クラス395「ジャベリン」 

British Rail Class 395 'Javelin'


セント・パンクラス駅のサウスイースタン高速線専用ホームに停車中のクラス395。左隣にはユーロスターの専用ホームがある。
(撮影:ロンドン・セント・パンクラス駅、London St Pancras Station)

●基本データ

デビュー年 2009年
最高速度 高速線:225km/h
在来線:160km/h
製造会社 日立車両製作所
運行会社 サウスイースタン(Southeastern, SE
運行区間 HS1(High Speed 1)
ロンドン・セント・パンクラス(London St Pancras)〜エブスフリート(Ebbsfleet)〜チャタム(Chatham)〜ファヴァーシャム(Faversham)
ロンドン・セント・パンクラス〜エブスフリート〜ファヴァーシャム〜ラムスゲート(Ramsgate)〜ドーバー・プライオリー(Dover Priory)〜アッシュフォード・インターナショナル(Ashford Intenational)〜エブスフリート〜ロンドン・セント・パンクラス(時計回り、反時計回り)
ロンドン・セント・パンクラス〜エブスフリート〜アッシュフォード・インターナショナル〜カンタベリー・ウェスト(Canterbury West)〜マーゲート(Margate)

青字は高速線区間、黒字は在来線区間
編成詳細

クラス395 6連x29本


●日立が製造した欧州向け高速車両

 日立製作所が製造したイギリス向け高速車両。ロンドンとイギリス南東に位置するケント州の都市を高速新線「High Speed 1(以下HS1)」を使って結び、アクセス向上と同時に高速化を目的とし導入された。

試験走行で固い信頼を得たクラス395
 イギリス国内初の高速線であるHS1は当初CTRL(Channel Tunnel Rail Link)と呼ばれ、2003年9月に部分開業した。同年12月にはHS1経由で国内列車を運行する許可が英運輸省から降り、そのための車両製造の入札を行った。2004年10月に日立車両製作所に契約が授与され、当初はクラス395が6連x28編成、後に1編成追加され計6連x29本が発注された。2007年11月にはHS1が全線開業を達成し、ロンドン・セント・パンクラスから高速線を経由してケント州の都市を結ぶ列車として使用される計画だった。

 車両製造は山口県下松市の笠戸事業所で行われ、初編成が2007年8月にサウスハンプトン港に届いた。試験走行や保安装置の試験運用をフランス国鉄(SNCF)の援助の元行われ、2008年1月には240km/hを記録した。通常イギリス」に導入予定の新型車両は4000マイル(約6400km)を車両不良なしで走行しなければならないが、クラス395はこの目標を予定より6ヶ月前倒しで達成した事でより入念な試験走行が可能となった。2009年には全編成をSEが受領し、同年12月からクラス395が通常運用に入った。

ロンドン五輪での活躍と現在の運用
 クラス395は運用の最初の一ヶ月で99%の定刻率を達成し、国内高速列車は乗客に好評を博した。一方高速線を走るためその分の運賃値上げ、セント・パンクラスを起点と故のロンドン南部へのアクセスの不便さ、高速列車をダイヤに組み込むための在来線列車の所要時間増加などに不満を寄せる乗客もいた。HS1は2012年のロンドン五輪の本会場であるストラットフォードを経由するため、五輪開催期間中はクラス395がロンドン・セント・パンクラスとストラットフォード・インターナショナル(Stratford International)間の会場アクセス用シャトル列車として運用された。この高速シャトル列車「ジャベリン(Javelin, 投げ槍の意)」と名付けられ、現在でも同系列の愛称として使われている。

 国内高速列車の運行形態はロンドン・セント・パンクラスを起点としてHS1を走行し、ストラットフォード・インターナショナルに停車。その後エブスフリートかアッシュフォード・インターナショナルで在来線に降りて目的地に向かうというもので、毎時4本から6本運行されている。HS1は架線式交流25kVを使用していて最高営業速度は225km/hだが、在来線では第三軌条直流750Vに電源が変わるので160km/hに抑えられている。

クラス395の仕様
 同系列にはダブルスキン構造のアルミ合金等の日立Aトレインシリーズの技術が取り込まれている。その他にも400系新幹線を元に設計されたボギー台車や新幹線全般に使用されている一枚扉のドアもデザインに取り組まれていて、輸出用の新幹線という色が強い。6両編成は2M1T構成(Tc-M-M-M-M-Tc)。
 
 保安装置はETCS(European Train Control System, ヨーロッパ列車制御システム)、TVM430(HS1やフランスの高速線であるLGVで使用されているもの)、TPWS(Train Protection and Warning System, 在来線標準の列車防護装置)とKVB(セント・パンクラス駅構内専用のもの)の4種類が搭載されている。乗客の昇降時の混雑を解消するためにドアが新幹線のように車端ではなく、近郊型列車のように車体の中央寄りに設置されている。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


HS1を走行するクラス395。6連の固定編成で運用されるが、ラッシュ時には併結運用もされる。
(撮影:レイナム駅付近、Rainham Station)


2011年7月から車椅子用のスペースが編成のどちら側にあるのか容易に判別できるように黄色いマーカーが先頭車につけられた。
(撮影:レイナム駅付近、Rainham Station)


クラス395の車内。一等車はなく、6両全てが普通車となっている。配置は2+2列の固定クロスシート。


デッキ部分と車内の仕切りはなく、近郊型の列車のようになっている。

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Kent Rail: Class 395 Javelin
Hitachi Rail Europe: Class 395 (Javelin)
日立評論2010年2月号「英国High Speed 1向け高速車両Class395の開発とメンテナンスサービス」

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