クラス350 

British Rail Class 350 'Desiro'


クラス350のうち最初に製造されたクラス350/1。第三軌条直流750Vに対応しているため集電シューを取り付ける機器が台車に備わっている。
(撮影:バーミンガム・ニュー・ストリート駅、Birmingham New Street Station)

●基本データ

デビュー年 2005年
最高速度 クラス350/1, 350/3, 350/4: 175km/h
クラス350/2:160km/h
製造会社 シーメンス(Siemens)
運行会社 ロンドン・ミッドランド(London Midland, LM
トランスペナイン・エクスプレス(TransPennine Express, TPE
運行区間 西海岸本線緩行列車(LM)
●ロンドン・ユーストン(London Euston)〜バーミンガム・ニュー・ストリート(Birmingham New Street)
●ロンドン・ユーストン〜トリング(Tring)〜ミルトン・キーンズ(Milton Keynes)〜ノーサンプトン(Northampton)
●ロンドン・ユーストン〜クルー(Crewe)
●バーミンガム・ニュー・ストリート〜リバプール・ライム・ストリート(Liverpool Lime Street)
●ノーサンプトン(Northampton)〜
●ウルヴァーハンプトン(Wolverhampton)〜バーミンガム・ニュー・ストリート〜ウォルソール(Walsall)

西海岸本線北部快速列車(TPE):
●マンチェスター空港(Manchester Airport)〜マンチェスター・ピカデリー(Manchester Piccadilly)〜プレストン(Preston)〜エジンバラ・ウェイバリー(Edinburgh Waverley)、グラスゴー・セントラル(Glasgow Central)
編成詳細

クラス350/1 30本
クラス350/2 37本
クラス350/3 10本
クラス350/4 10本

全編成4連


●175km/h運転に対応した高速近郊型電車

 シーメンス製の車両で、クラス185気動車やクラス450電車を含むイギリス市場向けのデジロ・シリーズ。元々クラス350自体は発注されず、クラス450のオプションとして製造された車両が改称された。現在は西海岸本線の全域で快速・近郊列車を担当する。

クラス350の誕生、運用初期
 上記の通り同系列はイングランド南西とロンドン南西の路線網を管轄下に置くサウス・ウェスト・トレインズ(South West Trains)が発注したクラス450の5連x32本から派生した。この160両のうち40両はクラス450の4連x10編成でサウス・ウェスト・トレインズへ配属され、残りの120両は改造されクラス350の4連x30編成としてセントラル・トレインズ(Central Trains)とシルバーリンク(Silverlink)に配属された。これらの編成はクラス350/1と称され、イングランド南部での運用を考えて第三軌条直流750V対応となっていて、集電シューはないがそれを備え付けるための構造はある。

 セントラル・トレインズのクラス350/1はバーミンガムからノーサンプトン、そしてリヴァプールなどイギリス中部の地方都市間輸送に運用され、クラス170を置き換えた。同時期にシルバーリンクも西海岸本線を経由してロンドンとミルトン・キーンズ、ノーサンプトン間の快速列車に充当した。当時は運行会社の変更が間近に迫っていたので、列車の塗装は会社のロゴが入っていない灰色と紺のツートンカラーになっていた。中間車の一部に一等車が設けられていて、2+2列配置の固定式クロスシートとなっている。

 2007年にはセントラル・トレインズとシルバーリンクの運行地域が統合されたフランチャイズをロンドン・ミッドランド(LM)が運行することになり、全ての編成が同社に転属した。以前と同じ路線を走っていたが、ロンドンを起点とする西海岸本線の緩行列車をクルーまで北に延伸。2008年には輸送力増強とクラス321の置き換えのため、LMが追加の編成を発注した。4連x37本が製造され、これらはクラス350/2となる。350/1との主な変更点を挙げると350/2は通勤型車両の色が強く、着席率を重視して普通車は2+2列から2+3列配置に変更、更に座席背面の折りたたみ式テーブルも撤去された。350/2は架線式交流25kV専用となっており、第三軌条区間では運行できないようになった。全編成は2006年から使用開始されたノーサンプトンのキングズ・ヒース車両基地(Kings Heath Depot)に所属しており、メンテナンスはシーメンスが行っている。2008から2009年の間にサザン(Southern)が導入予定だったクラス377/5の製造が遅れたため、クラス350/1の一部編成が同社にリースされ、集電シューを取り付け第三軌条区間を走行したこともあった。

更なる派生型、最高速度引き上げ
 2012年にクラス350/1の最高速度を160km/hから175km/hに引き上げる計画が持ち上がった。これは200km/h運行を行うクラス390221の妨げになる事なく西海岸本線の快速線を走らせる事により、所要時間の短縮と高密度ダイヤを実現させるのが目的だった。同年から試験走行を始め、12月から正式に175km/h運転を開始した。2013年にはニュートン・ル・ウィローズ経由でリヴァプールとマンチェスターを結ぶ路線の東部区間の電化が完了し、4連x10本がトランスペナイン・エクスプレス(TPE)用に追加発注された。これらはクラス350/4と称され2013年12月からマンチェスター空港〜スコットランド路線に投入され、余剰になったクラス185を他の路線に回す事でイギリス北部の輸送力増強につながった。同時期にLM用に4連x10本が追加され、クラス350/3として2014年に既存のクラス350を補完する形で導入された。クラス350/3と350/4は製造当初から175km/h運転に対応している。

クラス350の仕様
 編成構成は2M2T(Mc-T-T-Mc)。クラス350/1はイングランド南部の第三軌条ネットワークでの運用を考えて直流750Vに対応。集電シューはないがそれを備え付けるための構造は残されている。クラス350/2の信頼性は非常に高く、鉄道業界によって2011年には最も故障率の低い電車として表彰された功績がある。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


トランスペナイン・エクスプレス(TPE)所属のクラス350/4。西海岸本線北部を経由してマンチェスターとエジンバラ、グラスゴーを結ぶ。
(撮影:パトリクロフト駅、Patricroft Station)


通勤型車両の色が濃いクラス350/2。350/1とは塗装が若干異なり、貫通扉が部分的に黒く塗ってある。
(撮影:サウス・ケントン駅付近、South Kenton Station)


クラス350/2の普通席。定員を増やすために2+3列配置となっている。


クラス350/1と350/3の一等席。


西海岸本線の快速線を走行するクラス350/1。2012年から175km/h運転に対応した。
(撮影:サウス・ケントン駅、South Kenton Station)


輸送力増強用に増備されたクラス350/3(手前)。
(撮影:ロンドン・ユーストン駅)


ラッシュ時には3編成併結して12連の列車を運行する。写真の編成は全てクラス350/2。
(撮影:サウス・ケントン駅付近、South Kenton Station)


旧シルバーリンクに所属していた時のクラス350/1。運行会社の変更が間近だったため同社の塗装は施されなかった。
(撮影:サウス・ケントン駅付近、South Kenton Station)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Desiro fleet upgraded for higher speed operation
Southern Electric Group: London Midland Desiros in service with Southern
Wikipedia: British Rail Class 350

↑ PAGE TOP