第八話・註 音速の郵便局員

  原付ライダー・・・自分の原付・バイクとのかかわりの回顧録であるが、回顧しているうちに思い違いをしていた部分があることに気づいてきた。

 本当は原稿を訂正すべきなのかもしれないが、訂正というよりも、一話まるごと書き直しになってしまう上に、話が長くなりそうなので、別項とさせていただきました・・・。申し訳ございません(ここだけ敬体)。


 補足訂正は第八話 「250ccスクーター未来すぎ!」の
 大学の校舎内でもビッグスクーターを見た。最初は近未来志向の変わったバイクだなあと見ていたが、横を通り過ぎて
「あ、スクーター・・・ビッグスクーターか」
と確認できた。ビッグスクーターは正面からみると普通のバイクにみえてしまうのだ。近未来志向で、スクーターといいながら普通のバイクに近いスクーター・・・。
という文章である。


 この段階で、私は250ccスクーターの存在をあらかじめ「勝手に改造」を読んで知っていて、実物をはじめて見た時に、最初は250ccスクーターだとは気づかず、通り過ぎてから「あ、あれがそうなんだ・・・」と認識したというくだりになっている。


 しかし、よく思い出してみると逆だったのだ・・・。
 この時・・・そう、二月、三月かそこらだったと思う。


 お昼時、大学の構内を歩いていた。この日はサークルの日かなんかだったと思う。正直、サークルは面倒くさいと思っていた・・・。一緒にはいった同期の連中はサークルをやめたり、ボイコットしたりしていた・・・。いわゆる学問系のサークルだったのだが、自分がある事件に対して独自の見解をだしても(主に政治的な問題を論議していた)、部長や幹部の連中が自分達の見解をこちらに認めさせようとしてくるのだ。しかも、こちらがその幹部の見解に納得しないと終わらないのだ・・・。考え方をおしつけられる・・・これは、はっきりいって苦痛である。


 結局、そんなこんなで大概の連中はサークルを辞めたり、ボイコットしたりしていた。私もたまにボイコットとかするのだが、自分が決めたことだから行っておくかという感じだった。

 そんな時だった。
 前からバイクに乗った男子学生がやってきた。後部座席には女子学生をのせている。大学の構内ということもあり低速で走っていた。(よくあんな低速でバランス崩れないな)
 そのバイクは近未来的なデザインで、あれはバイクなのか? と一瞬とまどった。あんなバイクが市販されているのか? それとも自分でカスタムしたのか?


 すると後方からその男子学生を呼ぶ声が。
「お前、公務員試験の講座うけるのか?」
 私の大学に限ったことではないだろうが、大学には公務員試験の講座が設けられていた。ゆえにこのエピソードは二月か三月の話ではなかったかと思うのだ。バイクの学生は
「おう、日本で一番速い郵便屋になる」
と言った。

(バイクが好きだから郵便屋ですか)
 まあ、確かに乗っているバイクは速そうだし、低速でも安定した走行ができるところを見ると、本人にも、それなりに技術はあるんだろう。もし、自分が郵便配達員になるんなら、やはりバイクにのれないとな・・・。


 もっとも・・・、私が就職活動をしようとした時には、郵政民営化の話が浮上してきていて、これから郵便局はどうなるか分からないという微妙な時期だったのだが・・・。


 どうやら二人の話しはそれだけだったらしく、バイクの学生は先ほどと同じく、低速で大学の構内を走り出す。そして、私の隣を通りすぎた・・・。
「!」
 バイクが横を通ったとき、私はハッとした。なんとこのバイク、スクーターではないか。こんなバイクがあったのか!? これなら、なんとなく私でも乗れそうな気がするぞ・・・。


 この時、自分の中にはビッグスクーターという単語も250ccスクーターという単語も存在していなかった。そして、数日後、私は「勝手に改造」を読んで「250ccスクーター未来すぎ!!」という表現にふれ。
「あれだ!!」
と思った。確かにあのデザインは未来すぎる・・・。あれはカスタムして、あのような形になったんじゃなくて、はじめから、あのような形なのだろう。スクータータイプ(乗りやすい)であの格好よさ、私が欲しかったバイクはああいうものだ・・・。


 漫画の一コマをみて、あれが欲しいと思ったのではなく、はじめにまず現物を間近でみて、なんか気になるなと思い、漫画でもって、未来系のスクーターの存在と呼称を確認したというわけである・・・。


 よく中国の歴史書には註がひいてある。註とは後世の人が先人の書いた歴史書をみて足りないところ、事実と誤りがあるところに、補足説明として他の歴史書から引用した文章などを載せたものである。決して文章を削除して書き直すわけではなく、原文は残したままで補足説明を加えるという形式である。


 自分の文章に自分で註を加えるというのもなんだが、そういう形式をとらせていただきました・・・(言い訳くさいですね・・・)。



棒