォメーションでは入校生が入校の手続きをしていた。同じ入校生を見ると間にあったんだという安心感につつまれた。どうやらこの人は普通二輪をもっていて、今回、大型二輪の免許を獲得するようだ。私は手続きの様子を後ろからみていたが、教習時間は十一時間くらいといっていたと思う。


 前の方がおわるといよいよ私の番である。私は写真をとってもらった。写真機はポラロイドカメラだった。受付のところで壁を背にしてとったので、ちょっと恥ずかしかった。別の部屋でとるんじゃないんですね・・・。そして免許証をみせて手続きをすませる・・・。そしていよいよ入校式へと望む。


 ここまできた・・・・、こうなれば、あとはつき進むだけだ。



棒