第67回 松方財政

○西南戦争は高くついた

 自由民権運動の話は一旦ストップし、今回は財政の話を少々。

 1877(明治10)年の西南戦争に勝利した明治政府でしたが、これに伴う財政出動は重くのしかかり、1873年〜80年に大蔵卿を務めた大隈重信、1880〜81年に大蔵卿を務めた佐野常民(さのつねたみ 1823〜1902年)は、不換紙幣、つまり正貨である金貨や銀貨との交換を保障しない貨幣を発行。そもそも紙幣って、金貨や銀貨との交換が保障される兌換紙幣であることによって価値が出るのですが、当時の政府には、それだけの金貨や銀貨を持っていなかったんですね。

 ということで価値の低い紙幣が出回るようになると、物価が上昇、すなわちインフレーションとなり、額面上は政府の歳入は増えましたが、物価が上がってしまい、実質的には歳入が減少する有様となりました。


○松方財政

 さて、前回見た明治十四年の政変によって、大隈重信はもちろん、佐野常民も辞任したことから、次に大蔵卿に就任したのが松方正義(まつかたまさよし 1835〜1924年)でした。ちなみに大隈重信、佐野常民ともに佐賀の出身、松方は薩摩の出身。ますます政府は薩長の色合いが濃くなった、という感じです。

 松方正義は1881年から1892年まで、長期にわたって大蔵卿、のち内閣制度の発足に伴い大蔵大臣を務めます。彼に求められたのは、当然のことながら財政再建と、健全な通貨制度でした。では、どのような手法をとっていったのでしょうか。

1.歳入の増加
 ・醤油税、菓子税など、新しい税制度を創設
 ・酒造税、煙草税の増税
 酒と煙草が増税の対象になりやすいのは、既にこの時代からだったわけで(笑)。

2.歳出削減
 ・各種行政経費の削減(軍事費はむしろ増加/割合でも1882年の17.4%→1890年は31.3%)
 ・歳入の余剰を活用し、不換紙幣を取り戻して処分
 ・本位貨幣(正貨/金貨や銀貨のこと)を蓄積
 ・官営事業を払下げ(つまり民間への売却)、政府事業をスリム化

3.中央銀行制度の創設
 ・1882(明治15)年に日本銀行を設立。
 ・1883(明治16)年、国立銀行条例を改正し、銀行券の発行は日本銀行に限定。
  それまで銀行券の発行が認められた銀行は、普通銀行に転換させられる。
 ・1885(明治18)年、日本銀行が銀貨に基づく兌換銀行券を開始(→銀本位制の確立)。
  ちなみに1897(明治30)年に金本位制が確立します。

 さあ、このような政策を実行した結果、どうなったのかと申しますと、まず財政再建は見事に果たしました。ただし・・・。

1.松方デフレ
 緊縮財政政策、さらに不換紙幣の回収により紙幣の供給量が減少したことによって、物価が大きく下落するデフレが発生します。特に1884(明治17)年には深刻なデフレに見舞われました。
 ↓
 これで大打撃を受けたのが農民。地租は定額ですので、幾らデフレになっても税金は変わりません。しかも不況で物が売れません。このため、とうとう自らでは農業が続けられず、大地主の下で働く小作農になったり、農業を放棄して都市に流れ込むようになっていきます。そんな中で、民権運動が激化したのは前回見たとおり。こんな背景があったんですね。

2.官営事業の払下げ
 明治維新後、政府は新しい産業を興すために色々な事業に手を出しましたが、少しずつ民間会社も誕生して独自の力をつけ始めてきました。そんなわけで、官営事業を民間に売却していきますが、この中で三井、三菱、古河などの政商、つまり政府と結びつきの深い実業家が、払下げを受けた政府資産を上手く活用していきます。

 これによって、後に財閥として日本経済に大きな影響力を持つようになります。

 そして、松方財政も後半期になると、明治初期に投資した産業が振興し、そして銀本位制の確立も功を奏したことから、輸出が好調となり、株式取引の活発化、さらに鉄道や紡績など会社を作ることがブームになります。・・・と、喜んだのもつかの間、また米の凶作に伴う米の価格が急騰→家計の負担増→購買力の低下(物が売れない)→会社が在庫をかかえる、と1890年に深刻な不況に見舞われました。

 1891(明治24)年には内閣総理大臣となりますが、引き続き大蔵大臣を兼任。翌年には金本位制への道筋をつけるなど(前述のように1897年に実現)、財政政策に奔走した松方正義でした。

参考文献・ホームページ
ジャパン・クロニック日本全史 (講談社) 
詳説 日本史 (山川出版社)
結論!日本史2 近現代史&テーマ史編 (石川晶康著 学研)
この一冊で日本の歴史がわかる (小和田哲男著 三笠書房)
マンガ日本の歴史43 (石ノ森章太郎画 中公文庫)
読める年表日本史 (自由国民社)
新詳日本史 (浜島書店)
日本の歴史20 維新の構想と展開 (講談社)

次のページ(第68回 立憲国家の成立へ)へ
前のページ(第66回 自由民権運動)へ


↑ PAGE TOP

data/titleeu.gif