第四十二話 説明は短く、乗る時間は長く

 実技教習には実際にバイクに乗って走る教習のほかに、シュミレーション教習といって、丁度ゲームセンターにあるようなバイクのシュミレーターを使っての教習が三時間あります。バイクの教習においては自動車の教習と違って実際に公道にでての教習がないため、シュミレーション教習は公道での走行の仕方と、走行時における危険の発見・回避の仕方を身につける教習になります。

 シュミレーション教習はコマ数が三時間しかないので、シュミレーション教習は常に開かれているわけではありません。そのため、シュミレーション教習が開かれる時間に自分の都合をあわせる必要があります。もちろん、シュミレーション教習を受けないと先の教習には進めないので上手く時間をあわせることができないと、しばらく教習にでることができなくなってしまいます。


 私は運よくシュミレーション教習をシュミレーション教習の一回前の教習の翌日にいれることができました。これで教習時間のロスを抑えることができます。いや、できるはずでした・・・。


 シュミレーション教習当日。私は教習をうけるためシュミレーター室で待機。しかし、時間になっても始まらないし、教官は先ほどからシュミレーター室に出たり入ったりしています・・・。様子が少しヘンですな。


 そして、しばらくすると。


「ゴメン。こっちのミスで今日はシュミレーター教習ができないから、今日は実技教習に変更するよ。」


 どういう手違いがあったのかは定かではありませんが、そのように言われました。ということで急遽外にでてコース入りしました。


 さて、前回までに一通りの課題の練習を行ったので、今回からは実技試験の検定コースを走ることになりました。


 検定用のコースは二コースあり、実際の試験ではどちらかをやることになるとのこと。もちろん、どちらにもスラロームや一本橋、急制動といった重要な課題は設けられています。


今回は時間が少し過ぎてからの参加で、慣らし運転をしていないので、教官が私の乗るバイクを暖めるために、私の乗るバイクに乗ってコースを走りにいってくれました。その間に片方のコースだけでいいのでコースの形をだいたい覚えておいてと教官いわれました。


 さて、教官による慣らし運転が終ると、いよいよコースの走行にはいります。今回は試験ではないので、コースの順路は途中で間違えても一向に構わないので、課題の練習をしていこうとのことでした。


 さすがに短時間ではコースの全容を正確に覚えることはできないので、重要な課題のあるところを通過しながらだいたいで回っていきます。さすがに実際にコースを走り、課題をこなしながらだと正確にコースを走ることは難しいです。


 何周かコースを回ると一旦バイクからおりて、コースの待機所の壁に貼ってあるコースの図をみて、コースを確認しました。私と同じく今日からコース回りにはいったであろう教習生が、私がコースを回っている時より、コースをじっくりと見てコースの確認を念入りに行っていました。すると、教官がこちらにきて。


「コースを覚えるのは教習時間じゃなくてもできるけど、バイクに乗れるのは教習時間だけ。今はコースを正確に覚えるよりも、順路を間違えても構わないから、どんどんバイクに乗らないともったいないよ。」


 と、その教習生に言いました。教習生はわかりましたというとバイクにまたがり発進しました。教官は近くにいた他の教官に向かって


「説明は短く、乗る時間は長く。」


と言っておりました。


説明は短く、乗る時間は長く・・・実にいい言葉です。今、この場で一番優先してやらねばならないものは何なのかというのを考えさせられます。私もコースの確認をだいたい終えるとすぐにバイクに乗ってコースに戻りました。


さて、次はいよいよシュミレーション教習ですが、今回を逃してしまったため運悪く自分の予定とあわず、四日間、教習を休むハメになってしまいました。その休みの間にコースを覚えようと思い、教習所の受付で検定コース図(三百円ほどで販売しています。もちろん、待合室にも張り出されているので必ず購入する必要はないです)を購入しました。


 季節は十二月になろうとしていました。いよいよ冬本番です・・・。

棒