クラス150「スプリンター」 

British Rail Class 150 'Sprinter'


グレート・ウェスタン鉄道の新塗装で出場したクラス150/2。
(撮影:セント・フィリップス・マーシ車両基地、St Philips Marsh Depot)

●基本データ

デビュー年 1984年
最高速度 120km/h
製造会社 イギリス国鉄鉄道工学部門ヨーク工場
(British Rail Engineering Limited, BREL York)
運行会社 アライヴァ・トレインズ・ウィールズ(Arriva Trains Wales, ATW
グレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway, GWR
ロンドン・ミッドランド(London Midland, LM
ノーザン(Northern, NT
運行区間 こちらを参照
編成詳細

150/0 3連x2本(量産先行車)
150/1 2連x49本
150/2 2連x83本
150/9 3連x2本


●地方路線で活躍する汎用型ディーゼル車

 1980年代に導入された気動車で、マーク3客車の車体を元にデザインされた通称「マーク3ファミリー」の一員(他にもクラス317〜322、325、442、455、456電車がこれに該当)。同時にイギリス国鉄が開発した「スプリンター・ファミリー」の元祖でもある。スプリンター・ファミリーはクラス153、155、158と159を含む第二世代気動車群で、「ペイサー・ファミリー」と共に老朽化した第一世代気動車を置き換えた。合計で137編成が1984〜1987年の間に製造され、現在でも地方非電化路線で第一線で活躍している。

導入背景と国鉄時代
 1984年にBREL(イギリス国鉄の鉄道工学部門)が量産先行編成のクラス150/0を3連x2本製造し、それと同時にメトロ・キャメル社(Metro-Cammel)が対抗してクラス151を2編成製造。様々な試験走行の末、信頼性の面でより優れていたBREL製のクラス150が採用され、2連x50編成が発注された。これらはクラス150/1と称され、試作編成と同じく前面貫通扉が無いタイプである。バーミンガムとマンチェスター近郊に集中的に導入され、主にローカル列車に運用された。量産先行編成も通常運用に入れられ、それらは現在グレート・ウェスタン鉄道(GWR)が運用している。

 1985〜1986年の間には2連x85編成のクラス150/2が製造され、これらは前面に貫通扉が設けられたため同じマーク3ファミリーのクラス317/2と顔が類似している。後にクラス150/2の一部の構成を変更し、クラス150/1の中間に組み込む事で一部のクラス150/2が3連に増やされた。現在この組み込み運用は2012年に構成変更されたクラス150/9以外にはされておらず、2連に復元された。ちなみに製造当初から運転台がない純粋な中間車を組み込んでいるのは試作編成のみである。

 英国鉄の民営化後はそれぞれの地域の運行会社にクラス150は受け渡され、未だに全国中で運用されている。

現在の運用(地方別)
ウェールズ
英国鉄の時代からウェールズのローカル線で使用されているクラス150だが、2006年にはスコットランド、イングランド南西やイングランド中部から車両が転属し、現在はクラス150/2がアライヴァ・トレインズ・ウェールズ(ATW)に2連x36編成所属している。ウェールズの様々な路線で現在運用されている。

イングランド南西
南西部では現在GWRが試作編成のクラス150/0を3連x2編成、クラス150/1を2連x19編成と2012年から登場したクラス150/9が3連x2編成所属している(クラス150/9はクラス150/2の先頭車をクラス150/1の中間に組み込んだもの)。元々イングランド南西に配備された編成数はもっと少なかったが、クラス172の導入でロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)とロンドン・ミッドランド(LM)から合計で15編成が加わり、GWRクラス142と一部のクラス150を置き換えた。現在クラス150/0はレディング〜ベイジングストーク線に投入され、置き換えられたクラス165166はグレート・ウェスタン本線のロンドン近郊区間の混雑解消へ回った。

*注:GWRは2015年9月までファースト・グレート・ウェスタン(FGW)という名の元営業していて、塗装や名称は異なるものの同一会社である。

イングランド中部
導入当初からクラス150はバーミンガム近郊で活躍していて、セントラル・トレインズ(Central Trains)が近郊路線で運用していた。2007年にフランチャイズがロンドン・ミッドランド(LM)に移り変わり、同社は2010年にクラス150の置き換え用としてクラス172を発注。ほとんどの編成がより需要があるGWRとノーザン(NT)に転属したが、2連x3本だけクラス150/1が残り、現在はベドフォード〜ブレッチリー線で運用されている。

イングランド北部
現在NTにはクラス150/1が2連x30編成とクラス150/2が2連x28編成所属していて、様々な非電化のローカル列車の運用を担っている。2011年の後半にはクラス172の導入でLMから移ってきたクラス150が加わり、混雑解消に貢献している。

(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)

●ギャラリー


ATW所属のクラス150/2
(撮影:カーディフ中央駅, Cardiff Central Station)


旧ファースト・グレート・ウェスタン(FGW)塗装のクラス150/1。貫通扉がないのが特徴。
(撮影:ブリストル・パークウェイ駅, Bristol Parkway Station)


一時期クラス150/2の先頭車を組み込む3連で運用されるクラス150/1もいたが、現在ではクラス150/1は全て2連である。写真は旧FGWの編成。
(撮影:カーディフ中央〜ニューポート間、Cardiff Central - Newport Station)


FGWのクラス150/2。
(撮影:カーディフ中央駅, Cardiff Central Station)

FGWのクラス150/2の車内。
(撮影:イースト・クロイドン駅付近, East Croydon Station)

ノーザン・レイル(NT)標準塗装のクラス150/2。
(撮影:ヨーク駅、York Station)


同じくNTのクラス150/2だがこちらの編成はヨークシャーの観光名所をPRしたラッピングが施されている。
(撮影:ブラムリー駅、Bramley Station)


NT標準塗装のクラス150/1。
(撮影:ブラムリー駅、Bramley Station)


NT所属のクラス150/2の車内。


ロンドン・ミッドランド(LM)所属の旧セントラル・トレインズ塗装のクラス150/1。
(撮影:ドロイトィッチ・スパ駅、Droitwich Spa Station)


LM所属の旧セントラル・トレインズ塗装のクラス150/1。こちらはネットワーク・ウェスト・ミッドランズのラッピングが施されている。
(撮影:ウスター・シュラブ・ヒル駅, Worcester Shrub Hill Station)

ロンドン市内でシルバーリンクに運用されていたクラス150/1。これらはクラス172/0に置き換えられた。
(撮影:ゴスペル・オーク駅, Gospel Oak Station)

旧ノーザン・レイルのクラス150/1。塗装は旧ファースト・ノース・ウェスタン(First North Western)のもの。
(撮影:クルー駅、Crewe Station)


GWRの旧ウェセックス・トレインズのクラス150/2。
(撮影:バーンスタプル駅、Barnstaple Station)


旧ウェセックス・トレインズのクラス150/2の車内。


手前の編成は旧ノーザン・レイル所属の旧ファースト・ノース・ウェスタン塗装のクラス150/2。現在はNT標準塗装に更新されている。

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Know your sprinters: The Class 150 Series of DMUs
Class 150 BREL prototype Sprinters

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