クラス139 

British Rail Class 139


クラス139の2号機、139002。1号機の139001と共にスタウアブリッジ支線で運用され、軽量レールカーの実用性を示している。
(撮影:スタウアブリッジ・タウン駅、Stourbiridge Town)

●基本データ

デビュー年 2009年
最高速度 65km/h
製造会社 パリ―・ピープル・ムーバーズ(Parry People Movers)
運行会社 ロンドン・ミッドランド(London Midland, LM
運行区間 スタウアブリッジ支線
●スタウアブリッジ・タウン(Stourbridge Town)〜スタウアブリッジ・ジャンクション(Stourbridge Junction)
編成詳細

クラス139 3両
・量産車の139001、139002の2両が通常運用に使用される
・試作車の139000(元999900)は保管されており運用には入らない


●通常旅客運行での最小車両、レールバスならぬ「レールカー」。

 クラス139は上記のような短区間、低利用客数を特徴とする路線のために設計されたレールバスよりも一回り小柄な「軽量レールカー」である。製造会社のパリー・ピープル・ムーバーズから与えられた形式はPPM60型。短く孤立し、頻繁なピストン運行を行う盲腸線のような路線では加減速が優秀な車両が使いやすい。加えて利用客数がそれほど高くないと通常規格の鉄道車両を使用するには無駄が多い。これらの条件を踏まえてクラス139は2009年にイングランド中部に位置するスタウアブリッジ支線に導入され、現在でも好評を博している。

導入背景と試作車:ヨーロッパ最短支線にて
 スタウアブリッジ・タウン支線はイギリス中部に位置し、キダーミンスター経由でバーミンガムとウスターを結ぶ路線から分岐するのヨーロッパ最短の支線だ。全長1.3キロという短い距離を一両の列車が一日中ピストン運行するという運行形態を長らく続けていたが、国鉄民営化以降はクラス153を一両導入する形で運行されていた。しかし本線規格の鉄道車両であるクラス153では過剰な輸送力を発揮していた。より適切な車両導入を視野に入れた当時の運行会社のセントラル・トレインズ(Central Trains)は軽量レールカーに目をつけ、パリー・ピープル・ムーバー社が2002年に開発・製造したPPM50型の999900編成を導入。この一両を日曜日のみ支線に投入され、試験運用を行った。

 試験運用は成功とみなされ、後継の運行会社であるロンドン・ミッドランドはクラス139を2両発注。これら量産車は139001と139002の番号が振られ、試作車の999900と技術的には同じなものの、全長が約1メートル長い。2008年内には導入予定だったが、試験走行が遅れ2009年3月から週末のみ支線の運用に入った。同年5月のダイヤ改正からは本格的に導入され、以前支線を担当していたクラス153を置き換えた。

利用客増加の起爆剤、更なる導入案
 クラス139が導入された翌年から支線の利用客数は年間2万7千人から5万人以上に増え、年々増加傾向にある。クラス153時代には毎時5往復だったのが6往復に増えた事も一つの要因だと考えらえる。支線の所要時間は3分、折り返し時間2分の片道計5分のもので一日のダイヤは一両が担当し、基本的に日中使用編成が交代する事はない。車庫はスタウアブリッジ・ジャンクション駅隣にあり、クラス139が本線上で走行する事は安全上の理由で認可されていない。将来的にはスタウアブリッジ・タウン駅から市内までLRTとして路線を延伸する案がある。

 パリー・ピープル・ムーバー社はロンドン・ミッドランドの発注を機会に類似した盲腸線を管理する運行会社に積極的に売り込みを行っている。PPM60型を2両を連接台車で繋げたPPM220型などの案も浮上したが、製造までは至らなかった。

クラス139の仕様
 クラス139は気動車だがディーゼルエンジンを小型化するためにフライホイール・バッテリーを採用している。蓄電池を搭載した列車では減速時に運動エネルギーは電気エネルギーとして蓄積されるが、フライホイール・バッテリーの場合は運動エネルギーをフライホイールによって回転エネルギーとして蓄積する。この回転エネルギーは車両の加速や車内の電気系統に使用される仕組みである。

 一両の最大乗車人数は60人ほどで車内では前向きと横向きの座席が一列に並んでおり、バスのような内装となっている。ドアは側面を見て左側に二枚折り扉が設置。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


車内はロングシートと独立した座席が混合したセミクロス仕様。モケットはロンドン・ミッドランド標準のものを採用。


ドアは片側に二枚折りのものが一つずつ設置。
(撮影:スタウアブリッジ・ジャンクション駅、Stourbiridge Junction)


スタウアブリッジ線は片道3分の短い盲腸線。スタウアブリッジ・ジャンクション駅方面を眺める。
(撮影:スタウアブリッジ・タウン駅、Stourbiridge Town)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Wikipedia: British Rail Class 139
Railways in Worcestershire: Class 139 'Parry People Mover' single car railcars

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