クラス455 

British Rail Class 455


クラス455はロンドン南西部の通勤輸送の大部分を担っている。写真はSWTのクラス455/7。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction)

●基本データ

デビュー年 1982年
最高速度 120km/h
製造会社 イギリス国鉄鉄道工学部門ヨーク工場(British Rail Engineering Limited, BREL York)
運行会社 サウス・ウェスト・トレインズ (South West Trains, SWT)
サザン (Southern, SN
運行区間 ロンドン南西部近郊SWT
●ロンドン・ウォータールー(London Waterloo)〜シェパートン(Shepperton)
●ロンドン・ウォータールー〜ハンプトン・コート(Hampton Court)
●ロンドン・ウォータールー〜ウォキング(Woking)
●ロンドン・ウォータールー〜ハウンスロー(Hounslow)〜ロンドン・ウォータールー(時計回り、反時計回り)
●ロンドン・ウォータールー〜ドーキング(Dorking)
●ロンドン・ウォータールー〜オクショット(Oxshott)〜ギルドフォード(Guildford)
●ロンドン・ウォータールー〜エプソム(Epsom)〜ギルドフォード
●ロンドン・ウォータールー〜チェシントン・サウス(Chessington South)

ロンドン南部近郊SN
●ロンドン・ヴィクトリア(London Victoria)、ロンドン・ブリッジ(London Bridge)〜ケータラム(Caterham)
●ロンドン・ヴィクトリア、ロンドン・ブリッジ〜タッテナム・コーナー(Tattenham Corner)
●ロンドン・ヴィクトリア、ロンドン・ブリッジ〜ホーシャム(Horsham)
●ロンドン・ヴィクトリア、ロンドン・ブリッジ〜ウェスト・クロイドン(West Croydon)
●ロンドン・ヴィクトリア〜エプソム・ダウンズ(Epsom Downs)
●ロンドン・ヴィクトリア〜ドーキング(Dorking)
●ロンドン・ヴィクトリア、ロンドン・ブリッジ〜ギルドフォード(Guildford)
●ロンドン・ヴィクトリア〜サットン(Sutton)
●ロンドン・ブリッジ〜ベッケナム・ジャンクション(Beckenham Junction)
●ロンドン・ブリッジ〜クリスタル・パレス(Crystal Palace)〜ロンドン・ヴィクトリア
編成詳細

455/7 43本
455/8 74本
455/9 20本

編成は全て4連
クラス455/7は元々3連として製造され、クラス508からの一両を編入し4連となった。


●ロンドン南部と南西部を支える第三軌条通勤電車

 1980年代初頭に開発された直流型電車で、マーク3客車の車体を元にデザインされた通称「マーク3ファミリー」の一員。クラス313315のアルミ合金車体とは違い、マーク3ファミリーは鋼製の車体で他にもクラス317電車やクラス150気動車が存在する。

国鉄が導入した新型通勤型電車
 ロンドン近郊とイングランド南東部の第三軌条直流750Vネットワークの新しい通勤・近郊型電車としてイギリス国鉄のロンドンと南東の路線を管轄するネットワーク・サウスイースト(Network SouthEast, NSE)が1982年に導入。開発当時はクラス508の後継車という理由でクラス510という形式名だったが登場時にはクラス455に改名。合計で139編成が三回に分けて製造された。

 1982〜1984年にかけて最初に製造された4連x74本はクラス455/8と称され、NSEに配備。第二回の製造は1984〜1985年にかけて行われ、クラス455/7と呼ばれている。全面デザインがクラス455/8と異なり、タイフォンの位置が中央上部から連結器の隣に移された他、ヘッドライドの位置も修正された。このデザインは後のクラス317/2クラス318にも流用されている。43本が新造され、当初は3連だったが、中間付随車をリヴァプール近郊路線へ転属するクラス508から抜き取り4連に両数を増やしている。クラス508はマーク3ファミリーの由来ではなく1972年デザインの車両であるため、編成の中では浮いている。最後に1985年にクラス455/9が4連x20本製造された。

民営化後の動向
 イギリス国鉄民営化後はサザン(SN)とサウス・ウェスト・トレインズ(SWT)に引き継がれ、現在でもロンドン南西部と郊外への各駅停車運用を担っている。SNにはクラス455/8が46本在籍していて、ロンドン・ブリッジやロンドン・ヴィクトリア駅を起点とするロンドン南部への各駅停車などに運用される。SWTには残りのクラス455が在籍し、ロンドン・ウォータールー駅からロンドン南西部への列車に充てられている。2003年から2008年頃にかけてリニューアル工事が行われ、SWT所属の車両は座席配置を低背もたれ3+2列から高背もたれ2+2列に変更。車内に電光掲示板を新設するとともにヘッドライトもLED式のものに更新された。SNのクラス455は全面の貫通扉が封鎖され、内装もコーポレートカラーである緑色を基調に一新する形となった。

 2015年5月からSWT所属のクラス455は動力機器を順次更新する予定であり、現在の吊り掛け直流モーターをIGBT-VVVFインバーター制御の交流モーターに交換。これにより信頼性を向上させるとともに維持費を抑える事ができるようになる。2016年8月には全編成の機器更新が完了する予定。

 SWTではホーム長の関係で2本を併結しての8連の運用が最長だったが、2014年よりクラス456が同社に転属。現在ではクラス455x2本と456x1本を併結して10両編成の列車を運行し、ラッシュ時の混雑緩和を図っている。

クラス455の仕様
 短距離運用の通勤型車両を意識したために当初は全車普通車でトイレは備わっていない。最高速度も同じ車体を共有するクラス317などに比べて120km/hに抑えられている。4両編成で1M3T構成(Tc-M-T-Tc)。

(解説・撮影:秩父路号、2016年3月更新)

●ギャラリー


SWT所属のクラス455/9。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


クラス455の中で最初に製造された455/8。他の派生型と違い前面の形状が違いタイフォンが上部に設置されてある。
(撮影:ウィンブルドン駅付近, Wimbledon Station)


クラス455/7に組み込まれているクラス508から抜き取られた中間車(右)。下部が膨れていて車高が低いのが特徴的。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


SWT所属のクラス455の車内。全車普通席で2+2配置となっている。


デッキ付近の様子。

一部のドア付近ではロングシートが設置されている。


SN所属のクラス455/8。リニューアルの際前照灯と尾灯が縦に並べられた。
(撮影:クラッパム・ジャンクション駅、Clapham Junction Station)


SNのクラス455/8の全景。
(撮影:アナリー駅、Anerley Station)


SN所属のクラス455の車内。SWTの編成とは違い座席は3+2配置のボックスシート。


ユーロスターが在来線を走っていた頃は並走する姿も。
(撮影:ヴォックスホール駅, Vauxhall Station)


黄色をベースにしたチェシントン動物園ラッピングのクラス455/8(SWT所属)。
(撮影:ヴォックスホール駅, Vauxhall Station)

SWTのクラス455/8(リニューアル前)。旧NSE塗装にオレンジの線を重ねていた。
(撮影:ハンプトン・コート駅、Hampton Court Station)

SWTのクラス455/8の車内(リニューアル前)。背もたれが低く座席配置が2+3となっている。



●参考文献・ウェブページ

・「Traction Recognition, Third Edition」 (Ian Allan Publishing) ISBN 978-0-7110-3792-2
Southern E-Group: Class 455
・Today's Railways, Issue 163 (July 2015)

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