裏辺研究所所長のちょっとだけ暴言・暴論 > 第11段棒

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第11段   ガンダムSEEDについて語ってみる(12月31日’03)

1.はじめに

 さて、いよいよ2003年も終わり。裏辺研究所的には、大きく飛躍する年となりました。アクセス数も10万、さらに20万も軽く超えちゃいまして、100万アクセスに向けて邁進中。さらに年末になって、某有名雑誌から原稿執筆の依頼まで来ました(いつ公式に発表して良いのかな)。これもひとえに、研究所協力者の方々と、いつもご覧下さる皆様のおかげ。これからも満足して頂ける研究所を目指して頑張りますので、宜しくお願いします。

 で、今年を締めくくる原稿を何にしようか。そう考えたところ、敢えてガンダムについて語ってはどうか、と言う結論に達しました。先ほどの原稿執筆の依頼も、ガンダムがらみだったので、それを祝する意味でも、このネタで行きましょう。と言うわけで、今年大きな賛否両論を分けたガンダムSEED。リアルタイムで見ている時、ボロクソにけなしましたが、少し冷静になってきましたので、この作品について分析していきましょう。

2.名作になる余地はあったのだが

 ガンダムSEEDと言う作品は、2002年10月から2003年9月まで放送された作品。監督は、サイバーフォーミュラー等でお馴染みの福田監督。ガンダム=富野監督と思われがちですが、他の監督も沢山作っています。また、注目すべきは脚本を両澤千晶という女性の方が担当していることです。

 さて、このガンダムシリーズは、新作がでるたびに叩かれるのも特徴。というのも、一番最初に作られた機動戦士ガンダムを熱烈に信奉する一団がありまして、そう言う人たちには、たとえどんな作品が出ても、それはガンダムの名前を汚すだけの作品でしかないようです。ですから、その辺から出る批判は、軽く無視するに越したことはないですね。

 で、今回のガンダムSEED。
 テレビシリーズでは2作前の、新機動戦記ガンダムWと言う作品と同様に、露骨に女性向け、グッズ販売と言うのを前面に押し出した作品であると言えます。もちろん、グッズ販売自体は批判されるべき事でもないし、むしろグッズを通じて、よりその作品に対する愛着が深めることが出来、一方、作成者側は収入を得て、次の作品を作れるので、私は一向に構わないのですが、ちょっと露骨すぎましたね。主人公や、その友人の「写真集」まで販売されているのには、あきれて物も言えません。「プライベートショット満載」って。あんた、アニメのキャラでしょ。それにキャーキャー騒ぐ女性もどうなのよ(もちろん、あくまで「一部の」ですよ)。

 まあ、それはさておき、この作品は1つの重要なテーマを投げかけてくれました。
 それは、遺伝子改造された人々(コーディネーター)と、遺伝子改造されていない人々(ナチュラル)の対立です。これは、おそらく今後確実に問題になっていくでしょう。凄く現代に対応した、良いテーマを提示したと思います。もっとも、今までのガンダムの中にも「強化人間」という、人工的にMSパイロットとしての適性を高め、その代わり人格が不安定という悲しい人間兵器も登場していましたから、そう取り立てて賞賛すべき新しいテーマではないかもしれません。

 ともあれ、このコーディネーターVSナチュラル。当然、戦争を始め、数多くの悲劇を生み、憎しみが憎しみを増幅させ、ついにコーディネーターの極右の指導者は、ナチュラルが住む地球そのものを消し去ってしまえ、みたいなことを考え、巨大な兵器で地球を狙います。一方、ナチュラル側は核兵器でコーディネーターの住むコロニー(ま、宇宙にある居住地と考えて下さい)を破壊すべく、激戦を繰り広げます。主人公達は、これを止めようと戦い、見事に止めちゃうんですが・・・。

 話の内容としては、悪くなかったと思います。ただ、いくらなんでも主人公達が強すぎる・・・。なんか、全身からビームをどーんとぶっ放して敵を殲滅・・・。個人的には、そう言う強すぎるガンダムは嫌いです。と、これは個人的な意見ですが、ともあれ少し落ち着いてみれば悪い作品ではないと思います。

 特に、第31話でカガリが言った「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は平和になるのかよ」というセリフは、なかなかジーンと来るセリフです。

 ただ、実際の戦争形態としてはどうかな? 作品中の、あの大量虐殺のオンパレード。現代の戦争に於いては、イラク戦争に見られるようにピンポイント攻撃が主流なんですが、どうなんでしょう。ここら、もはや我々は現実に戦争を体験したわけでもなければ、未来の戦争がどうなるかも解らないですね。

 また、結局、これは続編待ちなのかもしれませんが、コーディネーターVSナチュラル、この対立がどう昇華されたのか、さっぱり解らないまま終わりました。取り敢えず、地球を狙う巨大な兵器、そして宇宙に発射される核兵器は止めました。双方の悪い親玉も死にました。で、どうなるの?・・・描かれていません。重要なテーマだけに、もし、このまま続編がないまま終わると、当て逃げ状態になります。

3.ちょっと見過ごせない様々な問題点

 ま、どんな作品にも問題点があるので、これは仕方がないのですが、この作品は「ふざけるな!」というのが多すぎました。

 さっき述べたのが、1つ。それから、これはこの作品が好きな人でも言っていますが、回想シーンが多すぎますね。総集編を途中に3週連続やったあげく、その他の回でも、同じシーンばかり回想しちゃっています。回想シーンは、効果的に使うと、印象的なシーンとして視聴者の脳裏に焼き付く役目を果たすのですが、やりすぎると「つまり、作品が制作できていないんだね」とバレてしまいます。

 しかも、作品の後半3分の1から、突然話が急展開します。どうも監督が「こんな話も、あんな話もやりたい」と言ったようで、色々なエピソードをガンガン詰めます。よく解らんけど、話が始まってあっという間に終わる。極端な話、いつの間にかエンディングでした。突然、激戦が始まって、一瞬で戦争終結です。だったら、最初から戦っておけよ、と叫びたくなりましたね。圧倒的な迫力のラストを迎えた富野監督の機動戦士Vガンダムに比べると・・ラストがちょっとねえ・・・・。感動しないんですよ。

 SEEDの問題点を総括すると、何かよく解らんままに、機動戦士ガンダムのパクリみたいな始まり方をして、途中でドロドロの恋愛関係、総集編、いつの間にかラスボスが出てきて、分け解らない理由で大量殺戮を始めて、ラスボスが死んでエンディング。作品としてのテンポ感が非常に悪いです。26話ぐらいにまとめた方が、見やすかったのではないかと。あとガンダム強すぎ。キラとアスランのホモ関係は明らかに女性を狙いすぎ、提示したテーマの答えも無しと言ったところでしょうか。

 あと、これは実に個人的な意見ですが、キャラクターデザインが嫌です。目が出かければいいモンじゃないでしょう。主人公の乗る船の女性の艦長が巨乳なのもいかがな物か。いや、巨乳なのは良いんだけど、戦闘中に揺れる揺れる・・・(しかも、そのシーンは使い回し)。どこをターゲットにしているんでしょうね。

 それから、これは疑問なのですが、この作品は視聴率がよいと評価して良いのか、悪いと評価すべきなのか。使い回し&回想シーンの話ですが、一説によると途中で打ち切りが検討されたそうです。しかし、やっぱり続けることになったため、このように制作が間に合わなかったとか。しかし、一方で様々な雑誌には「非常に高視聴率だった(8%だったかな?)」など、大人気と書かれています。一体、どっちが真相なのでしょう。しかし、今までの平成時代のガンダムよりは視聴率が高かったのは事実で、にもかかわらず、このような醜態をさらけ出してしまったことは納得がいきません。

4.ターンAガンダム&キングゲイナーを見るべし

 それでも、ストーリー的には新機動戦記ガンダムWや、巷にあふれる一年戦争関連の漫画に比べると、遥かにガンダムSEEDは面白いのではないかと思います。ただ、残念ながら視聴率が全く奮わず、ガンダムの奇抜なデザインだけで「駄作」と決めつけられた、富野監督によるターンAガンダム。あれを見てしまうと、SEEDは作品としてレベルが遥かに劣るように見えてしまうのが残念です。ターンAガンダムがどんな作品か、ここで語るのも良いですが、これはぜひ、レンタルビデオ店で借りて全話見て下さい。それだけの価値があります。

 でも、ちょっとだけ書いておきます。
 舞台は月と地球。機動戦士ガンダム等の時代から、もう遥か遠くの時代になって、大きな戦争の後、人々は月と地球に別れて、互いの存在も忘れて暮らしています。つきの方は高度な文明を持つのですが、地球は産業革命を起こした程度です。そんな状況の中、月の女王ディアナ・ソレルは地球へ帰還しようという作戦を発動し、自分と軍事部隊を地球の降下させます。そして、地球に降りた月の人々は地球の人々を野蛮人と決めつけ、一方の地球人も、月の人々を侵略者として敵対します。

 この2つの対立を描く作品で、もう涙が出るような感動的な作品に仕上がっています。特に、その月の女王・ディアナ・ソレルは、自分とうり二つな地球の女性キエル・ハイムと遊び心で入れ替わってしまうのですが、当然、地球の一般の人としての生活を始めることになってしまいます。そこで彼女が気がついた、様々な人々の思い。こうしたテーマも非常に素晴らしいですね。この他にも、色々な思惑を持った人々が登場し、それぞれのテーマが展開されますが、見事に書ききっています。

 さて、富野監督のその次の作品、オーバーマンキングゲイナー。これも、非常に名作で、ガンダムと並ぶ富野監督の傑作といえるでしょう。こちらはWOWWOWで放送されたため、見ていない人が大半だと思いますが、熱烈なファンも沢山います。舞台はシベリア。細かい設定は省略しますが、主人公達に襲いかかってくるのが、色々な特殊能力を持ったロボット達(もちろん、人が乗っています)です。要は、嫌がらせですな。で、一話ごとに実に様々な能力が展開。

 一番印象的だったのが、相手の心の中を解らせてしまうロボットです。普段、私たちは他人と「本当はこいつと話すのが嫌だなあ」とか、「この人に告白したいなあ」とか、色々な感情を持ちながら、でも外には出さずに接していますね。ところが、そのロボットが能力を使うと、それが解ってしまうのです。つまり、感情が全て相手に伝わってしまうのです。当然、人々の中で大混乱が起こります。

 でも、そんな中で、言えなかった想いを告げることが出来たり、口にしなくても自分がやろうとしている作戦が相手に伝わったり、上手くやれば便利なことなんだよ、とそういう描き方もされています。この作品、2人の対照的な主人公を使って、「引きこもっているだけではダメだ!」というのが大きなテーマのようで、これも1つのメッセージなのでしょう。とにかく名作です。26話ですので、是非借りて下さい。

5.まとめ

 横道にそれたようで、それていません。
 つまり、ガンダムSEEDという作品は、一部から猛烈に叩かれているほど、悪い作品ではありません。ただ、世の中にはもっと凄い作品があります。NHKBS2で、土曜日の朝8時にやっている「プラネテス」も考えさせられる作品ですし、SEEDの後番組の「鋼の錬金術師」。これも、むしろSEEDより面白いし、作品としての質が高いです。

 ですから、あまりSEEDは21世紀の新しいガンダム像を展開しただとか、21世紀のテーマを見事に描いたとか、そう言う賛美を訊くと、非常に疑問を覚えます。挙げ句の果てに、監督は「戦争物じゃありません。ロボット物をやってみました。最初のガンダムだってそうだったはず」というメッセージをガンダムエースという雑誌に書いているので、こういうのを訊くと、落胆ですな。

 あ、ちなみに最後のキラとフレイの会話。「アムロとララア?」と多くの人が思ったようで、私もそう思ったのですが、違うそうです。あれは、お互いに勝手に相手に対する気持ちを述べているだけで、別に(意識の中で)会話しているわけじゃないでそうです。そんなの、監督の頭の中だけでしょ。

 では、このSEEDが果たしたのは何だったのか。それは1つには、ガンダムという世界を知らなかった、言い方は悪いですが女子供へのアピール、宣伝が大きいでしょう。また、賛否両論はありますが、戦争という物やクローンや遺伝子改造など、倫理的な問題と危険な科学者の飽くなき欲望のせめぎ合いなど、様々なテーマを投げかけました。こういうテーマを持つ作品は見にくいことも多いのですが、SEEDはその点、見やすかったとは思います。

 さらに、この作品ではニコルやフレイなど一部を除けば、レギュラー級のキャラクターでもあっさり死にます。これは賛否両論のあるところ。普通、もっと劇的な死に方をしてくれる物ですが、実にあっさり、チュドーン、さよなら〜。あと、子供向けにもかかわらず、内蔵が飛び散るシーンだとか、エッチシーンだとか(露骨にはやっていませんが)、これはなかなか出来るマネではありません。

 ただ、また戻って申し訳ないですが、見やすいと、とかく、問題がおおざっぱに描かれる傾向にあり、そこに批判が集中することになります。難しいですね。ただ、くどいですが総集編3回&回想シーンの多用はまいった。この監督とスタッフに、二度とガンダムはやらせない方が良いことは、間違いないでしょう。あ、ちなみに声優さんの演技は上手かったです。そこは凄く評価。キャラクターデザインの悪さを大きくカバーしていました。拍手。

 それから、SEEDは外伝としてアストレイという漫画がガンダムエースなどで連載されております。こっちの方がかえって、作品として面白いし、SEEDの世界観を解りやすく説明してくれている気がします(もちろん、外伝ですから、あくまでSEEDと言う作品があってこそ成立するわけですがね)。それからネット上で見ていると、子供向けのコミックボンボンで連載されたSEEDの漫画版が、上手くまとまっているとか。少し見ましたが、エンディングの表現は、漫画版の方が格段に上でした。で、あるからこそアニメ版のSEEDは、勿体ないなあと思うんです。きちんと作れば、マニアからも、かなりの評価を受けただろうに。

 さて、今回のお話はこれまで。それでは皆さん、良いお年を。

棒

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