第六十八話 脅威の大型二種(原付ライダー外伝 二種免許伝5)

 私が二種免許を取りに行くことになった頃、数か月前に会社を退職した先輩と食事をする機会があった。

 先輩は再就職の為に「大型免許」をとったはいいものの、中々就職先が決まらなかったが、先日、大手バス会社 に再就職することになった。ただし、入社の条件として「大型二種免許」が必要ということで先日、免許をとってきたそうで。


 まさか、直近で二種免許をとった人に会えるとは・・・。ちょうどいい機会だ。どんな教習、試験をやったのか 聞いてみることにした。 先輩も話したくてウズウズしていたようで、バスを使った教習、試験の話を始めてくれた。


 ん? バス? なんで「大型免許」を持っているのにバスで教習するんだ? 
「大型免許」をもっているんだか ら、普通自動車に乗って「二種免許」だけとればいいんじゃないのか? なんで態々バスで教習するんだ? 仕事のことを考えてバスで練習し たいって申請したのかな?

 実は私は「二種免許」は一種類しかないと思っていた。「二種免許」と「大型免許」をもっていてれば、バスの ような「大型二種」自動車が運転できるものだと思っていたのだ。しかし、「大型二種」自動車を運転するには「大型二種免許」という専用の 免許が必要とのこと(ちなみに大型二種免許があれば、タクシーのような普通二種自動車は運転できる)、だから「大型二種」免許をとるには バスに乗らなくてはいけないというわけだ。


 先輩の運転する車の助手席に乗ったことがあるが、荒っぽそうな外見に反して、運転は非常に丁寧だ。ゆえに 「大型免許」は左程苦労もせずにとれたようだ。しかし、「大型二種」には苦戦をしいられたようだ。何が難しいといえばバスを運転しなくてはいけないということだ。


 「普通一種」と「普通二種」は、どちらも乗用車タイプの普通自動車を運転するのに対し、「大型一種」ではト ラック、「大型二種」ではバスの運転となっている。普通自動車とトラックは大きさの違いはあるが、どちらも前輪が運転者のすぐ前方、もし くはすぐ下についているので、ハンドルをきるタイミングは大きくはかわらない。


 しかし、バスは違う。路線バスを思い出してもらえばと思うが、運転者の後方の少し離れたところにある。右左折でハンドルを切るときに、普通 車やトラックの感覚でハンドルをきると早く切ってしまうことになるのだ。


 先輩いわく、右折は道を広く使えるのでなんとかなるが、左折は内輪差をより考えなければならないので、ハン ドルをきるタイミングが難しく、何度か脱輪してしまったそうだ。さらに、「二種免許」は旅客運送を行うことを前提にしているので、ただ運転できればいいというわけではな く、お客様に配慮した丁寧な運転が求められるとのこと。教習用のバスには、「Gセンサー」がとりつけられており、発進、減速、旋回時に 0.4Gを越えると「急」みなされて指導をされるそうだ。

 そういわれてみれば、バスに乗るとあれだけの巨体にも関わらず発進、減速、右左折時にGを感じることはほとんどない。当たり前だと思っていたが、凄い運転技術である。


 また、車庫入れ(バックして所定の場所に車を納める)なども「普通一種」の場合は一回の切り返し(車の位置 が悪く、所定の場所に納めれそうもない時に、体勢を立て直すために一端前にでること)が認められていたが、バスは死角が多く大勢のお客様 が乗っている大型車両なので、切り返しをしてはいけないそうだ(ただ、教習では実戦的なことを考慮してそのように指導していただけで、試 験では一回は切り返しをしてもいいのかもしれない)。


 地獄・・・。先輩の話を聞いてつくづく思った。


 「大型二種」に比べたら「普通二種」がどんなに楽なことか(普通二種の試験の内容はよくわからないが)。「バ ス」は教習所でないと運転することができないが、「普通二種」で使う車は普通車。車種は違うが普段自分が運転している車と大してかわらな いから、車両感覚でとまどうこともないし、自分の車で練習をすることができるのも大きい。


 自分が「大型二種」を取ることはまずないが、先輩の話を聞いていると、先輩も含め、バスを運転している人っ ていうのは凄いなあと、つくづく実感した。巨大で死角の多いバスにお客様を乗せて、車と歩行者が入り混じる市街地を走る・・・。想像するだけでもゾッとする。


 ということで、皆さんもバスの運行に御協力を!




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