第二十一話 逆襲のバンカー!!と東京二輪事情
(原付ライダー列伝1−バンカー伝3)

  二輪免許取得への情熱を失っていた私。

 共に二輪免許をとろうと誓った友人の文遠は今は遠くの人(決して故人となったわけではない)となり、彼も春休みまで免許をとることはない・・・。誰も私が免許をとらないことで文句をいってくる者はいない・・・はずだった・・・。


 ある日、ある男から電話がきた。何の用だろう。


「俺、二輪免許とるわ。教習所にいってきた。」


 電話の相手はあの風見鶏のような男、バンカーだった。私と文遠が二輪の話で盛り上がっているのを横目でみて、最初はまったく興味がなかったのに、突然、免許が欲しいといってきた男である。私と文遠はバンカーの一種のパフォーマンスだと思い、本気だとは思っていなかったのだ・・・。その男が二輪教習所にいってきたという・・・。まだ、この時点では入所まではしていなかった。


 バンカーは東京の大学にいっている。バンカーの話によると、東京の二輪教習所は大盛況のようだ。静岡県のように、むやみに駐車スペースがあり、道路が渋滞するといってもたかが知れたレベルのところでは、歩いていったほうが車でいくより早いというのは至近距離に限られる。さらに鉄道網も発達していないので必然的に自動車が必要になってくる。


 しかし、東京は違う。駐車場は少ないし、駐車場代も馬鹿にならない。そして道路の渋滞も半端ではない。自動車を持ってもあまりメリットはないので東京出身の学生などは自動車免許をとらない人もいるくらいだ。そこで、バイクの登場となる。バイクならば車の横をすりぬけて進むことができるから、まったく渋滞が問題にならないとまではいかない(渋滞していないほうが速度はだせるので、渋滞していないほうがいいに決まっている)が、スムーズに運行できる。


 しかも、東京ではビッグスクーターが随分走っているようだ。地方では自動車を所有しなおかつバイクも所有するという形態になることが多いので、スクータータイプは流行らないのかもしれない。荷物がある時は車でいけばいいわけで、バイクに実用性をもたせる必要はあまりない。ただ、日常の足である原付スクーターは別だが。これが東京になるとバイクのみ所有するという形になるので、実用性のあるビッグスクーターがはやるのかもしれない。文遠からの情報によると、ビッグスクーターのシート下に、ラジカセを仕込んでおいて、音楽を流しながら走る連中もいるという。その話を聞いたとき、てっきり右○かと思った・・・。


 最初、バンカーが教習所にいったというのは、これまた一種のパフォーマンスだと思っていた。とりあえず行っただけで入所するつもりはないのだろうと。だが、数日後、バンカーは教習所に入所し、免許取得のために動きだしたという。そして、ことあるごとに、


「いつ免許とるよ?」


 と私に催促まがいのことをいってくるようになったのだ・・・。私はきまって内定がでたらといっていた。そしてついに・・・、恐れていた事態が発生してしまった・・・。


 免許取得にバンカーが動き出して数週間後・・・、バンカーから電話がきた・・・。


「俺、免許とった。」


 ・・・・・・。パフォーマーだと思っていたバンカーは私よりも本気だったのだ・・・。パフォーマーは私だったのだ・・・。しかし、バンカーはさすがにバイクを買うだけの余力は残っていなかったようだ。これで、バンカーがバイクを買って私の前にあらわれたら、私に立つ瀬はない。だが、マシンがなければ、免許があってもなくても同じこと。ただ、バンカーの免許のところに、「普二輪」という表示があるだけに過ぎないのだ・・・。


 だが、バンカーは数日後、いつまでも免許をとりにいかない、パフォーマーの私にいよいよ嫌気がさしてきたようだ・・・。なんと彼は、私からのメール・電話を着信拒否にしたのだ・・・。私からバンカーにアクセスすることは文遠を通じてからでしかできなくなってしまったのだ・・・。文遠にこのことをいうとバンカーはとんでもないやつだといって、着信拒否をやめるように勧告してくれたが、どうやら私が免許をとりに動き出さないとダメらしい。今思えば、バンカーと連絡がとれなくなっても望むところなのだが(オイオイ)、当時はそれが苦痛だった・・・。


 今思えば、そんなことを苦痛に思うくらい暇だったのだろう・・・。


そして、時は動き出す・・・。



棒