韓国人のウリ(我々)意識

担当:孟保世

○ホセハジメの韓国シリーズ、雑学に登場っ!

 韓国の話題をお届けするシリーズ第1弾として
 今回は、韓国人のウリ(我々)という
 言葉の意味を考えてみることにしましょう。

 まず、このウリという言葉、日本語に訳せば
 我々、私達という意味に当たる言葉ですが、
 その使い方には日韓で多少差があるように思われます。
 ではその日韓の差を具体例を通して見てみましょう。
(写真:ソウル市庁舎 2002年サッカーワールドカップ時/
 撮影:筆者)


●具体例1 TVやラジオにおけるニュース、サッカー等の国際試合の報道で自国を指す時

 この時日本では、“日本は〜”、“日本代表チームは〜”と、「日本」いう表現をよく用います。しかし、韓国でTVを見ると“ウリナラ(我が国)”、“ウリティーム(私達のチーム)”という表現が頻繁に出て来ます。日本でもNHKニュース等で“我が国の政策が〜”という表現が出てくることもありますが、韓国でTVを見ていると桁違いにこのウリという表現が多いことに気づきます。

●具体例2 自分の家に友達を招待する時

 友達ができて親しくなれば、誰でも一度はその友達を家に招待したくなるものです。その時、日本では、“今度私の家に遊びにおいでよ”とよく言いますが、韓国では、“ダウメ ウリ チベ ワ(今度私達の家に遊びに来いよ)”という表現を用います。この場合、日本語で”私達の”家に遊びにおいで”とはほとんど言わないでしょう。また、日本語で私達の家に〜というと家族がいることを想像するかと思いますが、韓国の場合、この時のウリ(我々)は、自分の家という意味で用いています。

 

●考察

 具体例1の場合、韓国という言葉ももちろん用いますが、多用されるこのウリという言葉。ニュースの場合、韓国という意味でこのウリという言葉を用いると自分たちの〜という意識が起こりませんか?また、サッカーの日韓戦などで、ウリティームという表現を用いると自分たちが一緒に応援しているチームという感じがしませんか?もちろん、これらのウリは韓国という言葉に置き換えても全く問題はないでしょう。しかし、韓国ではこのウリを多用しています。

 

 具体例2の場合、日本語で私達の家においでよというと明らかに変な感じがしますね。ぎこちないというか何というか。しかし、韓国では普通に用いている表現です。示したいこともただ自分の家と言いたいだけです。何も我々の家と強調しているわけではなく、友達同士の間で普通に交わされている言葉です。

 

 実はこのウリという言葉、韓国語を勉強している人なら一度はこれらの表現を面白いと感じることがあるでしょう。また、韓国に興味を持っていたり、勉強していたりする人にとって、この言葉は韓国人の人間関係、世界観をよく表している言葉に思えます。韓国は儒教大国といわれるように、韓国人は伝統的に家族の血筋関係を非常に大事にする習慣があります。親の言うことや期待は、子どもにとって大変重要なものです。

 韓国語では自分の親と話をする時に敬語を使って話します。親しい間柄では敬語を使わない習慣のある日本人にはちょっと面白いですが、それだけ親子関係は大切で尊敬し合う関係なのです。もちろん、この伝統的な家族関係や習慣も日本と同様、近代化と共に薄れてきている部分はありますが、やはり外国人の目から見ると新鮮に映ります。

 

 しばしば、このウリという言葉を日本語に訳すと我々という言葉になってしまうため、サッカーの日韓戦の中継などでのこの表現を反日感情の表れだとか、愛国主義を表していると解釈されがちですが、韓国人は別に反日感情や愛国主義をもってこの表現を多用しているのではありません。ただ、半島北側の北朝鮮の朝鮮中央通信のTVにおいて、アナウンサーが独特の口調でウリ〜、ウリナラ(我が国)という表現を用いて、アメリカや日本を批判しているところがTVに出ることがありますが、この場合ウリという言葉が愛国主義やイデオロギーを象徴する言葉ではなく、ウリという言葉の性格、特徴、概念等が利用されている特別な例といえるでしょう。

 従って、韓国人はこのウリという言葉を日常的に使っており、彼等自身には特別な表現を使っているという感覚はないようです。韓国人の友達とこの言葉について話した際、そう言われるとこのウリという言葉は韓国人の習慣や人間関係を反映している言葉なのかもしれないね。でも今まで韓国で産まれて生きてきて、特別考えたことがなかったから、自然にこの言葉を使ってきたよと話していました。なかなか、このウリという言葉は外国人の目から見ると興味深いものです。


孟保世さんのHP「写真で見る韓国の旅」はこちら
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