ドイツ語入門編(4) sein、疑問文、否定文

 第四回。そろそろ簡単な文が書けるようになりたいところ。というわけで、これから現在形の文が書けるようになるための解説をしていくことにします。まずは「AはBです」という文のために使われる動詞seinと、sein構文の疑問文、否定文の作り方です。

○sein

 英語のbe動詞に当たるのがこのsein(ザイン)です。つまり「〜は〜です」という時に使う動詞です。
 ドイツ語の動詞は人称と数によって変化します。人称は1人称2人称3人称で3つ、数は単数と複数で2つですから、3×2=6通りの変化を持っているということになります。

 seinは不規則な変化をします。

人称
 単数  複数
 bin ビン  sind ズィント
 bist ビスト  seid ザイト
 ist イスト  sind ズィント


 2人称のduやihrの代わりに3人称複数形Sieを使うときには、動詞も3人称複数形にします。ですからbist、seidはほとんど見る機会がありません。

 人称代名詞とともに挙げると、こうなります。

人称
 単数  複数
 ich bin イッヒ・ビン  wir sind ヴィア・ズィント
 du bist ドゥー・ビスト  ihr seid イーア・ザイト
 er/sie/es ist ア/ズィース・イスト  sie sind ズィー・ズィント


 ドイツ語では、動詞は前から2番目に来ます。これを定形第二位の法則といいます(定形とは、主語によって形が定まるもの、つまり動詞のことです)。

 Ich bin Student. イッヒ ビン シュトゥント 私は(男子)学生です。
 Du bist schön. ドゥー ビスト シェーン きみは綺麗だ。 [schön (形容詞)美しい]
 Berlin ist die Hauptstadt von Deutschland. ベルリーン イスト ディー ウプトシュタット フォン イチュラント 
   ベルリンはドイツの首都です。 [Hauptstadt (女性名詞)首都、von (前置詞)〜の]

 Wir sind Freunde. ヴィア ズィント フインデ 僕らは友達だ。 [Freunde 「Freund(男性名詞)男友達」の複数形]
 Sie sind frei. ズィー ズィント フイ あなたは/あなたたちは/彼らは/彼女らは自由だ。
 Sie ist frei. ズィー イスト フイ 彼女は自由だ。 [frei (形容詞)自由な]


 最後の二例に注意。sieは二人称を指していたら大文字にするといいましたが、このように文頭に来たときは、文頭は全て大文字にするので2人称か3人称かわかりません。ただし、もしこのsieが3人称単数の女性だった場合には、最後の例のようにseinがistという形になるので見分けがつきます。

発音規則22.[v]

 [f]で発音するのが基本ですが、稀に[v]と発音する場合もあります。

○否定文の作り方

 否定文を作るときは、否定する言葉の前にnicht(ニヒト)をつけます。

 Du bist Student. ドゥー ビスト シュトゥント きみは学生だ。
  → Du bist nicht Student. ドゥー ビスト ニヒト シュトゥント きみは学生じゃない。


 文全体を否定するときは、文末にnichtを持ってきます。ドイツ語では、動詞は大抵第2位に来ますが、動詞と最も強く結びついた要素──否定のnichtや、第2位に助動詞が来たときの本動詞──は文末に来るという規則があります。

○疑問文の作り方

 疑問文は、普通の文の動詞を一番前に持ってきて作ります。

 Du bist Student. ドゥー ビスト シュトゥント きみは学生だ。
  →Bist du Student? ビスト ドゥー シュトゥント? きみは学生か?
 Sie sind frei. ズィー ズィント フイ あなた(たち)は自由だ。
  →Sind Sie frei? ズィント ズィー フイ? あなた(たち)は自由か?
(もしsieが三人称複数なら、Sind sie frei? と綴る。)

 Karl und Ferdinand sind Bruder. カール ウント フェルディナント ズィント ブルーダー 
     カールとフェルディナントは兄弟だ。
  →Sind Karl und Ferdinand Bruder? ズィント カール ウント フェルディナント ブルーダー? 
     カールとフェルディナントは兄弟か?


 答えは、肯定ならJa. ヤー、否定ならNein. イン です。

○否定疑問文

 「〜じゃないよね?」と否定の文を訊ねる言い方です。否定文かつ疑問文ですから、両方の規則を適用します。

 Du bist Student. ドゥー ビスト シュトゥント きみは学生だ。
  →Bist du Student? ビスト ドゥー シュトゥント? きみは学生か?
    →Bist du nicht Student? ビスト ドゥー ニヒト シュトゥント? きみは学生じゃないだろう?


 否定疑問文の応答は、英語では返答の肯定否定に合わせるのに対し、日本語では相手のいうとおりかどうかによるのでした。

 例:Aren't you a student? きみは学生じゃないだろう?

 ・そのとおり学生じゃないなら、
  英語の場合、I'm not a student.で否定文なのだから、No.
  日本語の場合、相手の言うとおりだから、「はい」 なので、
  No, I'm not a student. はい、学生じゃありません。

 ・実は学生なら、
  英語の場合、I am a studentで肯定文だから、Yes.
  日本語の場合、相手の言うとおりじゃないから、「いいえ」 なので、
  Yes, I am a student. いいえ、学生です。


 ドイツ語の場合は英語と似ているのですが、「実は相手の言うことは間違っている」というときにはJaをつかわずにDoch「そんなことはありません」を使います。

 例:Bist du nicht Student? ビスト ドゥー ニヒト シュトゥント? きみは学生じゃないだろう?

 ・そのとおり学生じゃないなら、
  Nein, Ich bin nicht Student. イン イッヒ ビン ニヒト シュトゥント はい、学生じゃありません。

 ・実は学生なら、
  Doch, Ich bin Student. ドッホ イッヒ ビン シュトゥント いいえ、学生です。


 これでseinはもう使いこなせるはず。
 次回は人称代名詞を主語として使う場合、そして一般動詞の変化についてです。

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