交通博物館〜東京都千代田区〜


○解説

 今は「鉄道博物館」として発展解消し、建物も解体されてしまった交通博物館。元々は1921年10月14日に鉄道開通50周年記念として東京駅の神田寄り高架下に鉄道博物館として誕生したのが始まりです。

 関東大震災で甚大な被害を受けた後、1936(昭和11)年4月25日に、廃止になった万世橋駅の跡地に移転。そして戦後の1948(昭和23)年9月1日に交通博物館として改称されました。そのため、今の鉄道博物館とは異なり、鉄道のみならず、自動車、船舶、航空など様々な交通関係の展示が行われていたのが特徴です。

 そして老朽化と館内の狭あい化により、2006(平成18)年5月14日に閉館。鉄道関係の展示以外については、大阪の交通科学博物館を始め、関連の博物館に引き取られていきました。
 (撮影&解説:裏辺金好)

○鉄道関連の展示


入り口の風景
D51と0系のカットモデルが出迎えてくれた交通博物館入り口。

0系新幹線電車 21−25

0系新幹線電車 21−25
閉館時には先頭部に「さようなら 交通博物館」と書き入れられました。

D51 426号機(カットモデル)


7100形蒸気機関車 7101号機「弁慶」 【鉄道記念物】  1880(明治13)年、北海道初の鉄道路線である幌内鉄道の手宮〜札幌が開業するのに伴い、アメリカから輸入した8両の蒸気機関車のうちの1両。アメリカンスタイルのデザインが特徴です。なお、後ろには開拓使号客車 コトク5010を連結していますが、写真では殆ど写っておらず恐縮です。

1290形蒸気機関車 1292号機「善光」 【鉄道記念物】  1883(明治16)年7月、日本鉄道が上野〜熊谷で開業しました。このときに投入された蒸気機関車で、イギリスのマニングウォードル社で製造されました。名称の由来は、現在の埼玉県川口市の善行寺裏手の荒川から陸揚げされたことから。
 日本鉄道は日本初の私鉄で、岩倉具視をはじめとする華族が中心となって発足しました。現在の東北本線(上野〜青森)、高崎線、常磐線などを開業させ、1906年に国有化されました。

150形蒸気機関車(1号機関車) 【国重要文化財/鉄道記念物】
 日本で鉄道が開業した際、最初に用意された10両の蒸気機関車のうちの1両。イギリスのバルカン・ファウンドリー社製で、新橋〜横浜の約29kmをを53分で結びました。
 1911(明治44)に九州の島原鉄道へ売却されましたが、1936(昭和11)年に交通博物館に譲渡されました。

C57形蒸気機関車 C57 135
 1940(昭和15)年、三菱重工業神戸造船所製。高崎機関区、小樽築港機関区、岩見沢第一機関区で活躍し、主に北海道を走りぬき、1975(昭和50)年12月14日、国鉄最後の蒸気機関車による定期旅客列車で使用。その後は交通博物館で保存されてきました。ちなみに現在、鉄道博物館は展示車両の中心にあるターンテーブルに乗っていて、回転実演が好評を博しています。

9850形蒸気機関車 9856号機
 1913(大正2)年、ドイツのヘンシェル社製。現在の御殿場線(当時は東海道本線)などで活躍。交通博物館では車体が切開されて、特徴的なマレー式と呼ばれる構造が見られるようになっています。

167系急行型電車 クハ167のモックアップ
修学旅行電車167系の先頭車の運転台付近を実物大で再現したものです。

一号御料車 【鉄道記念物】

鉄道初期(イギリス)の客車
実物の鉄道車両は意外に少ない交通博物館ですが、代わりに多くの模型が展示してありました。

佐賀藩の蒸気機関車模型

幕府の役人を乗せたペリーの蒸気車(4分の1で復元したもの)

(485系)正面愛称表示器

反転フラップ式発車標

100系新幹線149形式模型

東海道新幹線CTC表示盤

信号機の数々

0系、E1系、E2系、E4系模型など

国鉄型車両の模型の数々

国鉄型〜JR初期の車両の模型の数々

旧型客車等の模型の数々
模型の展示については、今の鉄道博物館よりも魅力的だった気がします。

大人気だった鉄道模型ジオラマ

鉄道模型ジオラマ

鉄道模型ジオラマ

館内の風景

閉館を前に行われた企画展の様子

ク5000形自動車輸送車模型

EF55 1号機展示(2006年3月)
閉館を前に、旧万世駅橋の遺構が公開されたり、特別にEF55 1号機が展示されたりしました。

寝台特急「出雲」展示(2006年4月)
また、特別にDD51+24系客車も展示されました。

寝台特急「出雲」展示

○自動車・自転車関連などの展示


バイクの数々


人力車


輪タク
昭和20年代に大阪で使われていたもの。

ベンツ・パテント・モートルヴァーゲン
ドイツのカール・F・ベンツが1885(明治18)年に製作し、翌年に特許をとった世界最初のガソリン・エンジン自動車。
この展示物はダイムラー・ベンツ社(当時)が実物を元に忠実に複製したものです。


ダイムラーが1886(明治19)年に製作した、世界最初の四輪車(模型)。

フォードTT型 東京市(円太郎)バス
関東大震災で市電に大きな被害が出た東京市が、交通手段の確保のためにアメリカのフォード車から輸入。
1924(大正13)年から44台が使用開始され、円太郎の愛称で親しまれました。また。これが都バスの起源です。


国鉄バス第1号車 【鉄道記念物】  1930(昭和5)年12月20日に、愛知県の岡崎〜多治見で運航を開始した省営乗合自動車の第1号車(*省=鉄道省。後の国鉄)。現存するわが国最古の国産バスです。鉄道博物館を経て、現在は名古屋市の「リニア・鉄道館」で展示されています。

フランクリン 1930年型
アメリカのフランクリン社が製造したもので、エンジンは直列6気筒、フランクリン伝統の空冷式です。

スバル360(K111型)  1958(昭和23)年5月に登場した排気量360ccの軽乗用車。2サイクル・空冷式エンジンを車体後部に搭載した リアエンジン方式で、モノコック構造の卵形ボディーの車体が特徴です。12年にわたり44万1681台(輸出用含む)が製造されました。

マツダ T−2000 オート三輪
1964(昭和39)年式のマツダ(東洋工業)のオート三輪。

ミショー式自転車
1860〜70年代に輸入され、石巻で使われた自転車。前輪と後輪の大きさが異なるのが特徴です。

ミショー式自転車
こちらは1869(明治2)年に輸入されたもの。

スパーク社製 軽快車
1920年ごろにイギリスのスパーク社で製造。当時の先進技術だった変速機を組み込んでおり、高級な自転車でした。

○飛行機・船舶


アンリ・ファルマン機
 1910(明治43)年12月19日に、徳川好敏大尉の操縦によって行われた日本初の飛行に使用された機体。戦後はアメリカのライト・パターソン空軍博物館に保存されていましたが、1950(昭和35)年に返還されました。

ベル47D-1
アンリ・ファルマン機の後ろに吊り下げられているヘリコプター。

(幻に終わった)JALのコンコルド
3機が仮発注されましたが、オイルショックの影響などで実現しませんでした。

唐船(福州船)
中国南部で使用された船。

南洋のカヌー


イパチニカ
台湾南部で使われた、くり船。

古代エジプトの船

日本丸
豊臣秀吉が鳥羽の領主に造らせた軍船で当時としては大型の船。

天地丸
1630(寛永7)年に江戸幕府第三代将軍の徳川家光が造らせた帆船です。
21の帆と100丁の櫓を持ち、品川沖で訓練のために使用したそうです。

大和型船(千石船)
江戸時代の荷物船で、米を千石(約150t)積めるので千石船とも呼ばれました。


千石船
こちらは内部の様子が良く解るようになっています。

19世紀頃の帆船

観光丸
幕末にオランダから寄贈された蒸気船。日本で初めて保有した蒸気機関付きの軍艦となりました。

明治丸
 灯台視察船としてイギリスで建造された船で、明治天皇が東北地方を視察される際に乗船。1876(明治9)年7月20日に横浜港に戻られたことから、これが海の日として現在は祝日になっています。ちなみに本物は東京海洋大学越中島キャンパスに保存され、国の重要文化財に指定されています。

小菅丸
1883(明治16)年に7年かけて造られた、最後の大型木造汽船です。

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