第七十一話 学科教習?(原付ライダー外伝 二種免許伝8)

 免許センターにて、深視力検査に合格した、私、カリウス。

 これで、ようやく教習のスタートラインに立つことができた。

 しかし、試験を受けるわけでもないのに、教習を始める前に試験地である免許 センターにいくことになると は・・・。まるで上杉謙信が天下を治める為では なく足利義輝に会うためだけに、わずかな手勢を率いて上洛したようなものでは ないか。謙信 は後に大軍をおこして上洛戦を開始したものの志半ばにして没し てしまう。だが、私は教習を乗り越えた後、再び免許センターを訪れ、二種免 許取得という志を全うしてみせよう。

 閑話休題、免許センターで視力検査を受けた翌日から教習所にて教習が始まる。

 二輪教習の時は、普通自動車免許所持者は学科試験が免除されるので、学科教 習はなく実技教習のみを行った が、二種免許には独自の学科試験があるので、 学科教習と実技教習が存在する。

 教習所に行き、事務所の受付にて教官と話をする。

「それじゃあ、まずは学科教習からやっていきます。」

 教官は、そう言うと私を事務所の隣にある教室へと案内してくれた。部屋の中 央には二人掛けの長テーブルが二 列二通り並んでいて、テーブルの西側にある 大きめの机には免許センターの検定コースらしきミニチュアが飾られている。さ らに西側のアコー ディオンカーテンで簡易に仕切られた小部屋にはドライブシ ミュレーターが置いてある。

 教官は私を二列二通りのテーブルではなく、南側の壁沿いのパソコンが置いて ある机に座るように指示した。

「ここでは、パソコンを使って教習をします。まず、パスワードを入れて自分の 画面を開くと、教習の段階に応じ て問題セットが用意されています。各問題 セットに百問問題が入っていてランダムに二十問出題されるので、○×、もしくは 選択肢から選んで 回答してください。その場で答え合わせがされます。正答率 九十パーセント以上が合格ライン、五回連続で九十パーセントを超えれば、その 問題セットはクリア。次の問題セットに進んでください。」

  教官は私にマニュアル・・・といっても、A3一枚に両面印刷されたものを渡してきた。パスワードは忘れるといけないから誕生日にしておいてと言われる。

「あと、学科教本はここに置いてあるのを使ってください。以前は買ってもらっ ていたけど、後で使うこともなく てもったいないから、今は貸し出すようにし ています。」

と言われ、年季の入った学科教本を渡される。問題を二十問解くと、二十問それ ぞれの正誤と正答率の一覧で出る のだが、それぞれの問題の正誤の横に学科教 本へのリンクがついており、リンクをクリックするとパソコン上で学科教本を見 られるようになっ ている。紙ベースの学科教本を見る機会はほとんどなさそうだ。

 教官が説明を続ける、

「えーと、トイレは奥にいったところにあります。あと、一時間ごとぐらいに適 当に休憩取ってくれていいので。 あ、そうそう、自宅のパソコンでもサイト開 いてパスワードいれれば、この学習システム使えるけど、これも仕事のうちだか ら基本的にはここ に来た時だけやってくれればいいよ。あんまり早く終わっ ちゃうとお金(教習代)もらえなくなっちゃうんで。」

と、冗談だか本気なんだかわからない口調で言い残すと教官は教室から去って 行ってしまった。学科教習とはいう ものの、基本的には・・・、いや、全て自 習のようだ。

 私は席に着き、ひたすら問題を解いていく。

 問題セットの構成をみると、一種免許の学科教本に沿った問題セットから始ま り、一種免許の問題セットを全てこなすと二種免許の学科教本の問 題セットに なる。二種免許の学科教本の問題セットは一種免許の問題セットよりも大分少な いので、二種免許の学科試験の問題の八割近くは一 種免許の学科試験の問題と 共通しているのだろう。

 かつて合格した一種免許の学科試験だが、さすがに十五年の歳月が流れている と忘れていることも多い。間違え た問題や、たまたま正解した問題はパソコン 上の学科教本で確認し、知識を定着させる。車の運転は問題なくしているのだが (技術的に優れて いるとはいえないが)、普段は気にしていなかったり、勘違 いしていたりしていたことが再確認できる。一種免許を取った時よりも、実際に 車 を運転している今だからこそ、より深い理解ができる(一種の時は嫌々教習 に通っていたから表面的な理解に終っていたところも多かっただろ うし)。

 また、携帯電話やチャイルドシートなど、十五年前にはなかった新たな問題が 出題されてくる。

 二種に絡む領域で興味深かったのは、6歳未満の幼児(自分の車に乗せるとき はチャイルドシートが必要)をタクシーに乗せるときに、チャイル ドシートは 必要か? という問題。

 答えはチャイルドシートは不要(道路運送法に定められている)。しかしなが ら、この事実が世の中にどれ程知れ渡っているのだろうと思うとこ ろがある (実際、タクシーに子供を乗せるのだがチャイルドシートはタクシー会社で貸し てくれるのか? という質問を身内から受けたことが ある。普段タクシーを使 わず自家用車を使っている人が、タクシーを使わざるを得ない状況になったとき にハッと思うところだろう)。

 こうして、私は暫くの間、会社に出勤した後すぐに教習所に向かい、一日中 ゲーム感覚の学科教習をひたすらこ なしていく日々をおくることになるので あった。


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