クラス387「エレクトロスター」 

British Rail Class 387 'Electrostar'


テムズリンク線の快速列車を担当するクラス387/1。
(撮影:クリックルウッド駅、Cricklewood Station)

●基本データ

デビュー年 2014年
最高速度 175km/h
製造会社 ボンバルディア・トランスポテーション(Bombardier Transportation)
運行会社 テムズリンク(Thameslink, TL
サザン(Southern, SN)
運行区間 テムズリンク線(Thameslink, TL)
●ブライトン(Brighton)〜スリー・ブリッジズ(Three Bridges)〜ロンドン・ブラックフライアーズ(London Blackfriars)〜ベドフォード(Bedford)
●ブライトン〜ロンドン・ブリッジ(London Bridge)

ガトウィック・エクスプレス(Gatwick Express, SN)
●ロンドン・ヴィクトリア(London Victoria)〜ガトウィック空港(Gatwick Express)
編成詳細

クラス387/1 29本
クラス387/2 27本 (製造中)
クラス387/3 8本 (製造予定)

全編成4連


●クラス700の穴埋め用に製造されたエレクトロスターの最終形式

 クラス387はボンバルディアの交通部門が製造している電車、通称「エレクトロスター」の最終形式。エレクトロスターには初代のクラス357の他、ベースとなったクラス379等様々な派生型が存在し、ここ数十年では最も多く製造された車両シリーズでもある。集電方法は架線式交流25kVと第三軌条直流750Vの両電源に対応している。

発注予定のなかった車両
 ロンドンを縦貫し南北の地方都市を結ぶテムズリンク線は近年増大する利用客数に対応するために大幅なインフラ整備と共に新型車両の導入が計画された。当初は2009年に車両を発注、2012年の導入予定だったが、2010年の総選挙により契約裁定が遅れた。ボンバルディア、アルストム、そしてシーメンスの三社が新型車両製造の契約のために入札したが、イギリス交通省は2011年にシーメンスを選択。しかし車両の製造は全てドイツのクレフェルト工場(Krefeld)で行われる予定で、国内に製造工場を持つボンバルディアを選択しなかった事にイギリス交通省に非難が殺到。これによりイギリス政府の入札の評価方法の見直しに繋がり、シーメンスとの契約完結が大幅にずれ込み、結局2013年6月に行われた。実に4年ほどの遅れである。

 シーメンスが新造するクラス700はテムズリンクの主力だったクラス319の置き換えとして想定された。余剰になったクラス319はノーザンに転属し、電化完了が間近だったイングランド北部のマンチェスター・ヴィクトリア〜リバプール・ライム・ストリート間(ニュートン・ル・ウィローズ経由)の運用に入る予定であったが、クラス700の導入が2016年まで遅れるためそれまでの穴埋め用の車両が必要となった。比較的短期間で営業運転に投入できる車両が必要だったため、エレクトロスターの実績があるボンバルディアからクラス387/1を2012年12月に4連x29本発注した。ボンバルディアはこれからエレクトロスターの後継である「アヴェントラ(Aventra)」という新規格電車の製造に切り替わるため、クラス387は同シリーズの最終形式となった。

運用と動向
 クラス387は全編成がボンバルディアのダービー工場で製造され、クラス387/1が2014年11月から営業運転を始め、徐々にクラス319を置き換えていった。2015年6月に全編成の導入が完了し、テムズリンク線の快速列車に充当されている。現在のテムズリンク線でのクラス319の運用はサットン環状線の各駅停車運用やケント州へ直通する列車のみとなっている。クラス387/1の発注時に同形式の140両の追加オプションがあり、そのうち108両を使用してクラス387/2が4連x27本発注された。

 クラス387/2はガトウィック・エクスプレス運用を想定したのもので、2016年2月から西海岸本線で試験運行が行われた後テムズリンク線で一時期先行運用された。同年2月29日よりガトウィック・エクスプレス運用でデビューし、6月までにはクラス442を置き換える予定である。テムズリンクの387/1に小規模改造が行われているため、387/2が現在3編成テムズリンクに運用されている。

 クラス700が2016年6月頃にテムズリンク線に導入されたらクラス387/1はファースト・グレート・ウェスタンに転属し既存の電化区間であるロンドン〜ヘイズ・アンド・ハーリングトン間の近郊電車として導入され、クラス165166を置き換える予定だ。更に上記のクラス387/1発注時の追加オプションの残り32両を行使し、クラス387/3と呼ばれる4連x8本が更にグレート・ウェスタン本線に導入される予定である。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


第三軌条区間では通常タルス・ヒルを経由しないがロンドン・ブリッジでの工事期間中はこちらのルートを通る。
(撮影:タルス・ヒル駅、Tulse Hill Station)


クラス387/1の普通席。2+2列配置で優先席は座席の模様が異なる。


一等席の様子。こちらも2+2列配置。


車イス用スペース。

車イス対応トイレ。


ガトウィック・エクスプレスの運用に就いたクラス387/2。12両編成のワンマン運転の導入で労働組合と揉めている。
(撮影:くらっぱむ・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


ガトウィック・エクスプレスに導入される前に架線電化区間で走行試験を行うクラス387/2。
(撮影:サウス・ケントン駅、South Kenton Station)


テムズリンクに貸し出されているクラス387/2。ガトウィック・エクスプレスのロゴが側面に貼られていない。
(撮影:クリックルウッド駅、Cricklewood Station)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Class 387.co.uk
First Gatwick Express Class 387-2 to enter service by end of month
Wikipedia: British Rail Class 387

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