クラス377 「エレクトロスター」 

British Rail Class 377 'Electrostar'


クラス377の派生型の中でも最多製造数を誇るクラス377/4(SN)。車体側面から突出している防犯カメラが目立つ。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)

●基本データ

デビュー年 2003年
最高速度 160km/h
製造会社 ボンバルディア・トランスポテーション(Bombardier Transportation)
運行会社 サザン(Southern, SN
テムズリンク(Thameslink, TL
運行区間 こちらを参照
編成詳細

クラス377/1 4連x64本
クラス377/2 4連x15本
クラス377/3 3連x28本
クラス377/4 4連x75本
クラス377/5 4連x23本
クラス377/6 5連x26本
クラス377/7 5連x8本


●七種類もの派生型が製造されている汎用型電車

 クラス377はボンバルディア社が製造している「エレクトロスター」シリーズの一員。このシリーズには他にもクラス357やクラス377の元となったクラス375が存在し、ここ数十年では最も多く編成が発注されたシリーズでもある。イギリス南部の都市間快速列車やロンドン南部の近郊路線に幅広く運用され、一部の列車はロンドンより北の地方都市まで走る。

クラス377の導入まで
 クラス377は元々クラス375の発注の一部であった。イギリス南東部の路線網を任されていたコネックス・サウス・イースタン(Connex South Eastern)は1997年に旧型の多扉式電車(クラス421等)を置き換えるべくクラス375を発注。この時クラス375/3の一部を同系列会社のイギリス南部の路線を担当するコネックス・サウス・セントラル(Connex South Central)へ充てる予定だった。しかしコネックス・サウス・セントラルの財務経営を問題視したSRA(Strategic Rail Authority, イギリス政府の鉄道業界管理機関)がフランチャイズを2001年に剥奪。本来は2003年まで続くはずだった残りのフランチャイズ期間をゴヴィア社(Govia)が買収し、子会社のサウス・セントラル(SouthCentral)がコネックスの代わりに列車を運行する事となる。

 製造途中であったクラス375/3はサウス・セントラルが受け取り、連結器を従来の密着連結器からデルナー社(Dellner)のシャルフェンベルク式自動連結器に換装。この際クラス375/3をクラス377/3に改称した。しかし、いざ導入となると様々な問題が生じた。旧型車両とは異なり空調設備があったので、以前と比べ電力消費が格段に増え、イギリス南部の直流第三軌条のインフラを大幅に出力増加せざるを得なかった。この電力供給システムの改良工事により、本格的な導入が遅れ、結局は2003年から運行開始する事になる。最終的にサウス・セントラルはクラス377/3を3連x28編成を導入した。377/3はコネックスが発注したため登場時の内装はクラス375と同様の紺色のモケットを座席に使用していた。2004年5月にサウス・セントラルはサザン(SN)に改名し、現在でもクラス377を大多数運用している。

様々なクラス377の派生型、交直両用対応車の登場
 旧型車両の置き換えを進めるべくSNがクラス377/1を発注。これらのは377/3と異なり4連の編成で製造された。合計で64編成が在籍するが、377/1の中でも様々な違いが見られる。最初の39編成(377 101-139)は クラス377/3と同じだが、後に造られた25編成(377 140-164)は新しい前面デザインを採用しており、ヘッドライトとテールライトが統合されたものになった。内装も後期編成はサザン標準の緑のツートンモケットが採用されている。この後期編成の仕様は後に量産されたクラス377にも採用されている。

 クラス377/1と同時期にクラス377/2が導入された(4連x15本)。377/2は直流750Vの第三軌条区間だけでなく、架線式交流25kVにも対応するためパンタグラフが設置されており、ロンドン南部の第三軌条ネットワークと架線電化されている西海岸本線の都市を結ぶ列車に充てられた。SNは更に直流のみ対応のクラス377/4を75編成追加し、2004年から導入。これにより旧型車両の置き換えは完了した。クラス377/4は第三軌条ネットワーク内であればどんな運用にでも就き、汎用性が高い。

テムズリンクの新車導入の遅れで更に増えるクラス377
 2008年3月にはブライトン本線のキャパシティ増加のためにSNが交直両用のクラス377/5を4連x23本発注した。SNが発注したものの、これらはロンドンを縦貫するテムズリンク線(Thameslink)で運用されるのを想定されていたため、当時テムズリンク線の運行を管理していたファースト・キャピタル・コネクト(First Capital Connect)の塗装が施された(内装はSN標準の緑ベースのまま出場した)。2009年2月からSNが377/5を受け取り、ファースト・キャピタル・コネクトにサブリースされる形ですぐさまそちらに転属した。

 しかしクラス377/5の製造が遅れ、2009年3月のダイヤ改正に間に合うよう同じく交直両用のクラス377/2をSNからファースト・キャピタル・コネクトへ8編成一時的に転属する事になった。この穴埋め用にSNはロンドン・ミッドランドからクラス350/1をリースし、クラス377/5の導入完了まで西海岸本線直通の列車に使用していた。2009年のうちにクラス377/2はSNに戻ったが、テムズリンク線での12連運転を可能にするため2011年12月に再び9編成がファースト・キャピタル・コネクトに転属し、現在でも後継会社のテムズリンク(TL)によって運用されている。

 当初の計画ではテムズリンク線の新車(シーメンス製のクラス700)が導入される際、ファースト・キャピタル・コネクトに所属するクラス377/5はSNに返却される予定であったが、クラス700の製造が遅れる見込みとなった。2013年12月ダイヤ改正までに車両が必要なSNは2011年9月にクラス377/6を発注(5連x34編成)。2013年10月からクラス377/6は営業運転に入り、以前8連だったロンドン市内の近郊列車を10連に延長した。これにより余裕ができたSNクラス456をサウス・ウェスト・トレインズに転属させる事ができた。

 クラス377/6の追加オプションとして交直両用のクラス377/7が2012年に追加発注された(5連x8本)。これらは2014年12月より営業運転に入っており、主に西海岸本線直通列車(サウス・クロイドン〜ミルトン・キーンズ・セントラル間)などに充当されている。

将来の動向
 2016年中旬からのクラス700の導入でブライトン本線からテムズリンク所属のクラス377/5は順序置き換えられる予定で、余剰となった編成はロンドンとケンブリッジ間の列車に現在使用されているクラス365を玉突きで置き換える予定だ。2018年からは東海岸本線とテムズリンク線を結ぶ支線が完成し、ケンブリッジ〜ロンドン・ブラックフライアーズ〜ブライトン間の列車を担当する予定。

クラス377の仕様
 3両編成のクラス377/3の車両構成は2M1T(Mc-T-Mc)で4両編成の377/1、2、4、5は3M1T(Mc-T-M-Mc)。5両編成の377/6、7は4M1T構成(Mc-M-T-M-Mc)。IGBT-VVVFインバーター制御を採用。電力供給は二電源対応(第三軌条直流750Vと架線式交流25kV)だが、実際に交流25kVの元で走れるようにパンタグラフが設置されているのはクラス377/2と377/5、6、7のみ。他の派生型にはパンタグラフを容易に設置できるよう専用の窪みが中間車両の屋根に設けてある。

 ワンマン運転が可能で、乗客の昇降が見れるように車両外部に監視カメラが設置されている。クラス375との差別化はここからきているという説もある。ラッシュ時には最大3編成(最長12両)で運転する。併結する場合は車両前面中央の貫通扉が開き、車両間を行き来できるようになる。

 内装には様々なバリエーションが見られる。クラス375/3から改造された377/3は上記の通り紺色と茶色のモケットで出場したが、377/1内でも中間車の座席配置やモケットの違いがあった。377 001-119の19編成の中間車は2+2列配置だが377 120-139の20編成の中間車は2+2列と2+3列が混合している。更にこれらの編成も紺色と茶色モケットだった。377 140編成以降の中間車は2+3列配置でサザン標準の緑モケットを採用した。2011年から2015年の間にSN所属の全編成の内装がリフレッシュされ、この時にクラス377/3と377/1初期編成もサザン標準の緑を基調としたものに更新された。

 クラス377/6と7はクラス387と同様の内装でファインサ(Fainsa)製の座席を採用しており、全車2+2列配置。以前の377とは異なり連続窓ではなく各窓に個別のフレームがついた作りとなっている。更に車両前面のスカートの左下に線路監視用カメラのライトが備わっている。これらは同時期に製造されたエレクトロスターのクラス379にも見られる特徴である。

(解説・撮影:秩父路号、2016年4月更新)

●ギャラリー


クラス377の中で最初に導入された377/3(SN)。元々クラス375/3として製造されたが、連結器をデルナー連結器に換装してからクラス377/3に改称。編成長もクラス377の中でも最短の3連。
(撮影:サウス・クロイドン駅、South Croydon Station)


クラス377/1の初期編成(SN)。クラス377/3と同様の顔で、377 101-139の39編成が同様の造りである。
(撮影:フォード駅、Ford Station)


クラス377/1の後期編成(SN)。ヘッドライトとテールライトが統合された新デザインの顔を採用している。
(撮影:サウス・クロイドン駅、South Croydon Station)


交直両用のクラス377/2(SN)。現在は6編成がSNに所属し、残りの9編成がTLがサブリースしている。
(撮影:サウス・ケントン駅付近、South Kenton Station)


TLSNからサブリースされているクラス377/2。SNの基本塗装にTLのロゴが貼られている。
(撮影:クリックルウッド駅、Cricklewood Station)


旧ファースト・キャピタル・コネクトのクラス377/5。
(撮影:ラドレット駅付近、Radlett Station)


TLSNからサブリースしているクラス377/5。クラス387と共にテムズリンク線の列車を運行する。いずれクラス700に置き換えられる予定である。
(撮影:ハーン・ヒル駅、Herne Hill Station)


クラス700の遅れた導入に対応するために発注されたクラス377/6(SN所属)。上記の派生型と違い連続窓ではなく枠窓を採用している。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


クラス377/6のオーダーで追加発注されたクラス377/7(SN所属)。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


クラス377の初期編成と後期編成の比較。写真はクラス377/1初期編成(左)と377/4(右)
(撮影:フォード駅, Ford Station)


ラッシュ時には最大12連で運行する。写真の編成の最後尾はクラス377/4。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


現在のクラス377/1後期編成と377/2、4、5の中間車の標準内装。緑を基準としたモケットを採用しており3+2列配置。


運転席後方にある一等席。座席は普通席のものと変わらないが、ヘッドカバーがかけられている(クラス377/1-5)。

先頭車の普通席は2+2のボックスシートとなっていて、テーブルも設置されている(クラス377/1後期、2、4、5)。


クラス377/3のリニューアル済み車内(普通車先頭車)。つまみの部分は右上の内装と異なる。

クラス377/3の車イス用トイレ



クラス377/3のリニューアル済み中間車(普通車)。他の派生型とは異なり2+2列配置。


クラス377/6、7の普通席。全車2+2列配置で優先席は座席の模様が異なる。


同じく377/6と7の一等席。こちらも2+2列配置。


車イス用スペース。

車イス対応トイレ。


クラス377/3とクラス377/1初期編成の登場時の普通席(先頭車)。現在は上記の緑モケットに更新された(以下の内装も同様)。


一等席の様子。

3+2列配置の普通席の様子。


紺色の他にも中間車には写真のような茶色のモケットもクラス377/3と377/1初期編成に見られた。


クラス377/2、377/5〜7には架線電化区間用にパンタグラフが設置されている。

●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Southern E-Group: Class 377 "Electrostar"
RailUKforums: Class 377 Anomalies
Wikipedia: British Rail Class 377
Wikipedia: British Rail Class 375

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