クラス450 

British Rail Class 450 'Desiro'


イギリス用デジロの中でも最大製造数を誇るクラス450。写真は450/0。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)

●基本データ

デビュー年 2003年
最高速度 160km/h
製造会社 シーメンス(Siemens)
運行会社 サウス・ウェスト・トレインズ(South West Trains, SWT
運行区間 イングランド南西路線
●ロンドン・ウォータールー(London Waterloo)〜ベイジングストーク(Basingstoke)〜プール(Poole)
●ロンドン・ウォータールー〜ベイジングストーク〜プール〜ウェイマス(Weymouth)(ラッシュ時のみ)
●ロンドン・ウォータールー〜ベイジングストーク〜ポーツマス・ハーバー(Portsmouth Harbour)
●ロンドン・ウォータールー〜ギルドフォード(Guildford)〜ポーツマス・ハーバー(Portsmouth Harbour)
●ロンドン・ウォータールー〜ウォキング(Woking)〜オルトン(Alton)
●ポーツマス・ハーバー〜サウスハンプトン・セントラル(Southampton Central)
●アスコット(Ascot)〜ギルドフォード

ロンドン近郊路線
●ロンドン・ウォータールー〜ウェイブリッジ(Weybridge)
●ロンドン・ウォータールー〜ウォキング〜ギルドフォード(Guildford)
●ロンドン・ウォータールー〜ウィンザー・アンド・イートン・リバーサイド(Windsor & Eton Riverside)
●ロンドン・ウォータールー〜リッチモンド(Richmond)〜ハウンスロー(Hounslow)〜ロンドン・ウォータールー(ハウンスロー・ループ、外回り・内回り)

リミングトン支線
●ブロッケンハースト(Brockenhurst)〜リミングトン・ピア(Lymington Pier)(土休日のみ)
編成詳細

クラス450/0 99本
クラス450/5 28本

全編成4連


●サウス・ウェスト・トレインズの主力車両

 シーメンスがイギリス向けに製造しているイギリス用デジロの中で最も製造編成数が多い車両形式。ロンドン・ウォータールーを起点とするロンドン南西部とイングランド南西部の鉄道路線で使用されており、旧型車両を大量に置き換えた。同シリーズで快速・長距離型のクラス444、交流型のクラス350や気動車版のクラス185が存在する。

ロンドン南西に新時代の到来
 2001年4月にロンドンとイングランド南西部の鉄道路線を網羅するフランチャイズがステージコーチ社(Stagecoach)のサウス・ウェスト・トレインズ(SWT)に再度授与され、同社は同時にクラス421等の旧型多扉式車両を置き換えるために新型車両製造の入札を発表。アルストム製のクラス458の導入での苦い経験が影響したのか、シーメンスのデジロ・シリーズが選定されクラス450が発注された。ドイツのクレーフェルト工場(Krefeld)で製造され、初編成が2002年11月に渡英。試験走行を終えた後2003年10月に営業運転を開始。しかし従来の電車より使用電力が多いため、当初は営業運転で一度に使用できる編成数は最大45本に制限された。これを解消すべく第三軌条システムの電力供給を増やすための工事が行われ、2004年12月のダイヤ改正から本格的に導入された。

 元々SWTはシーメンスに中距離・近郊型の4連x100本(現在のクラス450/0)と通勤・近郊型の5連x32本(クラス450/2という形式名を与えられていた車両)を発注していた。しかし英交通省が当初予定されていた5連x2編成の10両編成の運転に必要なホーム延長やインフラ整備等への出資を拒否したため、クラス450/2の注文はキャンセル。代わりに5連x32本(内約は4連x10本のクラス450/0と4連x30本のクラス350/1)に発注内容は組み替えられ、クラス350/1はイングランド中部のシルバーリンク(Silverlink)とセントラル・トレインズ(Central Trains)に導入された。2006年には追加の編成が製造され、現在SWTにはクラス450が127編成在籍する。

HC編成の登場と廃止
 輸送力増強のため2008年1月にクラス450/0の28本に定員を増やす改造工事が実施され、定員増加仕様となった。中間車一両の半分を占めていた一等席を3+2列の普通席に置き換え、立ち席を増やすためにドア周辺の座席を部分的に撤去、手すりも新たに追加された。これらの編成は450/5に改名され、編成前面には「HC」(High Capacity)の頭文字がつけられた。当時はロンドン・ウォータールー〜ウィンザー、ウェイブリッジなどのロンドン南西の通勤・近郊列車にクラス450/5が投入され、ウォータールーからポーツマス、サウスハンプトン等への中距離列車は450/0が使用されていた。

 ロンドンとウィンザー、レディングを結ぶ路線は元々クラス458/0が運行しており、クラス450/5が誕生したのはクラス458/0が458/5への改造工事中の車両不足を補う一面もあった。2013年に改造工事が終わり始め、同路線にクラス458/5が再投入されたためクラス450/5が余剰になりつつあった。これにより一度撤去された一等席が450/5に復活する事になり、普通席もクラス450/0と大差ないものに戻され「HC」の文字も消された。現在クラス450/0と450/5は同じ編成として扱われ、運用上の区別はされていない。クラス450は他にもラッシュ時にクラス444を補完する形でロンドンとウェイマス間の列車にも使用されるが、クラス444と比べて居住性が低いため乗客からは不満を買っている。

クラス450の仕様
 一編成4連でMT比は1:1、構成はMc-T-T-Mc。電源方式は直流750Vだが、近年製造されている第三軌条用車両のように将来的に架線式交流25kVの元でも走れる設計だ。交流用電気系統も備わっており、パンタグラフを設置する窪みも中間車に設けてある。車体はアルミ製でモーターは三相誘導交流式、制御機器はIGBT-VVVFインバーターを採用。

(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)

●ギャラリー


ラッシュ時は最大3連併結して12連で運行する。
(撮影:ウィンブルドン駅付近、Wimbledon Station)


一時期全車普通車に改造されたクラス450/5。現在は450/0と運用上の違いはないが座席配置が異なるため形式は違うまま。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


全車普通車だった時期のクラス450/5。定員増加仕様を示す「HC」の頭文字が付けられた。
(撮影:モートレイク駅付近、Mortlake Station)


クラス450/0の普通席。大部分は2+3列配置。


中間車一両の半室だけ設けられている一等席。2+2列配置でコンセントが備わっている。


普通車の車端部には2+2列配置の座席も。

一等席の隣の車掌室(右)。


●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Southern E-Group: Class 450

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