ドイツ語入門編(7) 配語法

 前回箸休めといいましたが、意外とそうではなかったかも。今回は、ドイツ語の文でそれぞれの文の要素がどんな順番で並べられるのか、という話です。文の要素の並べ方を、配語法といいます。

○定形第二位の法則

 ドイツ語の配語法において最も重要かつ重大な法則は、定形第二位の法則です。
 定形、とは、主語によってまるもの。つまり、ここまで学んだ限りでは動詞のことを言います(助動詞を使った表現の場合は助動詞が定形になります)。この定形というやつを文の2つめに持ってこなければいけません。

Ich spiele auf der Straße mit einem Kind. イッヒ シュピーレ アウフ デア シュトラーセ ミット アイネム ント
[spielen 遊ぶ auf der Straße 路上で mit einem Kind ある子供と]
 私は通りで子供と遊んでいる。

 上の例では、spieleという動詞(ichという一人称単数の主語によって-eというまっている)が文の二番目の要素になっています。このspieleを他のところに持ってくる、例えば

 Ich auf der Straße spiele mit einem Kind. とか、
 Ich auf der Straße mit einem Kind spiele. などとすることはできません。

 なお、「auf der Straße」とか「mit einem Kind」というカタマリ(句という奴です)は、1つと数えます。なので、

 Auf der Straße spiele ich mit einem Kind.

 とするのも、定形第二位の法則に従っていると見なされ、OKとなります。

○自然な配語

 上の例で私は、

 Mit einem Kind spiele ich auf der Straße.
 Mit einem Kind spiele auf der Straße ich.

 といったような例を挙げませんでした。もちろん、こういった言い方でも定形第二位の法則に従っているのですから、可能です。しかし、文法的に可能であるということと、文として自然であるということは全く別の話です。mit einem Kindから始まる文は、文法的にOKですが、ちょっとなんだか変な文なのです。

 なぜか。

 理由は、mit einem Kindという、この不定冠詞にあります。
 簡単に言うと、不定冠詞の付いている語が文頭に来るのは、変です。

 ちょっと日本語の文で考えてみましょう。

(1)私は通りで、子供と遊んでいる。
(2)私は子供と、通りで遊んでいる。
(3)私が子供と遊んでいるのは、通りでだ。
(4)私が通りで遊んでいるのは、子供とだ。
(5)子供と通りで遊んでいるのは、私だ。

 この5つの文は、同じ意味でしょうか。

 もちろん、私と子供が通りで遊んでいるという現象を記しているという意味では、この文は全て同じ意味です。ですが、完全に同じ意味ではありません。
 それぞれの文が答えとなるような疑問文を作ると、このようになります。

(1)'通りで何をしているんだ?
(2)'子供と何をしているんだ?
(3)'子供とどこで遊んでるんだ?
(4)'通りで誰と遊んでるんだ?
(5)'子供と通りで遊んでいるのは、誰だ?

 つまり、「、」を境に、前の部分は聞き手が既に知っている情報、後ろの部分は聞き手がまだ知らない情報なのです。文章とは相手に知らない情報を伝えるものですから、まず相手の知っている情報を手がかりに、知らない情報を説明していくという順番になるのが自然です。
 そう考えると、不定冠詞のついたmit einem Kindが最初に来るのがちょっと変なのもわかるでしょう。もちろん、日本語でも、なんらかの特殊な効果を狙って、

 ある子供とね、あの通りで遊んでいたんだよ。

 という言い方は可能である、というのと同様、mit einem Kindが最初に来る言い方も可能です。でもそれは特殊な言い方なのです。

○その他の配語の法則

 話がずれました。配語に関する規則をもう少し見ていきましょう。

・定形第二位であれば、それ以外の文要素はどのように並べても良い。

 これは既に述べたとおりです。定形(動詞か助動詞)が二番目に来さえすれば他の要素はどのように並べてもかまいません。英語のように最初が主語と限らないのには注意です。

・疑問文の時は、動詞が一番前に来る。

 これについては(4)で述べたとおりです。Ja/Nein/Dochで答えられる疑問文は動詞を最初に置きます。seinもそれ以外の動詞も、文頭に来ます。
 ただし、疑問詞を使った疑問文は、疑問詞を動詞の更に前に置きます。

 Kommen Sie aus Japan? メン ズィー アウス ヤーパン?
[aus 〜から]
 日本から来たのですか?/日本出身ですか?
 Woher kommen Sie? ヴォーヘァ メン ズィー
[Woher どこから?]
 どこから来たのですか?/どちら出身ですか?

・動詞と深く結びついている要素は、常に文末に来る。

 「動詞と深く結びついている要素」とは、例えば動詞とその要素で決まり切った言い回しになっている場合とか、否定のnichtなどです。

例:zur Sprache bringen「(4格)について論じる」
 Wir bringen die Geschichte zur Sprache. ヴィァ ブンゲン ディー ゲヒテ ツァ シュプラッヒェ
[Geschichte (女)歴史]
 我々は歴史について論じる。

 こういった言い回しの含まれた文を否定するときは、動詞と深く結びついた要素の前にnichtを置きます。

 Wir bringen die Geschichte nicht zur Sprache.

 さて次回。次回は男性名詞と中性名詞の格変化、それから不規則変化の現在人称変化を扱います。

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