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第30回 交通機関の未来

担当:裏辺金好

1.はじめに
 現在、我が国の国土を我が物顔で自動車が走り回っている。また富山県に至っては、1家に2台も自家用車があるという。自動車は我々の生活にとって欠かせない存在に近くなっており、田舎においては200メートル先であっても自動車を使う人がいる。もはや、自転車と同じような感覚となっているようである。

 確かに、自動車は大変便利である。まず第1に速い。第2に夏はクーラーで涼しい、冬は暖房で暖かい。第3に自動車の中は自分の部屋・空間となっているため、親近感のようなものがあり、愛着がわく。第4に、ある程度多い荷物が運べる。第五に出発時間が自分の好きにできる(ただし、到着時刻を先方から決められていると好きにはできない。8:30までに出社とか。まあ、当たり前か)。

 と、このように便利な自動車ではあるが、反面非常に危険なものであることは誰もが知っていることであろう。
 しかも、これからは特に歩行者にとって自動車はさらに危険なものになることが予想される。なぜならば近年、携帯電話などをかけながら前方後方左右を見てなく危なっかしい運転をしている人が多いのである。さらに、今後の高齢者ドライバーの増加である。特に痴呆のお年寄りが運転をした場合の危険性は言わずとも解るだろう。

 そこで極力、自動車がなくても生活可能だよ!という社会を作っていくことが大切であり、またそれは地球環境問題の改善にもつながる。そのような理由でこれから交通政策に対する行政の問題点について、そしてこれからの交通を担うであろう乗り物について考えたい。

2.新世紀を担う交通の主役達
 次に、各地に登場し始めた新しいタイプの交通機関・乗り物について述べたいと思う。いわゆる一昔前の人がSF漫画で夢見た都市の図のうち、交通機関に関してはだいぶ近づいてきた感がある。中にはそれとは全く違った意味での進化もあり、なかなか面白い様相もみせている。

a.ガイドウェイバスシステム
 最も予期しなかった進化がこれであろう。名古屋市に登場した、バスと新交通システム(後述)のハーフである。簡単に言ってしまえば、バス専用道路を自動で走ることである。ガイドウェイバスの最大の利点は、ガイドウェイ区間(高架になっている)以外は普通のバスとして運行できるという点である。

 そのため、渋滞がひどく、バスの定時運行がしづらい区間のみガイドウェイを建設すればよく、柔軟性が高い。また、高架橋の幅もバス車体の幅より少し広い程度でよく、土地をあまり取らず、建設費も地下鉄の5分の1である。さらに既存のバスにもガイドと同じように、案内輪と呼ばれる車輪(ガイドウェイ区間はこれが横に突き出て回転することで運転)などを装備すればガイドウェイバスになるわけである。

 問題は1つ。平均時速が20〜30qと遅いことである。これ以上速くできるかどうか、資料不足のため私は知りません。写真は小幡緑地駅にて k-tomomi♂さん撮影。

 
b.ノンステップバス

(写真:京王バス JR中央線 国立駅前)
 バス業界のニューホープ的な存在がこれである。ニューといっても登場はもう7年近く前で、地域を問わずかなり普及してきたので詳しい説明はいいだろう。都会のみならず、近年は地方でも多く登場している。そんなある日、某地方にて(というか、山口県)、ノンステップバスに乗ってきた女子高校生Aは言った。
「ノンステップバス初乗り!! これって知ってる?バリアフリーの一環として登場してさぁー、見てー、床が歩道と同じ高さでしょ」
「ふーん、あっそう・・」
 隣にいた友人らしき女子高校生Bはあきれていた。しかし、概して老人を中心に市民からの注目度は高いようである。なお、私も先ほどの女子高校生と同じ台詞を友人の男子に言った。が、反応は・・・Bと同じであった。

 ノンステップバスの問題点は1つ。タイヤの上にある席が床と比べて高くなってしまうことである。しかし、これはどうにもなるまいて・・。なお、地域によっては敢えてワンステップバスを導入しているところもある。それでも従来のバスよりは床と地面の差が小さい。

c.新交通システム
 基本的にはガイドウェイバスと同じであるが、日本においてはこちらが先輩であり、車体はれっきとした鉄道車両である。ゆえに、道路への進入はできない。そのかわりX両編成単位で運行できるためお客の収容力は大きい。

 代表例としては東京の「ゆりかもめ」(写真)、広島の「アストラムライン」がある。なお、モノレールとは別物である。
 問題は2つ。いつまで「新」交通システムと名乗れるかだ。
 また、当然のことながら建設費が高い。

 特にアストラムラインは乗客が伸び悩み厳しい経営が続いている。

d.路面電車(LRT/LRV)
 
(写真 広島電鉄5000形グリーンムーバー)

(写真:広島港と広島電鉄電停 左にはバス停も直結)
 
最近では単車の超低床車両も登場。
(写真:伊予鉄道/撮影:武蔵野通信局)
 
(写真:長崎電気軌道 3000形)
 ずいぶんこの言葉も定着しはじめたとはいえ、なぜ、これが新時代の交通か疑問に思われる方も多いと思う。LRTとは、ライト・レール・トランジットの略。ヨーロッパで新生した路面電車のことで軽快電車という訳が当てはまる。

 その名の通り、あの、無骨そうな電車から路面電車が一新。町中を駆け回るおしゃれな電車になっているのだ。広島電鉄の新型車両を思い起こしてくれたらいいと思う。ただし、ヨーロッパで新生した路面電車は地下にも路線を持ち、さらに高速で運転する点が日本と大きく違う。

 また、鉄道やバスとも緊密な連携を持ち、乗り換えがスムーズに出来るよう様々な工夫が。少なくとも、停留所まで横断歩道を渡って・・・のような面倒がないよう、直結するなどの工夫がされている。

 さらにパーク・アンド・ライドといって、中心市街地への車の乗り入れを禁止。車は郊外の大駐車場に止めてもらい、中心へは、LRTとバスを利用してもらう、という施策を出している。日本でも岡山市などで実験が行われているので体験された方もいるだろう。

 もう1つ、路面電車再生の鍵がLRV(超低床車両)である。広島と熊本を皮切りに、高岡、岐阜(廃止寸前)、岡山、松山、高知、長崎、鹿児島にも登場した、いわばノンステップバス利点を路面電車に応用した物である。行政の補助もあってか、いよいよ大半の路面電車に登場するようになっている。

 ところで、路面電車の代名詞的存在ともいえる広島電鉄がなぜ生き残ったかというと、これはいつものパターンとは逆に、行政側の大英断があったからである。各地の路面電車が廃止される中、広島県警はヨーロッパに交通事情を研究しに行き、中規模都市で路面電車が元気なことを確認。広島には路面電車が1番との結論を出し、さらに広島県公安委員会が軌道内への車の乗り入れを再禁止し、滅亡寸前だった路面電車を救い、路面電車王国を誕生させたのである。

 現在、平和大通りに路面電車新線を建設する予定だが、どうも秋葉市長の態度がはっきりしない。白紙に戻して検討するなど云々かんぬん・・・。財政難で、広島市民球場の建設もままならない以上仕方のないことかも知れないが、それにしては市内の高速道路が沢山出来たのが気になりますな。

 とは言え、最近では新しく改築した広島港と広島電鉄の電停を完全に直結させる、JR横川駅改築に合わせ、離れていた広島電鉄の電停を、JRの改札口前まで直結するなど、実に乗り換えが便利な施策を実行。これは凄く評価できること。

 一方で、岐阜市の路面電車(名古屋鉄道 運営)は廃止が決定。
 元々岐阜市では、マイカーの普及に伴い、将来的には路面電車全廃を狙ってきていただけに、事実上、市内区間には電停が無い、軌道内には自動車が乗り入れてOK、乗客数の多く見込める岐阜市役所や岐阜城方面の路線を廃止など、名古屋鉄道に対し様々な圧力と包囲網をかけていたため、ついに名古屋鉄道側が根を上げた次第。

 排気ガスにまみれた、素晴らしい街作りがいっそう進むことでしょう。

 その一方で、富山県富山市では乗客減に悩むJR富山港線をLRT化する工事が進められており、完成すると軽快な電車が本数も増やし、停留所も増え、市内を走ることになります。将来的には、既存の路面電車である富山地方鉄道市内線と直通することも考えられているそうだが、むしろこれを早く進めるべき。ただ、方や富山駅北側、方や富山駅南側を走るため、JR富山駅が高架化されないとダメなのだとか。

e.電車式貨物列車(特急コンテナ電車)

(写真:山陽本線:広島〜横川)

(写真:尾久機関区)

(写真:中央本線 日野〜豊田)
 日本は世界でも有数の、もしかしたら世界一の鉄道王国であるが、同時に旅客数に比べて貨物のトン数が少ないのも珍しいのである。他国においては、乗客より遙かに貨物の方が多い国が多い。なぜ、日本は特殊になってしまったかというと、う〜む、なぜなんでしょうねえ・・。確実にいえることは、当時の国鉄が不甲斐なかったこと。それから、高速道路が張り巡らされ、トラック1本で運んだ方が貨物列車で運ぶより遙かに速くなってしまったことであろう。

 そう、貨物列車は遅い!首都圏、関西圏においては通勤電車よりも遅いため、ダイヤ作成上の邪魔者扱いになっているのである。これでは高速道路に対抗できるはずがない。現在、JR貨物は国鉄時代からの車両を新型へ、急速に置き換えているが、全てを置き換えるまでには相当の時間を要する見込みである。

 ところで、ある時、荷物運送会社からこんな声が出た。
「東海道線で、新幹線開通前の特急こだま号くらいのスピードがでるなら、JR貨物を利用してもいいですよ」

 裏をかえせば、今の貨物列車は40年前のこだま号(在来線の特急だよ!)より遅いわけである。しかし、それなら実現可能ではないか。電車の中に貨物を詰め込んでしまえばいいじゃないか。ただし、重量の問題があるからそこの検討を始めようとなったようである。これがもし実現すれば、長距離トラックの全廃も夢ではない。いわゆる○○本線に電車式貨物列車を走らせて、拠点駅から各ご家庭・施設などに荷物を小型トラックで運べばよいのだ。二酸化炭素、窒素酸化物などの削減に大きく貢献するだろう。

 なお、最初にこの原稿を書いてから色々と面白い動きが出たので補足。東京都の排気ガス規制、大型トラックの90q/h規制などにより、長距離トラック輸送も不便になってきた。そのため、JR貨物に輸送を任せる会社が続々と登場している。また、この電気式貨物列車も特急コンテナ電車・スーパーレールカーゴとして登場。最高時速は何と130km/h。東京〜大阪が5時間台。現在は佐川急便が試験的に利用している。量産が待ち遠しい。

 また、新幹線を使う例も登場。西濃運輸では、2003年5月6日から、東京都23区内と周辺市〜大阪市内と周辺市を対象エリアに利用者から当日出荷された貨物を拠点に集約の上、JR東海の「のぞみ」「ひかり」に載せて輸送。到着地の集約拠点を経由してサービス対象地域の届け先に、バイク便で当日中に配達。新幹線内では、専用のジュラルミンケースに入れて施錠することでセキュリティーを確保。新幹線の15号車にあるスペース(ジュラルミンケース12個収容可能)を利用とのこと。


 問題は1つ。高速道路の場合、一部区間が不通になっても一般道路という迂回ルートがあるが、鉄道の場合、そこまでうまくはいかないことである。

 

3.行政の交通政策失敗
 今を去ること約30年前、自動車が爆発的な増加を始めた。道路はいつも渋滞で、大気汚染もひどいものであった。しかしながら新しい物好きの日本人は、自動車こそがモダンな乗り物だと考えるようになり、特に行政側の人たちにその考えの熱烈な信奉者が多かった。ここでまず初めの行政大失策がおきたのであった。路面電車の廃止である。

 路面電車。これは今でもいくつかの都市でその姿を見かけることができるが、その総キロ数は最盛期の1480qに対し現在は236qと約6分の1。30年前に、ぼろい、おそい、ダサイの3拍子で車の邪魔だという声に行政がしっかり答えすぎたための結果である。当時、ほとんどの路面電車は元気であった。つまり、なんだかんだと愛されていたのであったが、それを廃止に追い込むために行政は汚い手を使った。路面電車の軌道内への車の進入を許可したのである。これにより,定時運転が売り物の路面電車が見事使い物にならなくなり、廃止に追い込まれていったのである。結果、道路は広くなったものの、車がさらに増えたため、渋滞という状態の改善にはつながらず、しかも代替交通機関が無いという状況に陥ってしまった。後の祭りである。

 苦肉の策として行政は地下鉄の建設を開始。
 もしくは仙台市のように、最初から地下鉄の方が格好良いとし、あらかじめ路面電車を廃止し、作り始めた例もある。

 しかしこれは巨額の建設費がかかり、さらに莫大な運営費が必要なため大都市でしか運営できず(しかも大都市でも札幌や仙台は赤字)、こまめな駅も造れない、路上から気軽に乗れない(地下への移動が必要)と問題だらけ。地下鉄のメリットとしては路面電車より速く、お客の収容力が多いなどがあり、不必要というわけではないが、それにしても路面電車廃止のツケは高くつき、中規模都市では市街地の公共交通がバスしかなくなり、いやでも車を持たなくてはいけなくなるような状況になった。

4.現在の行政と公共交通
 さて現在。路面電車については後で考えるとして、さすがにこれに教訓を得た行政はここまでの愚行はしていない。国土交通省もいろいろと公共交通に対する支援制度をもうけている。しかし、なるべく公共交通を利用しましょう、とか郊外への大型店の進出は問題だとか言っておきながら、当の行政自身の施設が交通の便の悪いところへ、土地が安いからといった理由で移転しているのである。

 これでは、どうかみなさん車を持ってくださいと言わんばかりである。また、大赤字にもかかわらず未だに無意味な高速道路を建設し続け、JRの路線を廃止に追い込んだり、列車本数の削減に追い込ませたりして、自動車を持っていない人が生活できないような環境をせっせと作っているのである。不器用な私は事故を起こすのが怖いから車は持ちたくないが、しかし現在のこの状況下では持たざるを得ない。

 市民側でも、既に車社会にドップリ浸かっている人間にはJRや私鉄が廃止になろうが関係なく、むしろ高速道路が出来る方を望んでいるのだから、どうしようもない。

 一方で、整備新幹線には行政はご執心の様子である。九州新幹線と北陸新幹線の富山−東京間は黒字も可能かもしれないが、他の区間の場合は並行在来線をJRから分離してまで(その区間は第3セクターが経営するが当然運賃が高くなる。経営の苦しい部分を任される上、JRのほかの区間との通し運賃が不可能となるからだ)巨額の費用をかけて建設する必要性が何処にもない。

 しかもまた、新幹線駅の配置が摩訶不思議で、すでに開業している長野(北陸)新幹線の安中榛名駅のように(群馬)県に配慮して、ステータスシンボルとして、付近に何も無いのに採算無視で造ったり(新岩国駅もこれに近い)、そこまで酷くはないにしても、東北新幹線の新青森駅(予定)のように市街地から遠く離れている場合がある。いや、まだ新青森駅は在来線と接続するが、九州新幹線の新大牟田駅(仮称)などは接続する路線が無い予定。

 また、新幹線は停車駅を絞って、スピードアップを図ったという面もあるのに既存新幹線に対する新駅誘致の、行政や商工会議所からのラブ・コールも凄まじい。特急列車に各駅停車の看板をつけて走らせましょうかとJRが怒ったという笑い話もあるぐらいである。ただし、この話の場合はJRと行政の思惑が一致したら、JRはタダで新駅を造ってもらえることもあるので、あまりJRも怒ってはいけないのである。と、余談。

 しかし、このように行政は経営感覚や先見の明といったものがない場合が多いということを交通問題を基に述べてみた。ここまで読んで疲れた人、ご免なさい。

5.おわりに
 燃料電池、高速道路道路での自動運転など、自動車サイドの技術進歩も進んでいるようである。この2つの実現は、交通問題を大きく変えると思われる。しかし、まず、完成がどれくらい先か、そして普及にかかる時間を考えると、鉄道やバスといった公共交通機関の拡充が望ましいと考える。少なくとも、もうこれ以上の高速道路はいらない。
  
 もちろんあれば便利。
 1年に1回でも使って便利に感じることはあるはず。とは言え、それに対する税金の額を考えると・・・。

 そんなに公共事業がしたいなら、公共交通機関の整備をお願いしたい。ただし一部を除き、赤字必至の整備新幹線を理由を付けては造るのは、国鉄時代の赤字ローカル線の二の舞であることを付け足しておく。最後まで読んでくれた人がいたら、感謝します。どうも。

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