裏辺研究所 週刊?裏辺研究所 > 小説:バイオハザードin Japan棒

第16話:パスワード解読

途中、会議室で襲われたイモリ人間(先ほどの書類によると「ハンター・T」という正式名称があるらしいが)の仲間と思しき生物に遭遇したが、今度は落ち着いてショットガンで仕留めた。残り少ない弾薬だが命には代えられない。安全のため、往路では打ち洩らしたゾンビをそれぞれ頚動脈を狙ってメスで一閃する。

 そして、連中がいる230号室についた。今度は出会いざまに襲われないようノックをした上、声をかけてドアをあける。
「ずいぶん早いな、何かあったのか?」
手塚の苦労も知らず、狭間が軽く声をかける。
「ああ、少し君達の力が借りたい。全員で付いて来てくれ。」
手塚はやはり事もなさげに言う。つまらない男のプライド…。
ぞろぞろと大所帯になってしまったが、その分だけ心強い。もしかしたら全員で行動した方がいいのかもしれない。少なくとも気分的にはそのほうが楽だ。こちらに来るとき切り捨てたゾンビはほとんどが動かなくなっていた。
「…コレ、みんな先輩がやったんですか?」
岩成が引き攣った表情でたずねる。
「ん?ああ、そうだけど…。あんまり見ないほうがいいよ。気持ち悪いだろうから。」
そんなことを話しているうちにしているうちに、先ほどの電算室に着いた。
「で、コレなんだが…。」

とりあえず、さっき行き詰まった画面までもっていく。
「パスワードが分からないんじゃ、やっぱり無理か?」
桜庭は画面をじっと見つめ、何かを考えた後、答えた。
「…いや、そうでもないぞ。」

そう言って、目にも止まらない速さでキーボードを叩く。
「パスワードを解こうとするからいけないんだ。要は『パス』すればいいわけだから、いっそパスワードを書き換えればいい。」
おそらくこの中で、最もコンピュータ関連に疎い手塚でもその理屈が理解できないわけではない。だが、理屈が理解できるのと、実際にできることは全く違う。しかし、桜庭はいとも簡単にそれをやってのけた。
「…ん?」
不意に桜庭が手を止め、その身を乗り出して画面を睨みつける。
「どうした?」
「うーん…、パスワードは書き換えて解いたんだが、どうやらハードディスクの一部が別電源らしくて…。」
別電源?外付けみたいなものか?
「じゃあ、電子ロックの解除とかもできないよな?」
「無理だな。それらしい履歴はあるが、電源を入れないことには…。けど、電源の場所はわかるぞ。緊急電源らしいけど。」
そう言うと病院各階の見取り図が表示される。さらに、地下1階のある一画が赤く点滅していた。どうやらまた面倒なことになりそうだ。
「つまり、俺はそこに行って電源を入れてくればいいわけだな。…その見取り図、プリントアウトできるか?」
「もちろんだ。ちょっと待ってろよ。」

 しばらくして、プリントアウトされた見取り図を手に、手塚が指示を出す。元来そういう才能があるのか、その姿は意外と堂に入っている。
「ハードディスクの電源が入ったら、まず、できる限りの電子ロックを解除してくれ。さらにその後、ウイルス、アンブレラ、生物兵器、および、それに類するようなキーワードで検索。何をすべきかはこれを読んでもらえばわかるだろう。とりあえず全員、目を通しておいてくれ。」
 そう言って手塚は会議室で拾った「鹿尾町における生物兵器製造、および使用実験計画報告書」という冊子を手渡した。
 
 手塚の指示はさらに続く。
「狭間と西園寺はこの部屋の入り口を死守。要はバケモノたちをこの部屋に入れなければいい。230号室と同じ方法で問題ないだろう。よほどのことがない限り外には出るなよ。岩成には桜庭の助手を頼む。君なら、どういう情報が重要かわかるだろう?それと…、できればこれも訳しておいてほしい。どうも英語は苦手でな。」
手塚のポケットから出てきたのは、事務室で拾ったアンブレラからの手紙だった。
「じゃあ、いってくる。1時間経ってもどらなかったら…、ってさっきも同じようなこと言ったよな。」
手塚が靴紐を締め直し、ドアを開ける。
「ちょっと待った!」

 ちょうどそのとき、桜庭が何かを思い出したように手塚を呼び止めた。
「これだけの機械だ。起動させれば大量の熱が出る。何らかの冷却システム…、見たところ水冷装置だと思うんだが、それも外部から操作するようになってるらしい。心当たりがあったら、探してくれ。でないと、蒸し焼きになってしまうからな。」

 階段をやや駆け足で下って1階にたどり着く。最初に2階へ上がってから、長くても1時間くらいしか経っていないはずなのに、ずいぶん久しぶりに来たような気がする。

 地下への階段は、こことは少し離れた場所にある。そこへ向かっている途中、玄関ホールを通り過ぎていると突然、自動ドアの開く音がした。反射的にそちらをみる。人影が見える。しかしその人影は既に重圧センサーを降りて、一歩踏み出そうとしている。
「動くなーッ!」
ダメだ!その自動ドアを閉めては!せっかくで入り口を確保するチャンスなのに!


棒
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