学士会館・共立講堂～東京都千代田区～

　学士会館は１９２８（昭和３）年に髙橋貞太郎の設計で建てられたもので、旧帝国大学（現在のいわゆる国立七大学）出身者からなる学士会会員の親睦と知識交流を目的に使用されました。いわゆる関東大震災からの震災復興建築の１つで、髙橋貞太郎はこの建物を住宅のような建物とすべく、１階に「居間」として談話室など、２階に「御客用」として大食堂、３階に「書斎」として会議室、４階に「寝室」として宿泊室を配しました。
　建物は早々に手狭となったことから増築が計画され、１９３７（昭和１２）年に藤村朗の設計で旧館の背後に増築。こちらは新館と呼ばれ、外観は本館にイメージを合わせた筋面タイル貼りとなる一方、内装は重厚な雰囲気の本館に対し、新館は明るく軽快な雰囲気となっています。
　２００２（平成１４）年に改修が行われ、一般利用が可能に。建設当時の趣が残る宴会場の201号室は、様々なドラマで使われ、例えばドラマ「半沢直樹」（2013）の最終回では、大和田常務（香川照之）が半沢直樹（堺雅人）に土下座をさせられる場面で使用されています。
　老朽化に伴い２０２４（令和６）末で一時休館し、今後は旧館は曳家の上で保存、新館は取り壊しの上で再開発が行われます。
　一方、学士会館の向かい側には１９３８（昭和3）年に建てられた共立講堂があります。こちらは、東京タワーの設計者・内藤多仲博士が構造設計、前田健二郎が意匠設計を手がけた建築で、創建当初は規模・設備において日比谷公会堂と並ぶ大きな講堂で、数々のコンサートも開催されています。内部は１９５６（昭和３１）年に火災で焼失していますが、外観は２００７（平成１９）年に改修の際に、創建当初の姿に近づけています。
　(撮影：裏辺金好）