第100回 国産新技術・光触媒って何だ!?

担当:裏辺金好

○物づくり大国・日本を救うか!?

 まずは、ついに雑学万歳は100回を迎えました。
 これからも、単なる小ネタではなく、解りやすく、詳しくをモットーとした雑学を皆さんに提供できればと思います。

 さて、今回御紹介するのは「光触媒」という国産の新技術。もう既に実用化され、だんだんと意外なところで使われていますが、何とも便利な技術で世界中から注目を受ける一方、既に世界各国で時刻のタイプの技術を世界標準にしょうと躍起になっています。さて、いったいどんなものなのでしょうか!?

○光触媒とは?
光触媒を利用した建材を使用する丸ビル。

 一番簡単な光触媒は、植物が良く行う光合成です。太陽光を葉緑素に当てることで、二酸化炭素と水を反応させて、デンプンと酸素にすることです。触媒とは、この場合葉緑素のことを指します。触媒と言えば、中学校の頃に豚の肝臓だとか、二酸化マンガンだとかを試験管の中に入れて、色々な反応を見たの、覚えているでしょうか?そして、水素の音が試験管からポン!です。

 話がそれましたが、とにかく光合成では光と触媒さえあれば、どんどん反応が行われるのが特徴。で、今回御紹介する光触媒技術では、葉緑素ではなく二酸化チタンを触媒に使用します。これを使うと、(仕組みは後回しにして)どんな効果が起こるのでしょうか?

 まず有害物質である排気ガス(NOx、SOx)など、シックハウス症候群の要因であるホルムアルデヒドや、タバコのにおいの成分であるアセトアルデヒド、ダイオキシン、その他アンモニア臭など、身の周りの空気の汚れとなる成分を分解し、除去します。

 さらに空気だけではありません。二酸化チタンは親水性が高く、つまり水となじみやすく、あらかじめ建物の外装・内装の壁にコーティングしておくと、建物に吸着した汚れを浮き上がらせて分解、分解されたモノは、水をかけたり、雨に当たるだけで水と一緒に流れて除去してくれます。もちろん、付着したタバコの臭い・ヤニなんかも除去。家の中で応用するとこれは便利です。要は、有機物は全て分解するわけです。結果、建物は殆ど汚れることはなく、従来のように車の排気ガスなどで黒ずんだりしなくなります。

 つまり、光触媒加工をした建材や空気清浄機を使えば、従来より大幅に身の回りの汚れを取ってくれ、と言うより防ぐことが可能です。
 
 さらに、勝手に反応が起こるので、一々面倒を見てやる必要もなく、大幅なメンテナンスコストの削減が可能です。さらに、どんな用途にも使用可能。大きなビルの建材から、小さな看板まで。ちなみに、東京では丸ビルが、その建材を使用しております。

 また、有機物を分解するため、バイ菌や雑菌も分解してくれます。そのため、家電製品など、身近で使う製品にも応用されています。

 まとめておきますと、
 1.大気浄化 空気中のNOxやSOx、ホルムアルデヒドなどのシックハウスの原因となる有害物質を除去。
 2.脱臭 アセトアルデヒド、アンモニア、硫化水素などの悪臭を吸着し分解。
 3.浄水 水中に解けている汚染物質のテトラクロロエチレンやトリクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物を分解、除去。
 4.抗菌 抗菌、殺菌を行う。
 6.防汚 親水すると、外壁や床面の汚れにくっついて、雨と一緒に流れ、つまり汚れを防ぐ。

 これまで、空気を清浄したり、汚れを取ったり・・・と言うためには、そのために多くのエネルギーを使わなればならず、当然CO2も発生し環境に悪く、お金も多くかかりました。その問題を解決するのが、この技術です。ダイオキシンまで除去しますからね。これは画期的ですよ。

 建物の内外装、掃除機、空気清浄機、下着、観葉植物、和紙、カーテン、ブラインド、さらに東京大学教授の橋本和仁氏による都市のヒートアイランド改称プロジェクトなど、様々なモノに役立てられ始めています。

○原理紹介

@紫外線を当てる

  光触媒(二酸化チタン)に光(紫外線)が当たると、その表面から電子が飛び出します。
 このとき、電子が抜け出た穴は正孔(ホール)と呼ばれており、プラスの電荷を帯びています。

AOHラジカルの出現

  正孔は強い酸化力をもち、水中にあるOH-(水酸化物イオン)などから電子を奪います。
 このとき、電子を奪われたOH−は非常に不安定な状態のOHラジカルになります。


B有機物をバラバラに!

 OHラジカルは強力な酸化力を持つために近くの有機物から電子を奪い、自分自身が安定になろうとします。
 この様にして電子を奪われた有機物は結合を分され、最終的には二酸化炭素や水なり大気中に発散していきます。
(株)光触媒研究所より抜粋 http://www.photocatalyst.co.jp/

○世界普及に向けての問題点

 この技術は、およそ35年前に日本人が原理を発見し、独自に開発を進めてきた技術です(ノーベル賞とるだろうね)。
 今まで見てきたように、メンテナンスフリーが最大の特徴であるこの技術は、世界各国からの注目を集め、近い将来には1兆円市場になると言われています。当然、日本企業が中心となって技術開発を行っているので、大儲けになり、久々の大ヒット商品になり、もの作り大国日本の復権が実現する技術です。

 ところが、そんな美味しい話を世界が黙っておくはずがありません。
 アジアで、ヨーロッパで、そしてアメリカで、この技術の研究が進み、それぞれが自分たちの方式が世界の標準となるように売り込みをかけています。

 世界標準と言っても、私たちにはイマイチ、ピンと来ないと思います。
 ところが、こうした多くの技術というのは、例えばCDに代表されるように企画が世界で1つに統一されるか、もしくは数種類程度になるのが非常に多いのです。例えば、携帯電話。auはCDMA方式を使っていますが、これはアメリカ発の技術です。もちろん、日本の携帯電話技術は世界トップで、CDMA方式よりも優れた音質を誇りました。ところが、何ら世界標準に向けた努力、言い換えれば同じ技術を使ってもらう仲間を作らなかったために、孤立してしまっています。詳しく調べていないので違っていたら申し訳ないですが、ドコモの方式だけが、世界の中で我が道を行っているはずです(ちなみに、CDMA方式の他に、ヨーロッパで広く使われている方式もあります)。

 世界で使ってもらわないと、市場は広がりません。今まで、そうした努力を怠ってきたために、CDなど一部を除けば敗北を喫しています。
 そこで今度ばかりは、と経済産業省のバックアップで、現在日本方式の光触媒が普及するよう、各国に働きかけているところです。具体的にどうするかですが、代表例としては、技術を供与することです。これが一番手っ取り早い。

 先日、JR東海の社長が、台湾には新幹線技術をやったが、中国には絶対にやらないと発言し、中国に新幹線を売り込もうとする国土交通省・鉄道メーカーなどを困らせています。こういう態度をとられると、今に世界中をフランスのTGVや、ドイツのICEが走ることになってしまい、(んなことはないと思いますが)もし世界全土で鉄道を1つにしようという話になったときに、日本の新幹線が追い出される・・・なんてことも? まあ、新幹線を例に出しましたが、これからはただ技術を開発するだけでなく、それを如何にして売り込み、使って貰えるかも大切になっているのです。


参考HP
光触媒製品フォーラム http://www.photocatalyst.gr.jp/
東京磁気印刷 http://www.tmp.co.jp/mjpro01/pro00600.htm
多木化学 http://www.takichem.co.jp/kenkai/tainoc.htm
立川ブラインド http://www.blind.co.jp/products/silky/index.html
(株)光触媒研究所より抜粋 http://www.photocatalyst.co.jp/
光触媒オープンラボ http://home.ksp.or.jp/kast/kyodo/olabo/index.html
NHK クローズアップ現代 7月16日(水)放送

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