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棒
氷川雨水より・・・みんなへ

今、君達がこれを読んでいると言う事は、私に既に生きては居ないということだろう。だから、こんなもの読まれたくもないし、本当なら書きたくもないのだが、どうしても知らせて置かなくてはならぬ事もあるので一筆、認めて(したためて)置く。

先ず私の死に関して、誰も恨んではいけない。この世界に入った以上覚悟していたことだし、彼らも彼らの信念に従った行動をとったという点では我々と全く相違なく、決して悪ではない。また、直接、間接を問わず、私の殺めた人間は優に万を超える。

彼らの関係者もきっと今の君達と同じ心境だろう。だから誰も恨んではいけない。

唯、哀しんでくれればそれでいい。

遺産に関して

遺産に関しては、君達に任せると言いたい所だが、それでは明らかに争いが起こるだろうから、次のように処理してほしい。

動産の6割を裏辺金好氏に一任する。但し、裏辺研究所の経営に役立てる事。それ以外の処理は認めない。

動産の4割と不動産の全ては現金化し、アフガニスタンを始めとする難民の援助資金とする。詳しい方法は村岡司浩氏に一任する。

知的著作物及び特許権は全て裏辺研究所に帰属する。
その他、相続に関して問題が起これば全て裏辺金好氏の指示に従うこと。

後任に関して

私の准将位の後任として八十八舞太郎氏を指名する。その他の軍関係の処理に関しては、村岡司浩閣下に一任する。

葬儀に関して

私の屍骸が確保された際には通常の葬儀の後、実家の近くにある湖に散骨してほしい。但し、屍骸の確保は最も優先されざる事項である。

裏辺金好様へ
貴殿にはいくつか面倒な役割を押し付けてしまって申し訳ない。生前と同じく世話にならせてもらう。思えば貴殿には随分と迷惑をかけた。生前はあらためて詫びをすることも礼をすることもしなかったように思うが、感謝している。本当に最後まで迷惑をかけて済まない。研究所の運営も大変だろう、色々と苦労の多い貴殿だが決して体の強い方ではないのだから必要以上に無理をすることの無いよう注意してほしい。

村岡司光閣下へ
貴方の判断は常に的確で私も随分と助けられた。だから、今回の件に関しても決して貴方の作戦ミスなどではなく、単なる運命であるから貴方が責任を感じる必要は何処にも無い。どちらにしろ貴方がいなければ、私はあのとき命を落としていたのであって、言わば私の命は貴方のものなのだ。騎士が主君のために命を落とせば、それは本望。私は満足している。私の後任として八十八が就任するだろうが、まだまだ未熟であることは否めない。しっかりとサポートしてやってほしい。


八十八舞太郎君へ
君には私の後任という面倒な役を押し付けてしまって申し訳ない。しかし、それも君が優秀なればこそであって、君ならば、すぐに私を超える人材となれることを確信している。事実、君は既に私に匹敵するだけの実力は持っているはずだ。あとはそれを如何に使いこなすかだけが課題である。自信を持って任務に就いてほしい。私を失望させることの無いようがんばってくれ。

原口良一氏へ
貴殿とは幾度かいがみ合うこともあったかのように記憶している。その件に関しては私にも非があったのだろう。その点は謝罪する。しかし、貴殿の方には全く非が無かったかというと私はそうは考えてはいない。もちろん貴殿のプライドが高いことも貴殿がそれに値する人間であることも理解しているつもりだ。だからこそ、他人のことも認めてやってほしい。

馬藤炊爺君へ
君の恐竜や環境問題に対する知識やそれに取り組む姿勢は私も高く評価している。また、真面目かつ確実で、丁寧な君の仕事には私も随分と助けられた。しかし、いささか真面目すぎる感が否めないのも事実だ。この世の中、真面目なだけでは渡っていけないことも多い。私もそれで苦労したこともある。突撃だけが作戦でないことも覚えておいて損は無いはずだ。

水澄風流君へ
君にも随分と世話になった。かつて一時期、私の部下だったこともあったな。君のような優秀な行動力を持った部下がいてくれたおかげで私も色々と楽をさせてもらった。君のその優秀さに甘えて色々と無理な任務を押し付けてしまったこともあったように思う。迷惑をかけて済まなかった。今後も、君のその高い能力を持って皆を助けてほしい。

末戸会君へ
君のその圧倒的な頭脳は、裏辺研究所随一だと私は認識している。君もかつて私の部下であったがその頭脳には何度助けられたことか、思い出すとキリが無い。世話になった。しかし、君は少し加減が利かないところがあったように思える。そのシャレにならない行動が馬藤君を始めとした一部の人物を恐怖させたことも忘れてはならない。少しは手加減してやってほしい。

須川忠博様へ
この中では私との付き合いは最も長かったな。今も、思い出すのは楽しかった幼少の頃のことばかりだ。文字通り共に育ってきた私たちだが、どうやら共に老いることは叶わないらしい。かつては体力では私、知力では貴殿が勝っているという認識が一般的だったが、体力の面では貴殿に追い越され知力に関しても進む道が全く異なってしまったため比べることも出来なくなってしまった。貴殿に関して唯一の心残りは体力面でのタイトルを奪い返す機会がなくなったことだ。もう一度貴殿と競い合いたかったよ。

桜乃明日華様へ
貴方は裏辺研究所史上、最も使える人間といっても過言ではないだろう。もっとも私が使うわけではないが。かつて私は、つまらないことで陳腐な手段を使い貴方を欺き裏切ったこともあった。そんな罪深い私を寛大な貴方は許してくれた。そのときの恩は忘れない。これからも裏辺研究所の面々を援助してやってほしい。

七ノ瀬悠紀君へ
君との付き合いはかなり短かったな。しかし、遠い長崎の地で孤軍奮闘している私に対する貴重な物資補給にはとても感謝している。出来れば、君の補給物資がもっと欲しかったが、もうそれも叶わぬことだ。君の能力は裏辺研究所でも貴重な能力だ。その能力を以って裏辺研究所の運営に力を貸してやって欲しい。

かつての恋人へ
僕は貴女に何が出来ただろう。何をしてあげられただろう。ずっと共にいることも誓えずに、本当に自分でも情けない男だと思う。今思い出せば、何もかも与えてもらっておいて、僕は何もあなたに与えていないように思える。だからこんなつまらない僕のことなど早く忘れて、出来れば存在していたこともすらも忘れて、新しい恋に生きて欲しい。一緒にいることが出来なくなった時点で、僕はもう貴女の恋人ではないのだから。それでも、もう一度だけ伝えたい。愛していると。いや、愛していたと。

週刊裏辺研究所第8回に戻ります。
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