クラス365「ネットワーカー・エクスプレス」 

British Rail Class 365 'Networker Express'


グレート・ノーザン(GN)塗装のクラス365。リニューアル工事が進み、全編成がこの塗装に更新中である。車両前面改造工事の前はクラス456と同じ顔立ちだった。
(撮影:ハリンゲイ駅, Harringay Station)

●基本データ

デビュー年 1996年
最高速度 160km/h
製造会社 ABBヨーク工場(ABB York)
運行会社 グレート・ノーザン(Great Northern, GN)
運行区間 東海岸本線近郊路線(グレート・ノーザン線)
●ロンドン・キングズ・クロス(London King's Cross)〜ピーターバラ(Peterborough)
●ロンドン・キングズ・クロス〜ケンブリッジ(Cambridge)〜キングズ・リン(King's Lynn)
編成詳細

クラス365 4連x41本製造

・365526編成はポッターズ・バー脱線事故により先頭車が廃車、残り3両は予備車として保管


●顔立ちが他と異なる高速交流型ネットワーカー

  イギリス国鉄が末期にクラス465の交直対応中距離・近郊型として開発された「ネットワーカー(Networker)」シリーズの最終形式。一時期ロンドン南部で運用されていたが現在は東海岸本線のロンドン近郊区間の快速・中距離列車を担っている。同じネットワーカーの仲間には同シリーズの原点となった気動車版のクラス165166、そして同系列のベースとなった直流型電車のクラス465466が存在する。

資金不足で没となった新近郊型電車、その代案とは
 1990年代初頭にロンドン近郊とイングランド南東の路線を担当していたイギリス国鉄支部、ネットワーク・サウスイースト(Network SouthEast、NSE)がネットワーカー車両を順調に展開し、旧型車両を置き換えていった。更なる新車投入計画として交直両電源対応のネットワーカー導入案があがり、テムズリンク用のクラス371、そしてNSEネットワーク管内の近郊・中距離用のクラス381と471を導入する計画が持ち上がった。1993年に落成予定だったが、資金不足と開発費削減のため新車両開発は中止となり上記の3形式は欠番となった。

 代案として挙がったのが既存のネットワーカーを中距離・近郊用に改造するもので、クラス465がベース車両として選択された。1993年には当初実現可能性を審議するためにクラス465/0(465037編成)をクラス465/3と呼ばれる試作編成(465301)に一時的に改造。結果に満足したNSEはABBから交直両電源対応のクラス365を4連x41本を発注。内約はがロンドンとイギリス最南東のケント州の主要都市を結ぶための直流機器のみ搭載の16編成(365501-516)と東海岸本線近郊路線のグレート・ノーザン線用の交流機器のみ搭載の25編成(365517-541)であった。

亡き国鉄の置き土産、運用の歴史
 デビュー時の1996年には国鉄の支部であったNSEは1994年の民営化の関係で存在せず、ケント用編成はコネックス・サウス・イースタン社(Connex South Eastern)が受領した。同系列はNSE標準の赤・青・白の三色塗装で落成したが同社の青と黄色のラッピングが施された。グレート・ノーザン線用編成はウェスト・アングリア・グレート・ノーザン社(West Anglia Great Northern, WAGN)が受領したがこれらはNSE標準塗装のまま運用された。

 2002年5月にはグレート・ノーザン線のポッターズ・バー駅(Potters Bar)で365526編成が担当した北行近郊列車が脱線事故を起こした。原因はメンテナンス不良による分岐点の部品破損で同編成はホームに乗り上げ先頭車と先頭寄り中間車が大破し廃車となった。穴埋め用としてケント用の365502編成が急遽WAGNに転属。365502編成は同形式本格導入以前に試験走行を行っていたため他のケント用編成とは異なり交流対応機器が搭載されており、転属の際に改造は不要であった。2003年1月には同編成は返却された。

 2004年にはケント用編成がグレート・ノーザン線に転属し、全編成が同じ路線に集結。これによりグレート・ノーザン線で使用されていたクラス317がテムズリンクに転属可能となった(これは新ユーロスター・ターミナル建築によるセント・パンクラス駅封鎖によってテムズリンクでの車両不足を補うため)。転属に際しケント用編成は直流750V第三軌条用機器が取り外され、架線式交流25kV対応機器とブレックネル・ウィリス製高速走行用パンタグラフが搭載。コネックス・サウス・イースタンのラッピングも剥がされ、導入当時のNSE塗装に戻った。同時期に更に全編成に車両前面の改造工事が実施された。運転室用空調の空気取り入れ口が新設され、これにより他のネットワーカーと比べて印象が大分変わった。

 2006年4月にはグレート・ノーザン線のフランチャイズが変わり、クラス365はWAGNからファースト・キャピタル・コネクト(First Capital Connect)に継承された。導入以来初めての塗装変更が行われ、全編成が同社のネオン塗装に更新。2014年9月からはグレート・ノーザン社(GN)へ同系列が転属し、現在に至る。

現在に至るグレート・ノーザン線での運用
 現在クラス365はロンドン・キングズ・クロス〜ピーターバラ間とロンドン〜ケンブリッジとその延伸としてキングズ・リンへの快速列車に充当されている。停車駅パターンによっては東海岸本線の緩行線ではなく本線を走行し、IC225HSTに劣らない俊足ぶりを見せる。上記の系統ではロンドン〜ケンブリッジ間のノンストップ列車を除き、クラス317321がラッシュ時に代走する事も珍しくない。

 2014年1月から同系列は大規模リニューアルが施されている。座席の交換やカーペット張りの床をフローリングで置き換えるなどで内装が一新され、車イス対応トイレが新設。更に同年末に控えているフランチャイズ変更を見越して中立的なグレート水色の簡易塗装に更新。全編成のリニューアル工事は2016年秋に完了予定だ。

近年控えるグレート・ウェスタン本線電化と車両移動
 2017年にはイギリス有数の非電化幹線であるグレート・ウェスタン本線のロンドン近郊区間の電化が控えている。それに伴いクラス365のうち4連x21本はロンドン・パディントンを起点とする近郊・通勤列車として運用されるため近々グレート・ウェスタン本線を管轄下に置くグレート・ウェスタン鉄道に転属予定だ。これにより同じネットワーカーのクラス165166を更に西の非電化区間へ押し出す形となる。クラス365が現在担当する列車の置き換えとしてテムズリンク社が運用している交直対応のクラス377が導入される予定。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


2+2列配置の普通席。


リニューアル済み編成の一等席。


車イス対応トイレ。

デッキ付近の一部座席はロングシート配置。


ファースト・キャピタル・コネクトに所属していた頃のネオン塗装。
(撮影:ブルックマンズ・パーク駅付近、Brookmans Park Station)


4編成は沿線の観光名所をPRしたラッピング車となっている。写真の365010編成はケンブリッジとイーリーのPR編成。
(撮影:ブルックマンズ・パーク駅付近、Brookmans Park Station)

リニューアル前の2+2列の一等席。


リニューアル前の2+2列の普通席。床がカーペット張りでモケットもファースト・キャピタル・コネクト仕様のものである。


365519編成はピーターバラの名所をまとった沿線PRラッピング車となっている。
(撮影:ケンブリッジ駅、Cambridge Station)


ケンブリッジ、ピーターバラ方制御電動車。

付随中間車。

パンタグラフが装備された付随中間車。

ロンドン方電動制御車。


旧NSE塗装のファースト・キャピタル・コネクト所属編成。2006年頃までこの旧国鉄塗装現存していた。
(撮影:ロンドン・キングズ・クロス駅、London King's Cross Station)

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Kent Rail: Class 365 Networker Express
Southern E-Group: Class 365
Rail Magazine: How the West will win with new trains

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