裏辺研究所 週刊?裏辺研究所 > 小説:バイオハザードin Japan棒

第13話:無線の声

 ドアが閉まる音と同時に、また独りになる。あまり気分のいい別れ方ではなかっただけに、岩成の最後の台詞に救われた。連中を見つけた今、ここですべきことは、亀村、牛田、皆川の捜索と、脱出口の発見、余裕があれば情報収集といったところか。脱出に関しては、自分一人なら二階から飛び降りるなり、窓から逃げるなり出来るが、外にもゾンビがウロウロしているし、怪我人もいるため、細心の注意が必要だろう。

 病室のドアを一つずつ開けて中を確かめる。探している3人の他にも生存者がいないとも限らない。だが、何の収穫も無いまま、ナースステーションに戻って来てしまった。さっき来たときは焦っていて、電気もつけないで出て行ってしまったが、よく見れば意外に広いことがわかる。そして、もはや恒例となってしまった書類とカルテのチェック。…入院患者が異常に多い?今まで見たゾンビと死体の数を合計しても、いや、ベッド数から考えてもこの数は多すぎる…。それも、例の眠り病による患者が…。

 ふと奥を見ると、薬品棚があるのに気がついた。何か役に立つものがあるかと、調べてみるが、内科ということもあり、それぞれの入院患者専用の処方薬がほとんどで、彼が求めるようなものは無い。しかし、全く収穫が無かったわけでもない。棚の横のフックに「薬剤部」と書かれたカギが掛けてあったのだ。余裕と機会があれば、あの部屋を調べてみるのもいいだろう。

 一通りの捜索を終えて部屋を出ようとすると、窓の外のある一点が一瞬明るくなり、さらにその一瞬後、爆発音が聞こえた。
その爆発音は、爆竹の「パン」というような、小規模なものではない。実際に聞いたことはほとんどないが、爆弾のような「ドーン」という重く、低い音。これだけの情報から、そのかなり離れた「ある一点」で大規模な爆発があったことが予想される。

 「ある一点」…。突然でよく分からなかったが、おそらく町役場か白神山の近くだ。もしも役場なら、そこに居るはずの3人は…!
 手塚はベルトにつけた無線機で岡崎と父親に情報を求めることにした。
 ボタンを押し、黒い機械に呼びかける。これで誰も応答しなければ滑稽極まりない。
「手塚から各機へ、手塚から各機へ。電波状況は良好か?繰り返す、電波状況は良好か?」
 ―十秒ほどして応答が返る。
「えーっと、親機の川田です。うーんと、電波状況は良好…、だと思います。」
 多少の雑音は入るが、聞き取れないほどではない。
「了解。親父はどうした?何故君が応答する?」
「えーっと、妨害電波を調べるって言って…、屋根の上で何か、作業をされてますけど…。」
 …まだやってるのか、あのオヤジは。
「了解。それと川田、無線でしゃべる時はもっとはっきりしゃべってくれ。少々聞きづらい。」
「了解しました。」
 いい返事だ。しかし、こんなことを聞くために無線機を使ったわけではない。
「ところで、さっきの爆発音、そっちで確認できたか?」
「はい、それを見てたら、応答が遅れてしまって…。」

「見ていた?そんなに近くなのか?」
「はい。場所は…、えーっと…。何て言えばいいか…、その…。」
 川田はこの辺りの地理に明るくはない。目では見えていても、地名が分からないため、説明できないのだろう。どうしようかと考えていると、無線の先の声が変わった。

「KH7GIH、KH7GIH、各局聞こえますか?どうぞ?」
 …親父だ。
「親父…、無線コードや、無線用語を使わんでくれ…。こっちは素人だ。」
「了解。爆発が起こったのは、白神山、ちょうど公園の辺りだ。こちらの窓から良く見える。」
 白神山…、ちょうど役場の裏手にある山だ。あんなところに何が…。
「了解。規模はどの程度か分かるか?」
「かなりデカイ。そうだな…、家が1件ブッ飛ぶ程度だと思う。」
 …確かにデカイ。一体何があったというのか…。
「了解。その他に何か、変わった事はないか?」
「いや、特にない。そっちはどうだ?」
 こちらの状況を答えようとすると、新たに音声を受信した。
「…えるか?こちらは岡崎だ。繰り返す。聞こえるか?こちらは岡崎だ。」
「閣下!無事ですか?」
 ようやく応答があった。今まで何をしていたのだろう?
「岡崎?閣下?貴様…、何者だ?」
 …そういえば親父には岡崎に無線機を渡したことを言っていなかった、というより、無線機を使っての会話は初めてだ。慌てて岡崎が何者で、どういう経緯で無線機を渡したか説明する。
「それで、閣下、先ほどの爆発はそちらでも確認されましたか?」

 次の瞬間、全く予想しなかった答えが返ってきた。
「ああ…。と言うより、今、現場にいるんだ。」
「はぁ?!」
 突然のリアクションだが、それでも無線機に向かってしゃべっている自分はすごいと思う…。
「現場にいるって、どういうことですか、閣下?!」
「どうって…、言葉通りの意味さ。俺は今、白神山にいる。さらに言えば、あの爆発の原因も俺達だからな。さっきまでの会話は聞いていたよ。しかし、手が離せなくてね。応答が遅れてしまった。」
 さらりと爆弾発言をしてくれる…。ツッコミどころも満載だ。親父など、さっきから何も発言がないところをみると、あっけに取られているかも知れない。
「俺達?誰か一緒にいるのか?それに原因って、そこで何があった?」
「誰って…。いいや、説明がめんどくさい。」
「めんどくさい?そんなこと言ってる場合か!?さっさと説明してくれ!」

 あまりに理不尽な理由に声を荒らげる。しかし、岡崎は冷静だった。
「逆に言えば、そんなことを説明してる場合か?状況は時間と共に変化してるんだぜ?」
 …確かに岡崎の言うとおりだった。痛いところを突かれて何も言えなくなる…。
「とにかく、この爆発について君達が心配することは何もない。君達は君達のできることをやればいい。」
 いつの間にか、イニシアティヴを取られたことが悔しい。
「…了解。本当に問題無いんだな?」
「ああ、そっちはどうだ?」

 …この男、自分は何も言わないで、俺にはそれを求めるのか?…まあいい。
「白藍病院で亀村以外の4人を発見した。ここでの捜索を続行する予定だ。こちらも特に問題はない。」
「本当か!?みんなの様子はどうだ?亀村は?」
 今、自分で説明している暇はないと言ったくせに…。
「全員問題ない。亀村もすぐ見つかるだろう。他に連絡事項は無いな?」
「ああ、特には…。」
「よし、ならば交信終了。各自の無事と健闘を祈る!」
「「了解!」」
 二つの声がシンクロして聞こえた。このような無線でしゃべると、どうも軍人もどきの口調になってしまう。しかし、何とかイニシアティヴは取り返すことが出来たようだ。本当はこんなことを気にしている場合ではないことは分かっているのだが…。
 時々自分のプライドが嫌になる…。


棒

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