クラス143「ペイサー」 

British Rail Class 143 'Pacer'


アリーヴァ・トレインズ・ウェールズ(ATW)のクラス143。主にカーディフ近郊路線で運用されている。
(撮影:カーディフ中央駅、Cardiff Central Station)

●基本データ

デビュー年 1985年
最高速度 120km/h
製造会社 ウォルター・アレクサンダー(Walter Alexander)
ハンズレット・バークレイ(Hunslet Barclay)
運行会社 アリーヴァ・トレインズ・ウェールズ(Arriva Trains Wales, ATW
グレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway, GWR
運行区間 こちらを参照
編成詳細

クラス143 2連x25本製造、うち23本現役

・143615編成は2005年に火災により廃車
・143613編成は2004年10月に火災により廃車


●安価な車両を求めた結果英国鉄がたどり着いたレールバスその2

 クラス143は「ペイサー(Pacer)」と呼ばれる英国鉄が製造したレールバスである。ペイサーには同種の他に試作車のクラス140、初量産型の140、そして現役のクラス142144が存在し、主に非電化の地方路線でローカル列車の運用に入っている。2008年に制定された鉄道車両利用法により2020年1月までにイギリスの鉄道車両は身体障害者が不自由なく使用できるように改造・新造されなければいけないため、車イスの乗車スペースや車イス対応トイレなどが備わっていないレールバスはそれまでに引退する見込みだ。

誕生の経緯
 クラス143は1970年代後半に老朽化した旧世代のディーゼル車を置き換えるための苦肉に策であった。当時英国鉄は苦しい財政難に陥っており、1950年代から使用し続けている旧型気動車をできるだけ安価で置き換えられる案を模索。ブリティッシュ・レイランド社(British Leyland)と手を組みクラス142を共同開発する一方で英国鉄はスコットランドのキルマーノックに本社を置くハンズレット・バークレイ社(Hunslet Barclay)にレールバスを発注。ウォルター・アレクサンダー社(Walter Alexander)のバス用車体にハンズレット・バークレイ社独自の二軸台車に載せたクラス143が誕生した。

経歴と現在の運用
 営業運転を1985年に開始し、当初はイングランド東北のニューキャッスルに全25編成が配属。ニューキャッスル、ダーリントン、ミドルズバラ周辺のローカル列車を担当していたがクラス142と同様に機械式動力伝達機器に不具合が頻発し、クラス47や31牽引の客車列車が代行する事も珍しくなかった。時間が経つにつれ技術的なトラブルも減少し、クラス142と共にイングランド東北のクラス101を1990年夏に全て置き換えた。

 1991年から1992年にかけて全編成がウェールズのカーディフに転属。英国鉄民営化時には16編成がウェールズの鉄道を管轄下に置くウェールズ・アンド・ウェスト(Wales and West)へ、そして9編成がイングランド南西のウェセックス・トレインズ(Wessex Trains)に引き渡された。ウェールズ・アンド・ウェストの編成は現運行会社であるアリーヴァ・トレインズ・ウェールズ(ATW)に所属しておりカーディフ近郊路線でクラス142と共に運行している。2009年秋にはクラス143のリニューアルが行われ塗装が更新され内装が一新された。

 ウェセックス・トレインズの編成は同社の路線網が2006年4月にファースト・グレート・ウェスタン(First Great Western)のものと合併した時に転属。ファースト・グレート・ウェスタンはクラス143をエクセター周辺のローカル路線に投入した。2015年9月から同社はグレート・ウェスタン鉄道(GWR)に改称したが、現在も同じ路線を走っている。

クラス143の仕様
 車体はバス制作会社のウォルター・アレクサンダー社のものを使用しており、車内の備品もバス向けに作られたものが多い。なにより特徴的なのは製造コストを抑えるために足回りはボギー台車ではなく二軸台車の採用。長いホイールベースの二軸車であるクラス142は急カーブ通過時に大きいフランジ音が鳴り、時速80キロ以上の運行では乗り心地が悪化。更には初期の座席はバス用の安価なものを流用していたために乗客からは敬遠されていた。現在では運行会社による座席の更新やトイレの設置なども進み幾分かは改良されたが乗る列車にペイサー・レールバスが充当された時はハズレくじを引いたと感じる乗客がほとんど。上記のように2020年までの運用で、その期限までにスプリンターやターボスターなどのより近代的な気動車に置き換えられる予 定である。特にカーディフ近郊路線は近々電化される可能性が高く、その時はクラス315などに置き換えられるのではと噂されている。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


ATW所属クラス143のリニューアル済み車内。以前は3+2配置のバス用座席だった。


グレート・ウェスタン本線にも顔を出すATW編成。
(撮影:カーディフ中央〜ニューポート、Cardiff Central - Newport)


ATWではラッシュ時には同じペイサーのクラス142(写真奥)と併結して運用される。
(撮影:カーディフ中央駅、Cardiff Central Station)

クラス143の側面。ボギー台車ではなく車両自体が二軸車である。
(撮影:カーディフ中央駅、Cardiff Central Station)


旧ファースト・グレート・ウェスタン塗装のクラス143。
(撮影:ブリストル・テンプル・ミーズ駅、Bristol Temple Meads)

ファースト・グレート・ウェスタン編成のリニューアル済み車内。


●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Paserchaser: Pacer Page 2- Classes 140, 141, 143 and 144
Paserchaser: Pacer Page 3- History and Background

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